第29話 バーベキュー後半

タクミの声を聞いたチカはビクッとした後、俺の首に手を回して正面から抱き締めてくる。

「はぁぁぁ・・・」

頬を赤らめながらも潤んだ瞳で俺を見つめてくる。


「チカちゃん。」

俺は優しく頭を撫で今度は俺からキスをする。

「んっ♡」

俺からキスをしたことに驚いたのか一瞬ビクッとしたが、直ぐに力強く抱き締めてくる。


「なぁ、シン?こいつ俺達がいること忘れてないか?」

「忘れてますよね。流されすぎですね。」

「おじょうが・・・そんな!!」

おやっさん、シン、タクミはそれぞれ感想を述べている。

「さて、シン、タクミこれ以上はお邪魔になるからな、見ないフリをするぞ。」

「へい、おやっさん。」

シンは素直に従うが、タクミは・・・

「止めさせるべきです!ユウヤの奴、調子にのっておじょうを汚したらどうするんですか?」

タクミの気持ちはみんな知ってはいるが、あの姿を見ても退かないのは見事なものがある。

「タクミ、チカはユウヤの物だ、諦めろ。」

「おやっさん!!」

「それに考えてみろ、チカの気持ちはユウヤにある。

組としてもユウヤは欠かせない存在だ。

二人が結ばれるのに何の問題がある?」

「そ、それは・・・でも、おじょうはまだ中学生ですぜ、相手を決めるのは早すぎると思います!」

「それはチカが決める事だからな。俺達が何か言うことじゃない。」

おやっさんがタクミを諭している頃。


「ユウヤ!!何、チカとキスをしてんだぁ!」

倉田が二人の邪魔をして、二人の時間が終わった。


その後、俺は倉田に説教を喰らった後、

おじょう、に手を出したロリコンです。

という貼り紙を貼られ正座させられていた。


「熱い!砂浜熱いです!!」

「やかましい!チカにキスをしてたんだ、それぐらい我慢しろ!」

「いや、あれはその・・・」

「してないとでも?」

「・・・してました。」

俺は倉田の見張りの元で正座をさせられる。


「ユウちゃん、暑いよね。はい、これ飲み物。」

チカは飲み物を持って来てくれる。

「チカ、こいつに今説教中だから後にして貰えるか?」

「いやです、何でユウちゃんをいじめるの?そんな叔父さん嫌いです。」

「ちかーーー!!」

倉田の涙の咆哮が響き渡る。


「行こう、ユウちゃん。」

俺は崩れ落ちた倉田を置いてバーベキュー会場に戻った。


「あれ、ロリコンさん、キスはもういいの?」

戻って来た俺にリンが辛辣なコメントをぶつけてくる。

「誰がロリコンだ。」

「ユウヤ。あれだけみんなの前でキスシーン見せつけるなんて、何を考えてるの?」

「・・・あれは事故みたいなものだ、記憶から消して置いてくれ。」

「いやいや、どんな事故よ!普通はしないからね。」


「いいんです。ユウちゃんと私の間の事ですから。

それにあれだけ見せつけたら誰も取らないでしょ?」

「甘いわねチカちゃん、キスぐらいで動じる女だけじゃないのよ?」

リンとチカは何故かにらみ合いを始めていた。


「シン、チカちゃんとリンが怖い。」

俺はこっそり抜け出しシンの元へ。

「自業自得だ。」

「そうですよ、チカちゃんに流されるのがダメなんですよ。」

「あれ?ユキちゃんきてたの?」

シンの妹のユキも参加していたようだ。


「はい、ダメな兄の見張りに来ました。

はい、ユウヤさんこれでも飲んで落ち着いてください。」

ユキは俺に水・・・のような透明な液体を渡してくる。

「ありがとう、だいぶ酒も回ってるから、水は助かる・・・」

俺は一気に渡された液体を飲み込む・・・

「こ、これ、スピリタス・・・」

俺の意識はここで途切れた。


「あらあら、ユウヤさん、大丈夫ですか?

私が介抱してあげますね。お兄ちゃんユウヤさんをテントに運んで。」

「おいおい、テントで何をする気だ?」

そう言いながらシンは俺を担ぐ。

「ロリコンの道から戻してあげるのです。」

「高校生のお前が相手だと、あまり変わらない気がするんだが?」

「シャーラップ!!お兄ちゃんはユウヤさんが義弟というのに憧れは?」

「・・・本当の兄弟か、有だな。」

「なら、黙って協力を・・・」


「無しです!

ユキさん何をしてるのですか!

シンさんも協力するなんて!」

チカはユウヤが担がれているのを見て走ってきていた。

「・・・チカちゃん早かったね。」

「横からいなくなってたから、直ぐに探していたの。

私が介抱しますのでユキさんはバーベキューを楽しんでくださいね。」

「いいよ、ユウヤさんは私が見るから、お嬢様のチカちゃんは会場にいてね。」

「いやいや、部外者のユキさんに任せられません。」

「あら、私はユウヤさんの兄弟分のシンの妹ですよ、身内と言ってもいいのでは?」

「本当の兄弟になられたらいけませんので、渡せませんわ。」

チカとユキは睨み会う。


「ユウヤも大変だなぁ~」

シンは酔い潰れてのほほんと寝ているユウヤの頬をつつきながら、女の戦いを見物していた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る