第28話 バーベキュー前編

「海でバーベキューをしよう。」

おやっさんの思い付きからこんな発言がでる。

「おやっさん、正気ですか?俺達が海に行ったら一般人に迷惑でしょ?

バーベキューするなら、おとなしく敷地内にしましょう。」

「やだ。海がいい!!」

「あんたは子供ですか!」

俺の抵抗虚しく、海でバーベキューが決行されることとなった。


俺達は平日海水浴場を貸し切る事にする。

流石に極道だらけの海に一般人を入れる訳にはいかなかった。

とはいえ、男達ばかりだとむさ苦しいので、各自、彼女や家族、女友達の参加を自由にしていた。


女友達の参加を強く要請してきたシュンの頼みにより、参加した独り身の女性にはブランド物のアクセサリーが用意されていた。


「ユウヤ、また身銭切ったの?」

リンも参加したようだ、俺に話しかけてくる。

「ああ、シュンの頼みでな、盛り上がりには女性がいると熱弁されたよ。」

「組の経費にすればいいのに。」

「流石に会計に怒られるよ。まあ、若い者の面倒を見るのは先輩の役目だしな。

女性陣には今日は楽しんでいってくれと伝えてくれるか?」

「もちろん、みんな既に楽しんでいるよ。」

リンが言うように、みんな和気あいあいと楽しんでいる様子が見える。


「ユウちゃん、こっち来てよ~」

チカの呼ぶ声が聞こえてきた。

「リン、チカちゃんが呼んでるから向こうに行ってくるよ。」

「うん、聞こえたよ。行ってらっしゃい~」

リンに見送られ、チカの元に走っていった。


残されたリンの所に友人のハルがやって来た。

「リン、あの人がユウヤさん?」

「そうよ、ハル、金子組の稼ぎ頭よ。」

「へぇ~いい男じゃない。」

「止めときなよ、ユウヤはチカちゃんの物なんだからね。」

「わたしは~別に二号さんでもいいんだぁ~贅沢な暮らしさえさせて貰えれば。」

「私は止めたからね。」

「リン?何それ、ちょっと怖いじゃない?」


「ユウちゃんに近づかないで貰えますか?」

「えっ?」

いつの間にかハルの前にチカが立っていた。


「チカちゃん、違うのよ、少しからかいに来たとかそんな感じなの。」

リンは慌てたように言い訳をする。


「そうですか?それならもういいですよね?」

「う、うん、ハル行くよ!」

リンはハルの腕を掴み無理やり立ち去る。

「ちょ、ちょっとリン?何がどうなってるの?」

「後で教えるから、早く来なさい。」

リンとハルがいなくなったあと。


「ユウちゃん、浜辺は危険何ですから、一人でウロウロしないでくださいね。」

「いや、危険な事は無いよね?」

「ううん、その認識が危ないの!

ここは肉食獣が徘徊する場所なんだから!」


「いないよ!!

って、その水着、新しいね。似合っているよ。」

チカは既に水着に着替えてきていた。


「ありがとう♪一番にユウちゃんに見せに来たの。」

「うん、可愛いよ。」

「そんな、可愛いなんて・・・」

チカはモジモジしながらも凄く嬉しそうにしていた。


「シンさん、あれ?どうします?」

「ほっとけ、シュン。あきたら来るさ。それより、手を動かせ。」

シンやシュン、その他の男性陣はバーベキューの準備やタープの設営に追われていた。


「宴の始まりだ!」

おやっさんの宣言でバーベキューが始まる。

水着姿のまま、行うバーベキューは非日常を感じられ、新鮮なものがあった。


「おじょう、その水着にあってますよ。」

タクミが顔を赤らめながら、チカの水着を褒めるも、チカは上着を羽織り、隠す。

「あ、ありがとう。でも、恥ずかしいのであまり見ないでね。」

「そんな、恥ずかしいなんてありませんよ!」

タクミの血走ったような目にチカは引きながら・・・

「う、うん、でも、恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。じゃあ、私はユウちゃんの所に行くね。」

チカはタクミの返事を待たずに俺の所にかけてくる。


その時俺は肉を食い酒を飲みながら、シンと談笑していたのだが・・・

「ユウちゃん!!」

チカは俺に飛びついてきた。

「チカちゃんどうしたの?」

俺にギュッと抱きつき、体を擦り寄せる。

「あのね、少し気持ち悪かったの、少しこのままでいさせて。」


良く解らないが、俺はチカの頭を撫で落ち着かせる。

「ふにゃぁぁぁ~ユウちゃん・・・」

チカは甘えモードに入ったようでベッタリくっつく。


「おやっさん、こちらですぜ!」

シンはどうやらおやっさんを呼んで来たようだ。

「ユウヤ、こんなところで子作りか?

せめてテントの中でやれ。」

「違います!」

「何が違うんだ、早く孫を見せろ!」

「あんたはそれでも親か!」

俺とおやっさんが口論している中でチカは俺の胸元に顔をつけ、キスマークをつけ始める。


「ちょ、ちょっとチカちゃん、何してるの?」

「キスしてるの・・・綺麗に跡ついたよ。」

「いやいや、おやっさんもいるからね。止めとこうか?」

「やだ、他の人に取られないようにするの!」

チカはもう一つキスマークをつけ始める。


「親の前でキスマークをつけるとは・・・チカも成長したなぁ~」

「おやっさん!何を感心しているのですか!

此処は止めるところですよ!」

「俺は娘を自由に育てると決めているんだ。」

おやっさんはキメ顔で言う。


「おやっさん!お、おじょうが変ですよ!止めないと!」

タクミが俺の所に来て、震えながら言う。

「おお、タクミ、いい所に来た。頭のおかしいおやっさんの説得に協力してくれ。」

「ユウヤさん!あんたもあんただ!おじょうに何をしたんだ!

お淑やかなおじょうがこんな真似をする筈が無いじゃないか、何か変な薬でも飲ましたのか!」

タクミは血相を変えて俺に噛みついてくる。


「誰がそんな事をするか、そもそもそんな事をしたらおやっさんに殺されるわ!」

俺とタクミが話していると、チカは一瞬タクミを見ると震え出した・・・

「いや・・・」

「チカちゃん?大丈夫?」

震え出したチカを覗き込むと・・・

「ユウちゃん・・・」

チカは潤んだ瞳のまま、俺とキスをした。


「???」

いきなり過ぎて状況についていけない俺と、


「おお!!カメラ、カメラを、持ってこい!」

写真におさめようとする、おやっさん。


「おじょうーーー!!」

叫ぶタクミがいた・・・



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