第20話 バレンタイン

「ユウヤ、今日、おじょうの学校の友達が来るみたいだぞ。」

「シン、それで?」

「どんな奴が来るか見たくね?」

「俺達が顔を出すと迷惑だろ?」

「いや、俺は気持ち良くさせる自信があるね!」

「気持ち良くさせたらダメだろ!チカちゃんの同級生なら相手は中学生じゃねえか!」

「ふっ、俺は年齢で差別なんかしないのさ!」

「ダメだって言ってるんだよ!」

「シンくん、そんなことをするつもりなんだ・・・」

その日、チカから家に出入り不可の命令が金子組員に下った。


「チカの家って大きいね~」

チカの友人のサチが家を見て言う。

「ははは、最近売り上げがいいみたいでお家が大きくなっちゃって。」

「もしかして、お嬢さまなの?」

もう一人の友人ユカリが茶化す。

「そんなわけないでしょ、普通だよ~」

「そうですわ、これぐらい普通の家ですわ。」

そして。もう一人レイカが感想を述べる。

「さあ、入って。部屋に案内するね。」

チカは自室に友人を招いた。


「見たかゆうちゃん。」

「なんで、覗いてるんだろう?」

「そんなことを聞きたいんじゃない!まあまあ、可愛い子いたじゃん?」

「そうか?まだ、子供だろ?」

「お前は青い果実の味を知らんのか!」

「知らねぇよ!」

「これだから一部お子さまは・・・」

「シ~ン~ケンカ売ってるのか?」

「まあまあ、サクランボの話は置いておいて、どうやって侵入する?」

「おいおい、命令が出てるだろ?」

「ゆうちゃんなら命令外だろ?盃無いんだし。」

「ぐはっ!てめぇ痛い所を!」

「そして、俺はゆうちゃんの護衛で仕方なく入るしかなかったんだ。」

「何の護衛だよ・・・」

「ヤクザの家に乗り込むんだぞ!護衛の1つもいるだろ?」

「関係者じゃねえか!」

「さあ、侵入するぞ!」

「おい、待てよ。」


シンと二人で中に・・・

「さて、どんな口実で部屋に行くかな?」

「いや、やめとこーぜ。チカちゃんに怒られるぞ。」

「いや、お前は大丈夫だ。それより・・・よし、おじょうの隣の部屋に行くぞ。状況を確認せねば。」

「おい、シン!」

俺とシンは物置になってるチカの部屋の隣のスペースに入って中の声を聞く。

「何してるんだか・・・」

「しっ!バレるだろ!」


俺達が聞き耳を立てている中

「チカ~」

「なに?ユカリ。」

「昨日また、告白されてたでしょ。」

「な、なんで知ってるの?」

「ふふん、情報通の私をなめてもらっちゃ困るよ。それで、どうしたの?」

「断ったよ。」

「えーうそー!相手は野球部のタカシくんでしょ?なんで断るの!」

「えっ、だって。話した事もないし・・・」

「もったいない、付き合ってから話したらいいだけじゃん!」

「ユカリ、ダメだってチカには好きな人がいるんだよね~」

「サ、サチ、何を言ってるのかな?かな?」

「そうなの?ダレダレ?」

「そんな人学校にいないよぉ~」

「ホントに~?」

「ホントだよ。」

「チッチッ!ユカリ聞き方がダメだよ、チカ~学校以外には?」

チカは目をそらす。


「白状しなさい!」

「なんで、そんなに聞きたいのよ!」

「そりゃ学年1の人気者の好きな人を知りたいじゃない?」

「誰よ、それ?」

「チカだよ。」

「私そこまで人気ないよぉ。」

「またまた、うちの学年の男子に初恋の相手って聞いたら、だいたいチカの事になるよ。」

「うーそーだぁー」

「皆さん、お話はそれぐらいにして、今日の目的を始めませんか?」

「レイカさん!そうだよ、サチとユカリもチョコ作るんでしょ?台所に行こ!」

「だから、チカの渡す相手が聞きたいんだけどな?」

「お世話になってる人に配るだけだよ。」

「マタマタ~」

「ユカリさん、ホントに始めないと終わらなくなりますわ。」

「うーレイカさんの言う通りだけど~」

女の子4人は台所に向かった。


「ゆうちゃん、台所に向かうぞ!」

「シン、バレるって!やめとこーぜ。」

「覗くだけだからいけるって!」

俺達も台所に移動した。


「一応、材料とラッピングの道具は用意したよ。」

チカは机の上に並べていた。

「たくさんある!」

「これで義理チョコ渡したら誤解されるよね。」

「さあ、湯煎から始めましょ?」

チョコを刻み、湯煎をするが。

「ねえ、このチョコ普通の板チョコじゃあないよね?」

「甘さが違うのとか色々用意しましたから好きなのを選んでくださいね。」

「ねぇ、随分本気だよね?」

「そ、そうかな?」

「本命あるでしょ?」

「ど、どうかなぁ~うちの従業員さんにも配るから、色々あったほうがいいかなぁってね。」

「そういえば、たくさん作ってますよね。」

「でしょ?」

「チカ、このサチの目を誤魔化せるとでも?」

「な、なにかな?」

「1つだけ別で作ってるよね。」

「・・・甘いの苦手な人がいるから。」

「なるほど、その人か!ダレ、写真ないの!」

「ちょっと!サチさん、遊んでないで完成させましょう。それに本命は人に言わなくてもいいでしょ?」

「そういうレイカさんも本命ですか?」

「・・・ノーコメントで。」

「えっ、レイカも本命なんだ!誰なの」

「ユカリさんも本命なんでしょ!」

「そうだよ、私はサッカー部のケンゴくんにあげるんだ♪喜んでくれるかな?」

「あれ、告白までいっちゃう?」

「・・・受け取ってくれたら考えるかなぁ~」

「ねえ、私達に聞いてるサチはどうなの?」

「えっ?わ、わたし?」

「そうだよ、人に聞いてるのに何を知らない顔をしてるかな?」

「私はほらね、」

「答えになってないー!」

騒がしくチョコを作っている、チカを見ながら。


「おっ、おじょうは本命チョコを用意してるみたいだな。婿殿」

「誰がだ、それにみんなも毎年チョコもらってるじゃないか?」

「お前だけ違うのに何故気付かない!」

「そりゃ俺が甘いの苦手なの知ってるからね。チカちゃんの優しさだろ?」

「はぁ、報われないなぁ。いいか、ゆうちゃん、おじょうはな・・・」

「シンくん、なんで此処にいるかな?」

「・・・」

「ゆうちゃんまで一緒に覗きなんて!」

「ま、まて、チカちゃん、俺はシンを止める為に。」

「ゆうちゃんはいいの、でも、覗きはダメだよ。でも、シンくんには立ち入り禁止って伝えたよね。」

「お、俺はゆうちゃんの護衛をしてたんだよ。ほら、悪い女に捕まったらいけないだろ?」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ。」

「それはそうですが、シンくんが悪い女を呼び寄せる疑惑があるのですが?」

「ち、ちがう、俺はあくまでもゆうちゃんの為にやっている事で、なぁゆうちゃんからもフォロー頼むよ。」

「仕方ない、チカちゃん、覗いてた俺達が悪いけど許してくれないかな?」

俺はチカの目をじっと見ながら懇願する。

「・・・今回だけだからね。」

チカは顔を赤くし目を反らした。

「ありがと、次はないようにするよ。」

握手し、頭を撫でてから、シンを連れて退却した。

「ふう、何とか許してくれたけど、シンは反省しろよ!」

「あれぐらいで許されるお前が羨ましくもあるな。」

「なんでだよ、誠心誠意謝ったらチカちゃんは許してくれるよ。」

「あー確かにお前が誠心誠意謝ったら許してくれるさ。」

「なんだよ、歯切れが悪いな。」

「何でもない、さあ、帰って一杯やるか?」

「まあ、いいさ、他の奴らにも声をかけて飲むか?みんなも追い出されてる事だしな。」

俺達は若手を連れて飲みにいった。


一方、

「チカどうしたの?顔が赤いよ。」

「うーゆうちゃんの卑怯もの~あんなに見つめられたら私は・・・」

「チカ?おーい、チーカー?」

「あっ、な、なんでも、無いの。さぁチョコを作りましょ♪」

「なんか怪しいなぁ~」

チカ達はチョコを完成させた。


バレンタイン当日、

「これ、義理チョコだけど・・・」

チカはクラスメイト全員に義理チョコを渡した。

渡したあと、サチが話しかけてくる。

「チカ、勘違いする人が出るからみんなに渡すの止めたら?」

「えっ?でも、クラスメイトぐらいは、それに残り物だし。」

「それでも、手作りでしょ?」

「砕けた欠片を手作りって言うのかな?」

「勘違いする奴はいるんだよ、気をつけないと。」

「そうなのかな?」

「それで本命は?」

「何の事かな~?」

「このカバンの中か!」

サチがカバンを漁るが出てこなかった。

「あれ、ない?」

「カバンを漁らないでよ。」

「本命は何処なの?もう渡したの?」

「・・・まだ、渡してないけど。」

「やっぱり、あるんじゃん!誰に渡すの!」

「あっ!言いません!誘導尋問は卑怯だよ~」

「おしえなさ~い」


その日の夜、

「ゆうちゃん、いつもありがとう。これ感謝の気持ちだよ。」

「チカちゃん、いつもありがとう。お陰で0個にならないで済んでるよ。」

「ううん、私の一個だけで満足してね。」

「満足するよ、いつも美味しいしね。」

俺はチカの頭を撫でる。

「へへ、」

嬉しそうなチカの姿があった。



「一個だけって、女性陣を止めてるのおじょうなのに。」

「ほら、シン二人を覗かない、私も義理チョコぐらいはあげる関係なんだけどね。」

「止めとけ、おじょうの嫉妬は怖いぞぉ~」

「わかってるって、それより、シンは何個目かな?」

「さあ?数えてないから知らん。」

「あんたは彼女の私のだけで満足しなさい!」

「くれるのだからもらうだろ?」

「あんたは直ぐに浮気するんだから!」

「モテる男は辛いな♪」

「彼女の前で言うセリフかぁー!」

シンと彼女のエミはケンカしながらもその日の夜は二人きりで過ごした。

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