第19話 博打
「ユウヤ、シン仕事だ!」
俺とシンはおやっさんに呼ばれた。
「なんですか?」
「俺の後輩が独立してな、今度賭場を開くんだが俺の代理として行ってきてくれないか?」
「おやっさんは?」
「俺はその日、他で義理事が合ってな、そっちに行かないといけないんだ。」
「わかりました。でも、俺達でいいんですか?」
「お前達なら問題がないだろ?若手筆頭のシンと後継者のユウヤだからな。」
「おやっさん、シンが若手筆頭なのはわかりますが俺が後継者って何ですか?」
「チカの婿だろ?聞いたぞ、クリスマスに結婚指輪贈ったんだってな。」
おやっさんは笑いを堪えながら言った。
「なっ!あれは結婚指輪って知らなくて指輪を贈るつもりだっただけです!」
「またまた、いいんだぞ照れなくて。しかも、お互い薬指につけていたそうじゃないか、それでいつ両親に挨拶に来るんだ?ん?」
「・・・おやっさん、楽しそうですね。」
「そりゃね、俺の秘蔵のワインを勝手に持ってくる子はからかわないとやってられないよ。」
「あのあと姐さんに絞られたんでしたっけ?」
「・・・言うな。」
「チカちゃんに弟?妹が出来るんですか?」
「・・・言うな。」
「十月十日が楽しみですね♪」
「言うなと言ってるだろが!」
「夫婦仲がいいのはいいじゃないですか!」
「なんで俺があんなおばさんと!やるなら若い女が・・・いや、こんな話はするべきではないな、うん。」
「あ・な・た?妻の何に不満があるかお聞きしていいですか?」
「いや、ま、まて。ほら部下もいるし。」
「おやっさん、命令承りました、さっそく俺とシンは準備に入りたいと思います。では、失礼しました。」
「まて!ユウヤ、シン!」
俺とシンは部屋をあとにした。
「おやっさんも仲がいいよな。」
「シンも彼女を大事にしろよ。」
「俺は女に縛られねぇ~」
「それで浮気ばかりするなよ、怒られる時なぜか俺も巻き込まれるんだからな。」
「一蓮托生だな。」
「俺は関係ないんだが。」
「俺を止めないユウヤが悪い。」
「俺は止めてるよ!」
「そうだっけ?」
「はぁ、それよりスーツとか準備しとけよ。代理として行くんだから恥ずかしくないようにな。」
「りょーかい。婿どの♪」
「シン!」
シンは俺をからかって逃げていった。
当日、
「このたびは独立おめでとうございます。おやっさんも喜んでおりましたが本日は欠くことの出来ない義理事の為に不参加の不義理どうかお許しを。」
「丁寧な挨拶、ありがとうございます。兄貴には若い時分より世話になりました。今回近くで組を起こすことが出来ました。以後のお付きあいも宜しくお願いします。」
お互い定型文のような挨拶をすませ、祝い金を渡し、奥の賭場に向かう。
「シン、ほい軍資金、見事に負けてこいよ。」
「負けるのか?」
「負けるの、派手に負けて資金力を見せつけるのと祝い金の追加みたいなものだ。」
「じゃあ、遠慮なく負けてくるさ。」
俺とシンは別れて賭場に参加する。
二時間後・・・
「ユウヤ、俺は終わったぞ。そっちは?」
「・・・シン、どうしよ?」
「どうした、何かあったのか?」
「勝ちすぎてる・・・」
「はい?」
「もう二億とってしもた・・・」
「お前なにしてんの!おやっさんの後輩を潰す気か!」
俺は首を横に振る。
「いやいや、丁半で二分の一のはずが外れないんだって!」
「丁かたないか!半ないか!」
「あっ、半で。それでだな、どうしたらいいと思う?」
「一、二の半。」
「・・・どうしよ!また、増えた。」
「おまえなこんなの一点がけしたらすぐに終わるだろ?」
「・・・そうして出来たのがこの金額です。」
「マジか?」
「マジです・・・」
「丁かたないか!半ないか!」
「今度は、うーん半!」
俺は全部かける。
「三、四の半!」
「・・・どうしよう。額がヤバクなってきた。」
「お客人、別室でお話よろしいか?」
「はい、すいません。」
俺とシンは別室に行く。
「申し訳ありません、当方の賭場は恥ずかしながらお客人に支払う額を御用意出来ておりません。この不始末、アッシの指でご勘弁願えませんか。」
「ま、まった!指切られたらこまります。」
「しかし、この不始末博徒として恥じるばかり。」
「いえ、負けるつもりが負けないコイツが悪いんですよ。うちとそちらの組の付き合いで指を落とされると後日シコリを残すでしょ、さて、どうするか?」
「ねぇ、もしかして接待用にイカサマしてる?」
「いえ、うちはイカサマをしない事を誇りとしてますので、それにイカサマするなら払える額のうちに押さえるでしょ。」
「そうだよね~さて、じゃあ、建設的に話しましょう。俺達は負けて帰りたい、そちらも負けて欲しいということでいいですね。」
「言葉は悪いですが、そうですね。」
「じゃあ、イカサマしてください!」
「えっ!」
「全額掛けますので、俺に勝ってください。」
「しかし・・・」
「少々強引ですが、負けないと家に帰れないのです。」
「しかし、いいんですね?既に莫大な金ですよ。」
「このお金は持って帰れないお金ですから。」
「わかりました。では、他のお客さんを巻き込むわけにはいきませんので一騎討ちでお願いしたい。」
「もちろんです。」
そして、打ち合わせ後、会場に戻り一騎討ちを行う!
もちろん、イカサマの結果俺のまけだ!
周りにもバレているみたいだったが・・・
「さて、シン帰ろうか。」
「帰ったらおやっさんに叱られるな。」
「ちゃんと負けたのに?」
「向こうの組長、謝罪の電話してたぞ。」
「うわぁ~マジか~いらんことを・・・」
俺の足は一気に重くなった・・・
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