第3話 大国主大神、驚く

兎の案内で、ヒロとカイは川沿いに歩く。

途中、夜になれば野営をする。

その野営の度に、兎が寝る場所がヒロに近づいていくのには困ったのだが・・


3日後、集落に到着した。

兎は、この集落を”国”と言ったが。

水田に囲まれた、小さな村。

藁を積み上げた門を過ぎて。住居が何軒か立っているだけの場所。


だが、それを見てヒロとカイは茫然とした。

いわゆる、竪穴式住居。壁もなく藁を積み上げただけのような建物。

奥には、ひときわ大きな建物。でも竪穴式住所には違いない。

何軒かは高床式倉庫も見える。でも、人が住む所ではないらしい。

村にいる人々は粗末な服装。みんな刺青をしている。

刺青なんて・・大陸では奴隷にしか見たことがない。


「さあ、ヒロ様・カイ様。ここが私の家です」

案内されてはいる建物。小屋にすら見えない。

”やっぱり、地面に直接座るんだ・・”

直接と言うと語弊がある。

地面に藁で編んだものを敷いて、そこに座っているらしい。

でも、床は無い。


真ん中のいろりのようなところで、土器を使って何かを煮ている。


ヒロとカイは見つめあった。

大陸(今の中国)では世界でも先端の文明を見て、感激したものであった。

農業に鉄を使ったり。レンガを積み上げて家を作り、床があり、寝床(ベッド)もある。

裕福な邸宅ではガラス窓さえあった。

人々の服装は木綿や絹で作られ洗練されていた。

移動には馬や馬車を使い、長距離まで移動できる。


それが、海を渡った隣のこの国では・・・

来ているのは貫頭衣。服と呼べるかも怪しい。

家畜もいない。

家は壁も床もない。

文明の差が激しすぎて、唖然とするしかなかった。

”こりゃあひどいや・・・”

原始的な暮らしに、あきれるしかなかった。


兎は、その家に兄と一緒に暮らしているそうだった。

「妹が世話になりました」

兎の兄の、ハヤタに礼を言われた。

その頃には、ヒロとカイは念話もいらないくらいには言葉を理解できるようになっていた。

野菜を土器で煮たものを夕食としてご馳走になる。

葉っぱの器に箸で取り分けてもらう。

”箸はあるんだ・・”

「すみません。最近村ではあまり食料が取れなくなってしまって、こんなものしかないんです」

芋と思しきものと菜っ葉を一緒に煮たものらしい。水田があったはずだが・・

「食料が取れないって?」

「川があふれて、畑が流されてしまったんです」

「それは大変だね」

「あ・・火が消えてしまった・・・兎、薪を取ってきてくれ」

「はい、おにいさん」


その瞬間、兎はかき消えた。

ヒロとカイは、目を見開く。

「「はぁ!?」」

だが、ハヤタは驚く様子はなかった。


”おい・・さっきのって魔法?でも見たことない魔法だよな”

”あぁ・・カイの時空魔法に近いようだけど・・”


すぐに、外から薪をもって兎が入って来た。

「おお、ありがとう」

そういってハヤタは当たり前のように受け取る。

そして、囲炉裏に置き口の中で呪文らしきものを唱える。

すると、薪から炎が上がった。

「「はぃい!?」」

兎が不思議そうに聞く。

「どうかされましたか?」

カイが驚きながらも聞く。

「あんたら。魔法使いだったのか?」

「魔法使い?これくらいみんなできますよ?」

みんなできる・・・?


大陸では、この国では鬼道を使うと聞いてきた。

鬼道とはなにかは知らずに来たのだが。

この国の文明は遅れており、とても原始的な生活。

それなのに、魔法が普通に使えるらしい。


カイもヒロも長いこと生きてきたのだが・・・ ひさしぶりに、かなり驚いた。

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