おい、メイド。結婚するぞ

「……なんだお前達。ようやく結婚する決意が着いたのか?」


「決意……というよりも、俺がメイーーー千世の悩みの種を解決しただけに過ぎませんので、父上」


 千世が結婚の申し出を受けた次の日、俺は父上に結婚の報告をしに、父の書斎に訪れていた。


「そうか……今まであくせくとお前のお見合いに対する断りの返事をもう考えないで済むのだな」


「………それはすまないな」


「構わん。いくら俺達の会社が大企業とはいえ、政略結婚なんてしたくはないからな」


 と、フッと口角を上げて笑う。


「とりあえず、報告としてはこれだけだ。時間取らせて済まなかったな」


「構わん。息子と顔を合わす時間なんて一日あるかないかだからな。お前の顔を見るためならこの程度の時間なら何時でも取っておこう」


「ありがとう。千世が帰ってきたら二人でここに来るよ」


「分かった。それじゃあ今日のディナーは豪華にしてやろう」


「失礼する」


 父に一礼をし、部屋から出ようとしたその時ーーー


「あぁ、言い忘れてたが、結婚おめでとう」


 と、祝いの言葉を貰った。






「千世」


「旦那様ーーーーわぷっ」


 千世の姿を見つけ、すぐ様抱きつく。今までこんなことはしてなかったからな。


「ど、どうしたんですか?旦那様……」


 少し声が裏返りながらも聞いてくる千世。


「……いや、なに。今日もお前が可愛いなと思ってな……」


「……旦那様」


 千世の声が熱を帯びるので、唇を差し出すように目を閉じると、ごくっ、と千世が生唾を飲んだ音が聞こえ、衣擦れの音が聞こえた後に、千世の両手が俺の胸に優しく添えられる。


「旦那様………好き、です」


 軽いリップ音と、唇に触れる甘い唇。一瞬、触れるか触れないかのキス。だが、それだけでもとても幸せに思える。


「………おい、メイド」


「………はい、坊っちゃま」


「結婚、するぞ」


「……はい、喜んで!」


 差し出した右手に、メイドの左手が重なった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これにて終わりです。最終話を出す日に、カクヨムコン週間ランキング一位で終われるという贅沢

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

結婚しよう、メイドさん 結月アオバ @YuzukiAoba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ