おい、メイド。俺はもう我慢の限界だ

「おい、メイド」


「? はい、どうしましたかーーーってキャ!!」


 帰宅し、メイドの姿を見つけると、俺はすぐさま声をかけ、ズンズンとメイドまで歩くと、そのまま壁際まで追い詰めて、この前のように壁ドンをする。


 しかし、今日のはひと味違う。この前は逃げられたので、左手はメイドの腰に回し、右手は肘を壁に付けるようにしている。


 密着度はこの前よりも高く、ぶっちゃけると今すぐにでもこのメイドの唇を奪いたいが、それはグッと我慢して、俺がこんなにも今日はいつもよりも積極的な理由を話そう。


「ちょ……坊っちゃま!近い……近いです……っ」


「当たり前だ。今日はこの前のように逃がさんぞーーーーメイド」


「…………っ、は…い」


「俺が、お前にプロポーズして、二週間経ったぞ。心の準備とやらはまだ整はないのか」


 そう言うと、メイドの顔はさらに真っ赤になる。


「俺のことは嫌いではないのだろう?」


「そっ、それは勿論です!私が坊っちゃまのことを嫌いになることなんて、天地がひっくり返ってもーーーー」


「じゃあ何故、そこまで俺との結婚を拒む」


「そ、……れは」


 メイドは、泣きそうな顔になりながら、スカートの裾をキュッ、と握った。


「わ、私はただの坊っちゃまの専属メイドという立場でしかありません……そんな身分の私が、坊っちゃまとの結婚が……許されるはずありません」


「メイド………」


「私は、死ぬまでこの屋敷にーーーー坊っちゃまに仕えることを決めています。だから、坊っちゃまと結婚はしたくてもーーーーー」


「ならわかった」


「坊っちゃま……」


 あぁ。分かったさ。


 言ったよな?俺は人を見る目があると。


 改めて言うが、俺はメイドがこの世で何よりも大切で、愛おしい存在だ。それこそ、結婚がしたいほどに。


 最初、結婚を申し込み、断られた時は、もしかして俺のことが好きでは無いのか?などと思ったが、次のメイドの顔を見た瞬間に、その考えは決めた。


 だって、あそこまで顔を赤くしていたら、俺の事を嫌いだという選択肢は無くなるに決まってるだろう?だから俺はこの日までアプローチしてきたがーーーーもう決めた。


「メイド」


「…………はい」


 お前が身分の差で悩んでいるのならーーーーそれを無くしてやる。


「お前を今日、今この瞬間を以て、俺の専属メイドをクビだ」


「ーーーーーーぇ」


 メイドの目が大きく見開いた。メイドの眦に涙が少しずつ浮かんでくる。


「そ、そんなっ!どうしてですか坊っちゃーーーーー」


 俺は、メイドの口に指を当て、それ以上は言わせないように口を塞ぐ。


「そして、今日からお前は俺の妻だ。これで何も問題は無い」


「…………っ!!」


「お前はもう、メイドじゃない。だから、堂々と俺の妻と名乗れメイドーーーーーいや、千世」


「ーーーーっ!!!」


 メイドーーーちや、千世ちせの目から涙が溢れてくる。


「………ほ、本当にいいんですか………」


「あぁ。これからも、メイドとしてじゃなくて、妻として、俺の隣で支えてくれ」


「っ、坊っちゃま!」


「っと」


 千世が俺に抱きつくので、俺はそれを軽く受け止める。


「………坊っちゃま、本当に大馬鹿者です、こんな私を妻になんて………」


「それなら俺は、大馬鹿者でいいさ。お前のためなら」


「坊っちゃま…………」


「千世、俺はもう坊っちゃまじゃないーーーー旦那様か、名前で呼べ」


「………っ、はい………旦那様」


 そして、俺たちは自然と顔を寄せると、そのまま影が重なった。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 次回、最終回です!短編だからね!しかたないね!


 あと、カクヨムコン短編週間ランキング二位ありがとうございます!もっとお星様欲しいです!(強欲)


 あ、自称で砂糖の錬金術師と名乗ってます。

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