明るい未来の先に待つのは…

 今回は、とある未来の話です。これが、最後のお話となります。


今回最後の話も、とある人物の視点となります。


※ここから先は今までとは違い、未来のお話となりますので、敢えて色々と伏せさせていただきました。

※誤字がありましたので、本日訂正しました。




======================================

 「…もうっ!…どうして何時いつもパパは、そうなのよっ!」


わたくしは今、頬を膨らませて怒っていました。何故ならば、わたくしはもうすぐ中学生になりますのに、わたくしの父親はある意味とても偏屈な人で、わたくしが仲良くする相手を、何かと毛嫌いされるのです…。今もそのことで、父親と揉めている真っ最中なのですよ。


 「……莉々愛りりあ、よく聞きなさい。これは父親として君の為を思って、話していることだ。今の君は人生経験も短いし、まだよく分かっていないだろうが、これは将来にも繋がる大切な話だよ。」


わたくしの目の前に座る父は、けれども、要は単にわたくしの友人関係に、制限なさりたいだけなのよ。特に、我が父が気に入らないとある人物を、排除なさりたいだけですわ…。


理由は勿論のこと、わたくしも理解しておりますけれど、それはそれ、これはこれという風に考えておりました。それに、気に入らないのは父だけで、わたくしは気に入るというよりは単に懐いて、勝手に慕っているだけですわ。確かに彼からは、実の妹のように可愛がってもらっておりますし、わたくしも実の兄のように慕っておりますもの。


わたくしには弟はおりますが、わたくしが我が家の最初の子供でして、兄や姉はおりません。ですから、彼のことは自分に兄が出来たと、ずっと仲良くしていただいて。父もその頃は穏やかに拝見されておられたのに、彼と出掛けて一緒に過ごすことを、ここ最近は急に反対なさるようになって…。


以前からならばまだ理解出来ましても、もう…訳が分かりませんわ。パパは、一体何がされたいの?…どうしてこうも彼を、毛嫌いなさるのよ…。


その答えは簡単明瞭で、彼がわたくしと正式に婚約したいと、申し込まれたからですわね。わたくしも少しばかり気が早いのでは…と、思いましてよ…。それでも彼の立場から申しますと、決して早くもなければ遅くもない、と…。寧ろこれ以上遅くなりますと、彼が後悔されるようでして…。


そうご説明いただきましては、わたくしも彼を嫌ってはおりませんし、寧ろ大好きだと申し上げましてよ。但し、まだ兄のように慕う部分が大きいのですが。


 「リリ。君に好きな異性がいないのならば、僕と婚約してくれないかな?…近い将来、僕もリリも政略的な婚約をさせられるという、可能性が高い。特にリリのお父君は、昔から僕のことを毛嫌いされているようだし、おられるみたいだ…。」

 「…ごめんなさい、泉李せんりくん。うちのパパは、ちょっと偏屈なところがある人みたいで、決して…泉李くんだけを目の敵にされては、おられません。うちのママの見解では、わたくしがパパの最愛の娘という理由で頑なになられ、異性の泉李くんに盗られると感じておられるようで…。」

 「…うん、知ってる。まあ、そう思われるだろうね…。」

 「泉李くんのお父様は、うちのパパとお友達でしょう?…うちのパパはママと結婚する以前から、泉李くんのお父様に対し何かと、ライバル視されておられたのですって…。泉李くんは…パパが唯一、ライバル視される人物のご令息ですものね。その所為で、泉李くんを敵視されておられるのですよ。」

 「……うん、そういうことだとは思っていたよ…。正確には、それだけじゃないだろうけれどね…。」

 「???」


彼に正式な婚約の話を振られた時、こういう一幕がありましたわ。それは、そうですよね…。パパが毛嫌いされる現実を、当のご本人が気付かないなんて、有り得ませんものね…。泉李くんには、他にも心当たりがあるご様子ですが、幼い頃の泉李くんがパパを怒らせたのでは、ありませんよね?…他にも、何かありますの?


 「それよりも、泉李くんのお相手ならば、もっと綺麗なお姉さまが宜しかったのでは?…わたくしと婚約されても、本当に…宜しいの?」

 「相変わらずリリは、よく分かっていないね。今直ぐ婚約しなければ、後で後悔するのは僕なのだよ。但し、君のお父君が仰る通り、リリが逆に後悔しないとは、言い切れないのだけれど…。」

 「何故ですの?…わたくしは泉李くんのこと、大好きですわ。」

 「……それって、…だよね?」

 「はい、勿論。……あれ?…どうされたの、泉李くん?」

 「………分かってはいたけれど、全力で凹むなあ……。」

 「??」


学校でもモテモテの泉李くんには、彼と婚約したいと望む女子が、学校内だけでも大勢おられます。にも拘らず、泉李くんの婚約相手がわたくしでも良いかと、疑問に思いましてよ。






    ****************************






 彼からは、意外な答えを返されましたわ。今直ぐ婚約しないことには、後で後悔するのは泉李くんで、婚約することで…後悔するのは、わたくしだと…。


何それ、どういう意味ですの…。深く心配されなくとも、わたくしは泉李くんが好きですのに…。それを口に出してお伝えすれば、何故か泉李くんは頭を抱え込まれたのですが、わたくし…おかしなことでも申しましたの?


その後、すっかり凹まれた泉李くん。彼の仰りたい事情がわたくしには伝わりませんけれども、もしかして泉李くんの本音は、誰と正式に婚約すべきかを、未だ迷っておられるのかしら…。それとも、他の女子除けでしょうか?…彼はそういう自己中な人物ではなく、わたくしをただご心配されて…なのかしら?…そういう理由でしたら、妹として嬉しい限りですわね。


こうして、わたくしの許可を取られた泉李くんは、逸早く我が家に婚約を申し込まれたのですが…。実はこれ、昨日の今日ですのよ。昨日、彼に婚約を申し込まれたばかりでしたのに、今日にはもう我が家に、正式な申し込みをされました。


…は、早っ!…いえ、OKは致しましたけれども、早過ぎですわ…。何故これほどに、行動がお早いのかと…。我が家に申し込まれた以上は、彼のご両親にも既に許可を取られたと、そういうことですわね。泉李くんのご両親からも、良くお許しが出ましたよね?…この素早い行動には、と、まさかそれは…有り得ませんわよね?


泉李くんとわたくしは、物心付く前からの幼馴染でもあり、実の兄妹のように育ったわたくし達。わたくし達2人には、実の兄妹や姉弟が存在していても、其れとはまた別の意味で、わたくしが年下の弟に相談出来ない事柄も、兄の存在の泉李くんには、何でもご相談が出来ますのよ。それは泉李くんも同様でして、妹のことで…とよくご相談されますわね…。


 「妹の誕生日に、何を買えば良いのか…」


そう悩みを告げられ、わたくしも彼の買い物について行っては、共に選んだり致しましたわ。最終的に贈り物を選ばれるのは、彼なのですけれど。それにも拘らず、わたくしの分も何時の間にか、選んでくださっており…。


 「リリに選んでもらって、良かったよ。はい、これは僕からのお礼だよ。」


お気を遣わずに…と常にお伝えしましても、毎回のようにお礼の品を用意してくださって、わたくしの部屋にはお誕生日プレゼントも含め、彼からのプレゼントが数え切れないほどありまして…。


のは、何故なのかしら…。まるで、物語に登場するような、エスパーのようですわね…。


妹思いで幼馴染にも優しい泉李くんは、我が弟の面倒も頻繁に見てくださり、文句のつけようがない人材ですのに、何故かわたくしの父は反対をされ…。もしかしてパパは、わたくしの相手が彼でなくとも、婚約話には反対をされますの?


 「…いい加減になさいませ、旦那様。リリの幸せを、壊すおつもりですの?」

 「……い、いや…そういうつもりは、ないが…。莉々愛はまだ小学生で、婚約はまだまだ早い…。、良いだろう…。」

 「いいえ、ちっとも早くないですわ。そういう理屈ならば、旦那様との婚約は早過ぎでは?」

 「………あれは………」


其れまで傍観されておられたママは、見るに見兼ねた様子で、わたくしに助け舟を出され、形勢逆転しましたわ。ママに弱いパパは、ママのご機嫌を取ることが絶対なのでしてよ。…くすっ。


普段のママはおっとりされていて、ちょっと抜けたところのある母ですが、一度切れると本気で怖い…。特にパパは、全く頭が上がりませんわね…。今度、泉李くんのお母様にも、色々とお話を伺いたいわ…。


泉李くんのお母様とわたくしの母は、幼馴染であり大親友でもあり、今でも仲良くされてますのよ。彼のお母様もうちの母も、有名な家柄のお嬢様でして、その子供のわたくしもお嬢様、泉李くんはお坊ちゃんという狭い世間です。お互いの両親同士が幼馴染でしたから、わたくしと泉李くんも幼馴染なのも必然で。泉李くんのご両親がこの婚約を認められたのは、こういう背景もありますわね…。


 「…そ、それに、莉々愛と泉李の婚約を認めれば、大切な一人娘が悪友に盗られてしまう……」

 「「…………」」


…なるほど。それが、一番の理由でしたのね…。流石のママも、呆れておられるようですわ。深い、深~い溜息を吐かれた後のママのセリフに、パパは…。


 「……貴方には、わたくしがおりますわ。それでは…ご不満なのかしら?」

 「……っ!……そ、それは…ないっ!…君は俺にとって、一生最愛の妻だっ!」


ママの一言に堕ちたパパは、パア~という感じで笑顔になられ、意気揚々と…ママを口説かれますけれども…。年頃の娘の前でそういうのは、正直…止めていただきたいです…。


将来、他に気になる異性が現れた場合、泉李くんは婚約破棄をされますの?…破棄されない場合、泉李くんと結婚することになりますの?…その時、わたくしは……


何方に致しましても、婚約破棄の問題はまだ…先のことでしょう。パパとママのように運命的な恋愛を…と、恋愛結婚を夢見るわたくしの選択は、もう少し先になりそうです。まだ恋を知らないわたくしは………





            ~~ 完 ~~






=====================================

 今まで読んでいただき、誠にありがとうございます。今回で無事終了しました。


本編を読まれると、大体誰の視点かご想像が出来るかと思いますが、敢えて最終話を含め最後の3話は、隠して書いています。一部の名前が出て来ますが、彼らは未来の人物ということになります。


未来でも、恋愛関係になりそうな…。主人公・莉々愛の口調は、崩して喋る設定として、態とお嬢様らしくない部分も作り、ママに似た性格という風にしました。



※『婚約破棄はまだ~』はこれで完結となります。『婚約破棄はもう~』と共に、今までお付き合いくださり、ありがとうございました。またいつか何かの作品で、お会い出来ますことを願いまして、これにて終了とさせていただきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

婚約破棄する期間は、まだ締め切っていませんが!? 無乃海 @nanomi-jp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ