連休中は、女子会のお時間です!

 「ヒロインが消えてから、もう半年以上経つんですね。時間が経つのは、本当に早いものですね?」

 「そうだよね〜。何だか去年に知り合ったばかりとは、思えないよね〜。」


エリちゃんが染みみと語られた言葉に、美和ちゃんが同調されます。…そうですよね。私も、全く同じ意見ですわ。前世からの転生者で将又はたまた、悪役令嬢という役割の共通点もあり、直ぐに仲良くなりましたものね…。知り合ってからまだ1年未満とは思えないぐらい、不思議な気分です。


乙女ゲームのヒロインが去ってからは、毎日が平凡そのもので、こうも全く刺激がないことが、退屈にも感じてしまうとは、思ってもみませんでしたわ。だからと申しましても、乙女ゲームのような断罪とかは、絶対に…要りませんけれども。


今現在は乙女ゲームも終了した、その後の世界だと思われます。当然なのですけれども、乙女ゲームでは終了後の展開は、ゲームの中でも外でも、全く描かれておりません。つまりこれは、ということです。しかし私達は、この世界で現実に生きており、そして一生を生きて行くことになります。


現実に…終わりはないのです。人生の終わりを迎えるまでは。事故で死亡したり、難病にでもかからない限りは、年老いて老衰することになるまで、人生は続いて行くことでしょう。これは前世でも現世でも、同様でしてよ。


まあ、そういう堅苦しいお話は置いておきましょうか…。今日は、新学年となってから初めての長期休暇、5月の連休中でして。前世と同様に、5月の連休もありますのよ。但し、細かい休日設定は…異なりますけれど。天皇誕生日とか文化の日とか…。それはそうですよね?…天皇とか政治家とか、前世のお人とは…別人なのですもの。誕生日や崩御された日も、当然の如く違いますものね…。


ですから、5月の連休も微妙に異なりますのよ。休日の日も微妙にズレておりますし、休日の名目も違っておりますわ。但し、会社や大学が連休にしてお休みにするのは、で同様ですわね。まあ、私にとっては、何方どちらにしてもお休みになるのでしたら、関係ないですけれどね。


その5月の連休に、女子会を開くことになりました。何時いつものメンバーである私を含めた、あの乙女ゲームの悪役令嬢キャラ達です。ヒロインが去ってからも、乙女ゲームが終わってからも、あの後もずっと連絡を取り合っておりますのよ、私達。前世の記憶を持つ転生者で、同じ乙女ゲームの悪役令嬢で、何でも話せるお仲間なのでしてよ。今では…樹さん達攻略対象全員に、全てがバレておりますけれども、それでも…その他の大勢の人達には、内緒にしなければなりませんのよ。


麻衣沙と私しか転生者がいない、と思っていた頃より楽しくなりました。それに、樹さん達にも隠し事をしなくても、良いのです!…もう何の遠慮もなしに、こそこそ動き回る必要もありませんし、すっかり気が楽になりましたわ。


ヒロインも当分は監獄から出られないようですし、ヒロインの逆恨みとかを気にする必要も、当分は…ありません。まあ、あれぐらいで監獄に入れられたことには、同情は致しますけれども、お相手が悪かったとしか、言いようがありませんわね。


乙女ゲーム通りならば、本来は私が監獄行きになっていたことでしょう。強制力がなかった為、例えヒロインと言えども、悪いことを行えば罰を受ける…ということが、今回の件ではっきりしましたし…。私に記憶があって、良かった…。思ったよりも厳罰なのですが、心の底から反省すれば、短期で出られるみたいなのでして。但し、当分は監視されるそうですが。そういう訳ですから、ヒロインには1日でも早く、反省をしていただきたいですね。


ヒロインから奇襲されそうになった私ですが、別にヒロインを恨んだり憎んだりはしていません。実際に襲われたのは、樹さんでしたし…。勿論、彼が庇ってくださらなければ、私が蛇に噛まれて大パニックになっていたかしら。(※噛まれてなくても、失神しているけれど…。)


ヒロインにはある意味では、同情しておりますわ。ヒロインの自分勝手な部分や我が儘な部分は、全く同情出来ませんけれども、そうかと言いまして…役柄に溺れた彼女だけを責める気には、なれません。私達だって悪役令嬢になりたくて、転生した訳でもありませんし、そういう意味では彼女も同じ立場だと、思っております。ヒロインになりたくて、転生した訳でもない筈ですし…。


私達も自分の身を守る為に必死過ぎて、ヒロインの立場まで気を使うことが出来ませんでした…。自分達の為に乙女ゲームの、一番最後で登場するヒロインは、不利だったに違いありませんものね…。






    ****************************






 「ルルお姉様。あれから…どうですか?…婚約者である『王子』と恋人になられた、ご感想は?」

 「わあ~。私も聞きたいっ!…瑠々ちゃんと王子のことっ!」

 「どう……とは。…べ、別に…普通ですわよ。エリちゃんと美和ちゃんが気にするようなことは、…と、特に…何もないですわよ…。」


私が1人、この数か月を振り返っておりますと、エリちゃんが明らかに期待されたお顔で、私に話を振って来られます。…うっ。その上、美和ちゃんまでワクワクというご調子で、エリちゃんの話に乗って来られまして。…ううっ。そういう事は…聞かないでくださいませ。私はまだ、慣れておりませんのよ…。


最近はスマホでも連絡を取り合い、頻繁に電話でも互いにお話しているのもあり、『美和乃さん』呼びから『美和ちゃん』になりました。麻衣沙だけは相変わらず、『英里さん』と『美和さん』と呼ばれておられますが。


 「先日も樹さん、ルルに態々会いに来られましたわよね。特にご用事もないご様子でしたのに、大学内で近くを通ったから…と仰っておられましたけれど、あれは明らかに嘘ですわよね?」

 「…そ、それを言われるのでしたら、岬さんだって特にご用事がなくとも、頻繁にメールをされて来られますわよね?」


彼女達の問い掛けに対して、私が戸惑っておりますと、麻衣沙が助け舟を出してくださったのか…と思いきや、何と…とんでもないことを暴露されたのでしたわ…。いやいや……。確かに本当のことですけれども、樹さんからすれば、本当に近くを通られたのかもしれませんもの。麻衣沙ったら、決めつけないでくださいな。


それよりも、岬さんの方が麻衣沙に対して、色々とラブラブ光線を発しておられますよねえ…。メールも頻繁過ぎますし、お2人でご一緒におられる時も、ラブラブですものね…。


私は負けじと麻衣沙に、意趣返しを致しましたのよ。何しろ、私は…恋バナが苦手なんですもの、前世から…。樹さんとのあれこれを聞かれた日には、私の心臓が死んでしまいますぅ~~。恥ずかし過ぎて……。


 「まあっ!…それは、本当ですか?!…『眼鏡くん』は、積極的なのですね?…是非ともマイお姉様からも、お話を詳しくお聞きしたいです。」

 「わあ~!…麻衣ちゃんと眼鏡くんは、仲が良いのねえ?…私も詳しく、お2人の恋バナが訊きたいです~っ!」


お2人が仰られている『王子』とは、私の婚約者・樹さんのことです。乙女ゲームでは、彼の通称名が『王子』だったのです。王子様のような容姿のイケメンでしたので、そう呼ばれておられます。勿論、現実の世界でも彼は、『王子』と陰でこっそり呼ばれておられますのを、私も知っておりますわ。そんなお人が私の婚約者とは、嬉しい反面悲しくて…。何しろ…、彼と並ぶと平凡さが際立つことが…恐ろしいのです。ううっ…。


また『眼鏡くん』とは、麻衣沙の婚約者・岬さんのことですわ。彼も乙女ゲームでの通称名が、『眼鏡くん』だったのです。乙女ゲームで普段から眼鏡を掛けていた為、そういう通称となりました。しかし現実の彼は、眼鏡は滅多に掛けられませんのよ。麻衣沙談では彼が掛けられるのは、勉強中か運転中の時なのだそうですわ。岬さんが運転する車には、私的に乗る機会がなく、知るよしもございませんので。


お陰様で、エリちゃんと美和ちゃんの恋バナの対象が、私から麻衣沙に移られたようでしたわ。…ふう~。私の命は長らえましたのね…。麻衣沙には悪いことを致しましたけれども、麻衣沙と岬さんは普段からラブラブですし、でしょう。


エリちゃん達の熱い視線を受けられた麻衣沙は、真っ赤になって動揺されておられます。いつもは冷静で顔に出されることのない彼女が、最近はよく…真っ赤になられておられますのよ。それでも、この前の岬さんとの遣り取りでは、平然とされておられましたのに…。あらあらっ?…麻衣沙も…こういう状況には、お恥ずかしいのですのね?


 「恋バナなんて、わたくし…初めてですのよ。前世でも、そういうお話をしたという記憶が、ございませんのよ…。ですから、何となく…こそばゆい感じが、致しますわね…。ふふふっ…。」


……あららっ?…流石、麻衣沙さん。余裕っぷりですね…。私とは大違いです…。最近、4人で過ごすことの方が稀になりましたので、麻衣沙達のご様子は良く把握しておりませんでしたけれども、順調に仲良くされておられるご様子ですのね。


 「まあ…。眼鏡くんは、乙女ゲームよりも大胆なんですね~。そうそう…。私の彼氏の相良すぐり君も、ゲームよりも融通が利く人なんですよ。」

 「私の彼氏の聖ちゃんも、ゲームでは頼りないところがあったけど、現実では正反対のしっかり者なんだよ。私なんか、聖ちゃんに頼ってばかりだったもん。」


あらら……。エリちゃんも美和ちゃんも、ご自分の恋バナをされ始めましたわね。如何どうやら…皆さん、……。私はこういう上級者向けの会話は、まだ当分……無理ですわ。(※遠い目をして)






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 5月らしいお話が思いつかないので、連休で悪役キャラの女子達が集まった、という内容で書くことにしました。コロナの影響が続いておりますが、筆者のお話で元気になってもらえれば、嬉しいです。今回は、瑠々華視点のお話です。


5月の長期連休で、乙女ゲーム悪役令嬢キャラ4人が、女子会と言う名の恋バナを繰り広げております。一種のお惚気会ですね。


ルルだけは未だ、恥ずかし過ぎる所為で、何時もとは違って…聞き役に回っているようです。今回はギャグ要素は、控えめ…となりました。



※読んでいただきまして、ありがとうございました。

※連休中のお話、もう1話作る予定です。次回は5月になってから投稿すると思いますので、またよろしくお願い致します。

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