こどもの日はなくとも、祝いたい
前世のこどもの日は、5月5日でしたけれど、この世界ではそういう祝いの日はありません。雛祭りの時と同様に、似たような行事がこの連休中にありますのよ。雛祭りの代わりが女性の日、こどもの日の代わりは男性の日でしょうか。つまり、男性を
この世界でも家族を養うのは、男性の役目ですので、男性を労う日は女性を
それでも小さな犯罪や陰謀は頻繁に起こり、偶に国家規模の大規模な犯罪もあるのです。前世と一番違うところは、この国でも犯罪を取り締まるのが警察だけではなく、斉野宮家のような上位の家柄も、積極的に権力を貸すところでしょうか。
前世でも、家柄や権力者が権力を使用する、というのは案外とあるようでしたが、どちらかと言えば自分に有利になるようにと、圧力をかけるような不正が行われた方だったと、思われます。
しかし、この世界ではそういう不公平な権力ではなく、力には同様に力で制す…という感じかもしれません。元ヒロインの断罪にも、多少は使用されたかもしれませんが、彼女が罪を犯そうとしたのは明白ですし、反省も全くされませんでしたし、仕方がない部分もあるのではないかしら…。
元ヒロインは転生者でもありましたし、この世界が今のような世界になったのも、その過去の転生者達が絡んでいるのだと、樹さんからお伺いしました。元々似たような世界ではあるものの、転生者が
定期的に何人かの転生者が、この世界に生まれ変わって来る
そこで…この世界と申しますか、この国が…と申しますか、こういう刑罰を判断する側の基準が微妙な立場になり、警察だけで取り締まるのが難しくなった、というお話です。そこで民間にも監視をする期間を設けることで、今のような形となったそうですわ。私も麻衣沙も転生者という当事者でもあり、それなりの名家の家柄の令嬢でもあり、そういう裏事情はあまり詳しく教えられておりません。
いくら転生者の存在が、世間的に公に知られていても、それでも何処の誰かは公表されません。何かの形で協力することになっても、警察関係
お話するつもりは、ありませんでしたのよ。ですが私達の行動は、歴代の転生者達のご様子に似ていたそうでして、以前からそうではないかと思われていたみたいですわ。…ふう〜。こんな結果になるならば、もっと早くにネタバレしておきましたのに…。
お話を戻しましょうか。この世界にこどもの日がないということは、当然のことながら鯉のぼりや5月人形も存在しません。我が家にはお兄様がいらっしゃるので、こうなれば私達が作ってしまいましょうと、私達が雛祭りの人形を特注させた後、子供の日のお祝いグッズなども、我が家では鯉のぼりも5月人形も鎧や兜も、作れそうなものは全て特注させましたのよ。
こうして我が家ではそれ以降、2月に節分の行事を行い、3月に雛祭りのお祝いを行い、5月にこどもの日と端午の節句のお祝いを行い、前世と同じく行事を
作らせた以上は、目一杯活用させていただいておりますわ。樹さん達と知り合い、樹さんと私、岬さんと麻衣沙が婚約者となってからは、こどもの日のお祝いを共にさせていただいておりますわ。お兄様と麻衣沙のお姉様もご参加され、我が家特有の『男性を労う日』として、大勢でお祝いしておりますの。
そして…今後これからも、我が家独自の行事として、今後も引き継がれて行くことでしょう。お父様もお兄様も、とても気に入ってくださったのですから、活用しない手はございませんわっ!
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「藤野花家独自の行事では、なかったんだ…。」
「はい、そうです。前世では、『こどもの日』という行事でした。子供の幸せを望み、母親に感謝をする日なのですわ。男の子の成長をお祝いするのが、『
前世で男の兄弟が居た私は、嫌という程にこういう行事の概要を、祖父から語られ続けたという記憶がありました。前世の家族はごく普通の一般市民ですが、祖父は昔の慣わしを重んじていた人でした。一応、我が家の祖先は代々続く、庄屋の家系だとか、明治・大正時代ぐらいに落ちぶれてしまった、とか…話していたような。まあ、今更どうでも良いですよね…。
「瑠々華嬢は雛祭りの行事もそうだが、前世のこういう行事をよく覚えているんだな。それほど、こういう行事が身近だったのだろう。俺達の世界ではこういう具体的な行事は殆どないし、逆に寂しく感じるぐらいだな…。」
「…そうですわね。前世の世界では当たり前に感じておりましたのに、この世界で過ごす日々は、国民が盛り上がるという行事が少なく、物足りなく感じてしまいます…。ルルが前世の行事を恋しがるお気持ちが、よ~く理解出来ますわ。」
「そうだね…。確かにこの国では、国中の国民がお祝いする行事が、ルルから聞かされた世界よりも少ないようだ。地方のお祭りみたいなものは、それなりにあるのだが、行事だらけの国に住んだ君達から見れば、物足りないだろうね…。」
岬さんがこの世界での行事の少なさに、寂しく感じると語られますと、麻衣沙も昔を思い出すような仕草をされては、わたくしの気持ちを同調されたご様子で、前世を懐かく思い出されておられるようでしたわ。そして樹さんも、すっかり私達に感化されてしまわれたようで、私と麻衣沙の心情を慮ってくださります。乙女ゲームの彼はこういう行事には感心がなく、周りの人間の燥ぐ姿にも全く関心を持てず、ヒロイン以外の誰とも本心から仲良くされずに、一線を
今だからこそ私も、そう思えるようになりましたが、樹さんも岬さんも乙女ゲームとは別人…なのでしょうね。ゲームの樹さんも岬さんも、お互いを相容れない存在のように、友達のフリをした関係でしたのに、現実の彼らは心底仲良くなられておられます。友達&友人という言葉よりも、親友&悪友という言葉が似合う、そういう関係なのですよね…。
特に樹さんは岬さんに、何かとライバル視されておられるご様子が、見受けられますわ。何かにつけて競おうとされ、そういう提案をされておられて。大抵は岬さんが樹さんの提案を、軽く無視されておられますが。「これが、友達のすること?」と、疑問視することも多々ありますし、男性の友情は私には…理解しがたいけれども、BL的に考えれば…オイシイのかな?(私は、男女間の恋愛が好き。)
「それならば今後は、『こどもの日』と『端午の節句』の行事は、我が家でもお祝いすることにしようかな?…勿論、『雛祭り』と『節分』も、だよ。ルルがお祝いしたい行事は、斎野宮家もドンドン取り入れることに、しよう。」
「まあっ!…樹さんも、興味を持たれましたのね?…私、布教活動に成功した気分で、嬉しいですわ。」
樹さんが唐突に、藤野花家で取り込んた前世の行事を、斎野宮家でも採用しようと告げられて。要するに、婚約者である私が斎野宮家に嫁いだ時、私の希望を取り入れることで寂しい思いをしないように…と、慮ってくださったのね?……嬉しいですわ。藤野花家だけではなく斎野宮家でも、前世の行事が楽しめるとは。樹さんはそれほどまでに、私のことを考えてくださるのね…。相変わらず、お優しいお人ですわ。
「瑠々華嬢の希望を叶えると予め宣言し、彼女が嫁ぐのを前提にしたと匂わせ、彼女がお前との結婚を前向きに考えさせるとは、相変わらず樹は、腹黒いよな…。瑠々華嬢が本気で感激している姿を見ると、俺の方が悪いことをした気分だ…。」
「何を言うんだ、岬。これぐらいの事情で、腹黒いと言われる筋合いは、ない。俺は本心で、そう言ったんだ。ルルが喜ぶことならば、何でも叶えてあげたいし、俺も気に入ったから一緒に祝いたい。ルルが今更結婚しない、と言い出さないようにしたい、そういう気持ちもあるにはあるが…。」
「……はあ~。早い話が、そういうつもりだろ…。樹が本気で祝いたい、と言う方が俺は…信じないからな。」
「そういう岬も、今後は麻衣沙嬢と共に祝うつもりでは、ないのか?」
「俺はただ、麻衣沙と共に2人で…祝いたいだけだ。」
「………。もう…お2人共、お考えが…似たり寄ったりですわよ。わたくしから一言申し上げますならば、下心が透けてお見えですわよ…。」
「「………」」
感謝感激している最中の私の傍で、樹さんと岬さんと更に麻衣沙が、こそこそと何か密談されているとは、気付かずに。麻衣沙の一言に、無言になられた…そうな。
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コロナの影響で、退屈な毎日をお過ごしでしょうか?
連休が長いので、4月に1話、5月にも1話、5月の連休関連として書くことにしました。退屈凌ぎにしていただけたら、と思います。
今回は、こどもの日に纏わる内容となりました。瑠々華視点です。
この世界には、雛祭りだけでなく、こどもの日&端午の節句もない、という設定でして、ルル的には楽しみたいと、これまた特注しております。お金持ちならではのお話ですよね…。羨ましい……。
未だに…樹の性格を、把握していないルル。麻衣沙から言えば、樹も岬も同様に見えるようでした…。
※読んでいただきまして、ありがとうございました。
次回は、近いうちにまた投稿予定があります。またよろしくお願い致します。
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