第14話放課後の図書室

夏休み間近のある放課後。

クーラーの冷気で冷やされている図書室には、俺と結野先輩の二人だけだ。

ふかふかのソファに身体を預け、俺の手を握っている彼女。

俺は、図書室に呼び出され、緊張していた。短いメールをもらい、胸がきりきりと痛むのをひっしにたえ、彼女と同じ空間にいる。

いつもメールは長文なのに対し、今回は短い。怒らすようなことをした覚えはない。

「なっなんでしょう、彩良さん。何もやましいことをした覚えはっないですっけど」

腹痛まで襲ってきている。

「怯えないで、牧平くん。夏休みについて、話したいことがあるだけだよ」

「......」

「花火大会。都合はつくかな、牧平くん?」

「あの、大変言いづらいのですが、よろしいでしょうか?彩良さん、何もしないと約束してくれますか」

彼女の表情を窺いながら、確認する。

「うん、言ってみて。牧平くん。こたえようによっては、多少手を出すかもしれない」

「その日は、先約がありまして......何もしませんよ。本当に何もしないので、先約を優先してもいいですか?」

「はぁー、。埋め合わせはもちろん、してくれるのよね?」

「はっはいっ、もちろんっします。いくらでもしますので、今回だけはっどうか」

「終業式の日は空いてるのかな、牧平くん?」

「はい。空いてますけど、それがどうしたんです?」

「映画を観に行かない、私と」

「いいですけど。それでいいんですか?」

「違うよ。埋め合わせは別にあるの。クーラーもそろそろ消される頃ね、帰ろ牧平くん」

黒いオーラが彼女を覆っている。嫌な要求がきそうな予感を感じる。

「嫌がるようなようき──」

「さあ、どうかしら?牧平くん、スタバによりたいな」

もう、怖いよ!

痛い目にあうよ、絶対。

「嫌いになりそう」

「冗談だよ。いつもの冗談だよ、嫌いにならないで、お願い。牧平くんっ!」

彼女がひっしになり始めた。

彼女は、腕にしがみついて、懇願している。

すれ違う男女から、集まる視線が痛い。


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