第13話彩良に睨まれる

月曜日。

朝のSHRが始まる前に文庫本を読んでいると、耳もとで囁かれた。

「いいかな」

「さっ、彩良さんっ!」

驚き、文庫本を机に落とす。

結野先輩は俺の手を強く握り、廊下に連れていく。

廊下に出て、壁にもたれ睨んでくる彼女。

えっ、えっえっ俺なにもした覚えがない。睨まれるようなことしてないけど。

「私ではご不満なのかな、牧平くうーん」

「何のことですか?何もしてないですけど」

「とぼけても、無駄よ。昨日、デートをしているところを見たのだから。ひどいこと、されたいの?」

「昨日のは違いますよ、けっして違います。火野さんと姉さんといただけです。ただそれだけのことです。見てください、これをっ」

俺は、ひどいことをされないようにスマホを取り出し、姉さんの写真を見せる。

「そうだったのね、私の早とちりだったね。ごめんね。気になることで、火野さんと言ったよね。二人の女の子とは言ってないよ、私」

姉さんといる場面だけを見られたのか、やってしまった。

「何もしていませんから、姉さんに聞いてください。それからっ」

姉さんに連絡をしようとしたところでとめられる。

「嘘はついてないことがわかったからいいよ。図書室でね」

そう言い残し、教室に戻っていった。

俺は、教室に入り、席で項垂れる。

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