書けと言われた与太話


 バイオテクノロジーの隆盛によりサンタ業界も変わった。トナカイを飼うコストと手間を惜しんだサンタが企業に餌も要らない世話も必要ないトナカイの作成を依頼した。


 そうして作成されたバイオテックトナカイはミドリムシの遺伝子を導入し、光合成による生命維持を可能とし、水さえあれば一切の世話を必要としない工業生命体として完成した。


 そしてバイオテックトナカイはサンタの労働環境を大きく改善した。オフシーズンに大きく負担となっていたトナカイの世話が不要となり、プレゼントの確保に時間をかけた上で自由に使える余暇が生まれた。


 そうなると、暇を持て余したサンタ達はトナカイのチューニングを始める。いざ本番となれば速さが重要なトナカイ、かつてからトナカイの訓練は数少ない趣味だったサンタ達はこぞってバイオテックトナカイのチューニングに力を入れ始める。


 筋繊維の最適化、心肺機能の強化、神経回路の光ファイバー置換。最終的にATP分解、生成の効率改善まで行き着いた改造はトナカイの異常な高速化とそれによる事故の多発を引き起こした。


 全国サンタ連盟により『トナカイで事故るとプレゼント回収が大変すぎて仕事にならねぇんだよ!!』という現場の声を反映してトナカイに自動回避機能の設置を義務付けた。


 結果クリスマスイブの空中ではソニックブームを発生させながらソリが飛び交うようになり、作業効率化のためサンタの六割がリストラをされた。


 リストラされたサンタ達は退職金として貰ったバイオテックトナカイを率いてサンタ連盟に反逆し“血のクリスマス”という惨劇を引き起こした。この内乱により世界のサンタ人口は1%にまで減少した。


 これにより現代ではクリスマスプレゼントはサンタではなく親がこっそりと用意するものへと変化していったのである。


「というのがクリスマスの真相です」


「頭にプリンでも詰まってるのか????」


 なおこれは2098年の冬、クリスマスイブの食卓で語られた友の与太話である、時間を返して欲しい。


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ワンドロ企画 ぶんぶん @bunbun265

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