第15話「提案」



「どうやら、二とも仲良くやっているみたいだな」



 放課後、部室に入るなり川口先生は言った。


「……いや、別に仲良くなんかしてないですよ?」


 仲良くとは言われても、ただ部室に来ているだけで黒川はいつも通り本を読んでいるし、俺はスマホアプリのゲームで時間を潰しているだけだ。


 二人とも別々のことをしているこの状況を見て『仲良くしている』は流石に違うんじゃないだろうか?


「むむむぅ……」


 なのに、何で黒川さんは不機嫌そうな顔をして俺を睨んでいるんですかね……?


「そうか? あいにく私にはそうには見えないが?」

「何を根拠に……そこまで言うのなら、証拠でもあるんですか?」

「フッ、君は往生際が悪いな。そんな台詞、コ〇ンに出てくる追い詰められた犯人くらいしか言わないと思ってたよ」

「だとしたら、先生は名探偵役ですね……。決め台詞は『見た目は大人、中身は子供』とかどうですか?」

「あいにくだが、私は演じるなら怪盗役が良いな。理由はいろんな男が私を求めて捕まえに来るからだ。ほら、求めるより求められる方が良いだろう?」

「でも、コ〇ンに出てくる怪盗って誰も捕まえられないですよね……?」


 つまり、誰も先生を捕まえられず一生独身……


「ぐはぁっ!?」


 俺がそう言うと川口先生は膝をついて倒れた。

 どうやら、予想外のダメージが先生に入ったようだ。

 てか、先生その歳でまだコ〇ン読んでるんですか?

 だから、結婚できないんじゃ――


「ん? 安藤、どうした? 何か言いたそうな顔をしているじゃないか? う~ん?」

「いえいえ、何でもないです!」


 怖ぇー、独身超怖ぇー……、

 歳を取ると耳が遠くなるって嘘なのかな?


「しかし、噂では君達は昼休みも部室で会うくらい仲が良いと聞いたが……?」

「うっ……」


 それを聞くと、今まで我関せずで本を読んでいた黒川が急に顔を赤らめて唸りだした。

 きっと、男と密会してるみたいな噂を聞かされて恥ずかしいのだろう。


 まぁ、黒川からしたら俺みたいなひねくれ者と噂をされるとかゴメンだろうからな……


「一体それどんな噂ですか……。先生、ガセネタ掴まされてません?」


 まぁ、昼休みに部室を使っているのは否定できないんだけど……

 でも、俺が知っている噂は昼休みになると空き教室でぬいぐるみ相手に話かける黒髪美少女の亡霊なんだよなぁ~


 てか、黒川が昼休みに部室使っているの知ってたのかよ。


「そこでだ。君達も演劇部として仲良くやっているみたいだし、私から一つ提案があるんだ」

「提案……ですか?」

「なんか嫌な予感しかしないんですけど……」


 黒川と俺の反応を楽しそうに観察しながら「まぁ、聞け……」と言って、川口先生はその言葉を口にした。


「二人とも、クリスマスの予定はあるかな?」



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