お題:【次回予告】をテーマにした小説

 暗黒魔界軍団ブラックハデスの暗黒エージェント、ブラッドスコーピオンを辛くも倒した正義旅団ジャスティスブリゲートは、単独行動をしていた正義エージェント、ジャスティスブラックの持ち帰った情報を頼りにブラックハデスの本拠地がある暗黒魔界への電撃作戦を決行しようとしていた。


「ジャスティスレッド、本来ならば君達にもっと休養を取らせなければいけないところだが……」


 ジャスティスブリゲート長官、マスタージャスティスは言い淀むが、ジャスティスレッドは力強く答える。


「構いません!今ここで暗黒魔界に行かなければもう二度とブラックハデスを追い詰めるチャンスが得られないかもしれない……例え俺一人でも行きます!」


 ジャスティスレッドが焦るのには理由があった。暗黒魔界と地球は異次元障壁によって阻まれており、普段は暗黒エージェントが一方的に侵攻してくるのみであった。今回ジャスティスブラックが見つけた暗黒魔界へのルートも永続的なものではない、一週間もすればその道は断たれてしまうだろう。


「わかった。今暗黒魔界に迎えるエージェントはキミだけ、君に託すしかない。但しジャスティスクリムゾン、ジャスティスカーマイン、ジャスティススカーレット、ジャスティスヴァーミリオン達もダメージが回復次第暗黒魔界に向かわせる。先に着いているはずのジャスティスブラックと合流したら増援の到着を待つんだ、いいな?」


「はい!」


 そう言うとジャスティスレッドはブラッドスコーピオンのスーツに残された暗黒コアを手に取る。


「待っていろ、ブラックハデス!!!」


――暗黒魔界に辿り着いたジャスティスレッドを待ち構えていたのは暗黒下っ端エージェント、モブッキーの群れだった。次第に消耗するジャスティスレッド、そこに駆け付けたのは意外な人物で……?次回!正義旅団ジャスティスブリゲート第38話「新たなる戦士、その名はブラッド」!来週もこのチャンネルでジャスティスオン!


「……あの、ちょっと待ってもらっていいですか?」


 ジャスティスレッドはおずおずと手を挙げる。


「うん?どうしたジャスティスレッド、何か不満が?」


 マスタージャスティスはきょとんとした顔――実際には通信機越しのためジャスティスレッドから顔が見えていないのだが――で問いかける。


「あの、ブラックが見つけてきた暗黒魔界への渡り方、これ今じゃないと使えないからこそ僕が急いで突入しようとしてるわけじゃないですか?来週まで待たないといけないんですか?」


「え?今そこツッコむの?」


「いやほんとだよ?もし来週まで待てるんなら今急いで来るの舐めプもいいとこだからね?俺らブラックハデス的にもそういう甘い考えで来られるのはちょっとこう、プライドに関わるって言うか……」


 困惑するマスタージャスティス。そしていつの間にか起き上がっていたブラッドスコーピオンも文句を言い出していた。


「いやお前はどの辺のポジションから文句を言ってるの?ブラックハデス的にはジャスティスレッド倒せた方が美味しいんじゃないの?」


「いやそうだけど……ほら、20話でやられたうちの暗黒ブラッドがそっちに味方しちゃうんでしょ?だったらむしろ来なくてもいいし……どうせ来るならせめてちゃんとしてほしいっていうか……」


「いやまあそうなんだけど、この来週って言うのは一種の比喩みたいなものでね?実際はタイムラグゼロで突っ込むわけだから……」


 混線し、議論の趣旨が不明瞭になってきたタイミングでいよいよジャスティスレッドの不満が爆発した。


「あー、もう!なんかいい加減わかんなくなってきたけど俺は今行っていいの?待ってたらいいの!?」


 マスタージャスティスはどう答えたものか迷った。次回予告が来週と言ったのはあくまでも視聴者目線の話であり、今戦っているジャスティスレッドには関係のない話だからだ。ていうかそれを今更言うならクリスマスにブラッドサンタを倒したあとすぐにブラッドオモチと戦った時とかにも疑問を持ってほしかった。


「……行け!責任は私が取る、そのまま暗黒魔界に行くんだ!」


 マスタージャスティスは叫んだ!


「了解!」


 ジャスティスレッドも叫んだ!


「グワァァァァァーーーーーーー!!!!!!」


 ブラッドスコーピオンは死んだ!


 改めて次回!正義旅団ジャスティスブリゲート第38話「新たなる戦士、その名はブラッド」!来週もこのチャンネルでジャスティスオン!


「……だから1週間も待ったら」


「その話は!今はいいから!!!」


<了>

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