第15話、迷い人


「可能性として、逃走後魔法に目覚めた可能性も否定できんが、5年の修行で無詠唱は不可能じゃな。

お前は何者だ?」


「お互い嘘はナシってことね。

私は迷い人。縁あって、その娘の姉と知り合って、この町の様子を見てきてほしいって頼まれたの。

次は私の番ね。

帝国の中には武力拡大に反対する勢力もあるって聞いたけど、あなたはどっち」


「迷い人か、確かに辻褄は合うのう。

ワシの願いは魔法の探求じゃよ。

国の方向性などに興味はない。

この答えで満足してもらえるかな」


「ええ、話を続ける前に、場所を変えません事。

第三者がいると、できない話もあるでしょ」


「そうじゃな。ではワシの部屋に移動するかの」


「あと、3人を釈放してくださらない。

私が来てあげたのだから、問題ないでしょ」


「フォフォフォ、そう来たか。確かにお前なら瞬時に50人くらい倒せそうじゃ。

両手を拘束されて、口をふさがれてもな。

兵士長、そこの三人を釈放しろ」


「で、ですが…」


「ボンクラが…、さっきのを見て、なお己の優位性を信じているとはな。

ワシは手を出さんから、好きにやっていいぞ。

ほら、ボケっとしてないで応援を呼べ」


「ぐっ、しゃ、釈放します」


鍵が開けられ、ライラが駆け寄ってきます。


「マリアー」


バシッ


「あなたのように感情をコントロールできない未熟者に興味はないわ。

私はライアの両親を助けに来ただけよ」


「そんな…」


「さあ、お部屋に案内してくださいな」


「お互い、未熟者には苦労するのう」


「まったくですわ」




「では、私から手の内をお見せしますわ『遮音サイレント

音は空気を伝わりますから、空気を固めることで音を遮断できます。

ついでに言うと、吐き出した息は人間にとって有毒となりますから、これくらいの部屋ですと20分程度で空気の入れ替えが必要です」


「ほう、それ以上続けるとどうなる」


「集中力が鈍り、眠気が襲います。さらに放っておくと意識障害を起こし、最悪の場合死にます」


「なるほどな。空気の球を作って水の中に入ってもその症状が当てはまるな。

そうかよ、吐く息が毒になるとは…」


「迷い人というのが信用できまして?」


「ああ、ほかにはどんな事ができる」


「私にとって有利な情報は?

といっても、障壁の破り方を教えていただきましたから、そうですね…」

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