第11話 魔道具を作成しました。

翌朝、宿の窓を開けて天気を確認する。

よく晴れている冬の空だ。

光芒が見られて、今にも天使が舞い降りてきそうな神秘的な朝だった。清々しい...。


がしかし、寒い!

寒さが体に刺さる!

吐く息が真っ白で、まつ毛が目の潤いで速攻凍った。


「あー、寒ぃ。これは凍死しそうだ。

ネフィ、装備見直した方が良さそうだ。」

と、寒くて布団から出れないネフィに声をかける。


ということで一度装備を見直す。

チャラララっチャラ〜♪


まずはゴーグル。

曇り防止のために加工したもの。

お馴染みのグリセリンをゴーグルに塗ります。グリセリンは、非イオン界面活性剤で燃えにくく凍りづらい性質を持ってるので、曇り止めに最適です。


一応体にも塗っておきます。ぬりぬり。

保湿性が高いので、アカギレ防止です。

万能ですね。グリセリン!


次に、マスク。

このマスクの繊維には地球でもいたアイスランディックという最古の家畜純血種の毛を使用しました。

この羊さんはすごいのだ!

極寒にも耐え、雨にも強く、太陽が1日中沈まない白夜でも生活リズムが崩れないハイパー羊さんなのだ。

当然、その毛は暖かい!

そのマスクに温風の魔法陣を刺繍しました。チクチクとね。

難点は、口が乾く...。

ローブも手袋も靴下にも、この羊さんの繊維を使用して、温風魔法陣縫い付けました。


羊さんラブです。


ブーツだけは、山道を登るので歩きやすい編み上げ革ブーツ。

ムートンブーツは、戦闘時脱げやすいから諦めました。残念です。

だけど、このブーツも革がバリバリにならないように加工した錬金術を使った特別製!

作り方はこうだ。

たんたんたたたん、たんたんたたたん♪

チャラチャラチャラチャラちゃちゃちゃっ♪

まず、アイスウルフを狩る。

解体した肉を生成の魔法陣に投げる。

そして加熱。

ドロドロになったところを灰と塩を突っ込んで不純物除去、うわずみの油をブーツにつける。以上!


そうすると寒さにも伸びがいい特別製の革ブーツになるのだ。


あとは、刺繍がめんどくさかったので下着や洋服には、直接温風の魔法陣を書いた。

外側にくるローブなどは、擦れて意味をなさなくなる可能性があるから刺繍したがな。


これが俺の無尽蔵の魔力を垂れ流しながらの最強防寒具だ!


ネフィは、垂れ流す魔力がないから、アイスランディック製で揃えてる。

こいつ凍傷で死ぬんじゃないか?


「ネフィ、気休めかもしれないがこれをやる。ほらよ。」

毛糸のブレスレット、アンクレット2対とネックレスとイヤリングだ。

華美なものでない。むしろダサい。


「何これ?えっとミサンガ?おばあちゃんの手作りアート作品?」


「おばあちゃんじゃなくて俺が編んだ。

全てに俺の魔力を入れた魔石が入ってる。それに温風の魔法陣を組み込んだ。

もし寒くてどうしょうもない時は、それらに自分の魔力を少し流して起動させろ。流し込みすぎると、発火するから気をつけろ。

あとは俺の魔力が勝手に出て温まる仕組みだ。

空になったら再度魔力を入れてやる。」


「おお〜、着々と嫁スキルを身につけて。

アレクは、将来どこを目指してるんだろうか。アーティファクト屋さんもするの??」

ネフィは網目に指を沿わせて仕上がりを確認しながら聞いてきた。


「いや、あくまでも俺は薬師だ。

薬を作りながら適度にお金を稼ぐ。

そんでもって死ぬまでに金を使い切る充実ライフを過ごすんだ!

忙しいのは、もう前世でこりごりだ。

こういった装備は、今のところネフィと俺限定だな。こんなものを騎士団とかに卸したら、過労でまた死ぬだろう?」


「そうだね、便利だけどアレクが社畜になるね。

どうやってこれ作ってるの?こんな小さい魔石に魔法陣掘ったの?薬師じゃなくて細工師になれるよ。」

ネフィは、手で魔石の部分を触りながら眉間に皺を寄せて製造工程を想像しているようだ。


「最初は掘ってみようとしたんだが無理だった。だから、魔石に錬金術で魔法陣を定着させたんだ。

魔石の中にクシャクシャの魔法陣がはいってるんだ。」




実は、この世界の魔石の利用が、灯りのみってのが不思議だった。

魔石をぐっと触ると、体内の魔力と反応して魔石の魔力が無くなるまで光り続ける原理を利用して灯りとして使ってる。

これに魔法陣を組み合わせれば色々使えるはずなのに、気づかないようだ。

だから魔石には全然利用価値がなく二束三文で購入できる。灯りとして使い終わったら、クズ同然の扱いである。

もったいないので、暇を見つけては研究してみた。


とりあえず、魔石に魔法陣を掘ってみた。

が、すぐ砕けてダメだったから他の方法を模索。

これが結構うまくいかなくて時間かかったんだよなぁ。


最初は、温風の魔法陣を描いた羊皮紙を巻きつけて魔力を通してみた。

すると魔石に変化はなく魔力を通している間だけ羊皮紙から温風が出た。これはダメだ。


次に、魔法陣の上に魔石を置いて魔石を起動させてみた。結果、魔石の魔力がなくなるまで魔石から温風が出る簡易エアコンができた。

が、魔法陣が起動後燃えた。身につけてれば、火傷だ。

魔石も小さいものだから一時間ほど温風が出て終わる。毎回魔石を魔法陣において起動する流れをするのは非効率的だ。

紙も勿体無くてエコじゃない。改良が必要だった。


錬金術の生成の魔法陣に魔石を入れて粉砕して紙を入れて再度くっつけようとしてみたが、くっつかない。

2つに割って紙を挟んで、違う素材でぐるっとコーティングしてみたが魔力を入れて発動させると魔石がはじけ飛んでった。


割って入れるのは、ダメなのがわかったので、混ぜ込むしかないと思ったが、混ぜ込み方がわからないから試行錯誤だ。


最初に戻って粉砕してくっつける方法を模索することにした。

圧力をかけても魔石がサラサラの砂状になるだけでくっつかない...。

魔石の細かいやつに、俺の魔力を混ぜて土魔法発動させて、丸く整形しようと試みたが、弾かれた。

魔力を混ぜるとこまではうまくいったんだが.....。


氷魔法で凍らせてみたら、温風の魔術で氷が溶けて暖かい砂が残った。ダメだった。


今度は溶かして固めようと火魔法を試みたが、溶けなかった....。


真空にしても金属は融点が下がらないから、魔石も無理かな?どうだろう。

やるだけやってみよう!


『生成魔法陣展開。....魔石投入...粉砕。...加熱(変化ないなぁ)...真空10^5Pa...加熱(変化見られない。もう少し真空率あげるか。)...中真空10^2Pa...加熱(うん?ちょっと溶けたか?)...高真空10^-1Pa...加熱(おぉ、溶けてきた。)...超高真空10^-5Pa...加熱(溶けた?おぉ!よし、次。魔法陣入れて見よう)...魔法陣封入。....真空解除。』


うわぁ!真空解除した瞬間、ギュルギュルと変な形に固まった!

紙がちょっと出ちゃったよ。

真空いきなり解除ダメだな。もう一回!


『生成魔法陣展開。...魔石投入...粉砕。...真空...10^5Pa…10^2Pa...10^-1Pa...10^-5Pa。...加熱...魔法陣投入。

圧力上昇...10^-1Pa...成形...10^2Pa...再成形...10^5Pa...最終成形。..真空解除!』


・・・。

で、出来た!

よし、作動実験だ。


魔力を入れるぞ。えいっ!

ピカっ! ...ジュっ........


えーーーーえぇっ!!

苦労して魔法陣入れたのに魔石の中で、魔法陣燃えた〜!!

結局燃えるの?なぜだ!


俺は、半泣きだ。

汗もダラダラ出てるし涙も出た...。


「なんで燃えた?魔法陣の上に置いた時と一緒?

一応火傷はしないが、2回目以降がめんどくさい。

半永久的に使える魔道具にしたい。

うーーん、洋服に刺繍したものや、魔法陣に直接魔力流したものは燃えない。

契約魔法陣は燃える。錬金術の補助魔法陣も燃える。

違いは?」


「....俺の魔力を直接乗せると燃えない。他に対象物があると、燃えてるな。

魔石や薬草など対象があると燃える。

契約魔法陣は、血が対象物ってことか?

でもそうすると、糸やインクだって対象物になる気がする。

なんだ?何が違う?」


「.........あっ!魔力だ!

魔力が、複数あるからだ!

魔石、薬草自体の魔力と自分の魔力が反発して燃えてる?

契約魔術は俺とネフィの魔力が血判にあったから燃えた?

そうか、いけるかも。

魔石の魔力を空からにしたものに同じことをしてみればいいかも。」


空からの魔石を引き出しから出してきて、俺の魔力を注入する。

そしてもう一度錬成。


こ、今度こそ!

恐る恐る魔石に触って作動。

.....魔法陣、...燃えない、燃えないよ!やったぁ!!




「ってことがあって、かなり苦労して作った魔道具だ!今の時期には欠かせないだろ?

カバーは、ネフィ用にマンチェスタにくる間、指で適当に編んだものだからダサいが我慢しろ。」


「ありがとうアレク。

大切に使わせてもらうよ。アレクは、私が大好きなんだって分かったよ! 

この魔道具、アレクにはほぼいらないよね。布に魔法陣書いとけばアレクは勝手にあったまるもんね。

いやぁ、愛されてるな、わたし♪」


「.........。あ、そっか。俺には必要ないな。なんだ、俺ネフィのために頑張ったのか?....俺無駄な努力した気がする。」


なんかモヤモヤするぞ!なんだこれ解せん。


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