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期待の主はえらくご立腹だった。
玄関を開けると仁王立ちして俺を睨んでいる。
「なんかしたんすか? 紫先輩?」
「ほぅ~! 人の居ぬ間にずいぶん愛衣と仲良くやっていたそうじゃないか?」
「あ~、あれかぁ」
「で、私にはただいまのキスはしてくれないのかい?」
「はい、あれは俺じゃなくてノエルがやった事なんで、関係ないっすね」
「ふん! 経緯くらいは聞いているし、そのような危険な事を平然とやってのけた貴様ら二人にも怒っている」
「大丈夫っすよ。危険性とかはブラックさんに教えてもらってますから」
「ほぉ~! では貴様は自我を失う覚悟でノエルに身体を渡したと言うのか?」
「そおっすけど、なにか問題でも?」
「まったく……」
あきれ果てて物も言えないという顔を浮かべてらしゃる。
それに対し、こちらを覗き見ている愛衣先輩はにっこにこだったりする。
「まぁいい。とにかく私は機嫌が悪い。そこでだ! 明日買い物に付き合え」
「わかりました」
「ふふふ。絶対に逃げるなよ!」
「わかってますよ。それから今夜出かける予定なんでよろしくっす」
「また、モンスターがらみか?」
「はい。なんでもボス戦らしいので、それまでゆっくり休んでます」
「ほ~。それが分かっていて約束をするとはいい根性だな」
「はい! ばっちり勝って帰ってくる予定なんで、またよろしくっす」
どうせボロボロなって帰ってくるんだろうなぁ……なんて思いながらも気分は高揚していた。
ノエルと一緒に思いっきり戦うためにも右手の完治は必要不可欠である。
だから思いっきり飯を食わせてもらって寝た――。
*
嘘の書き込みは1時間以上前に書き込んだ。
ボス戦は本当に学院の校庭でやることになるなっていたからだ。
時間も時間だしあまり迷惑はかからないだろうと思い大型ショッピングセンターの3階と書いておいた。
PM11:05分なんて店が開いてるわけがない。その周りには野次馬が集まるだろうが気にしてなんてられない。
こっちは運が悪ければ死ぬかもしれないデスゲームに挑むのだから。
発生時間は同じでも場所は全く違う夜の学院に居るのは3人だけだった。
今まで本当の事しか書いてこなかったんだからかなりの人が騙されてるんだとは思う。もしかしたらテレビ中継とかもされてるかもしれない。
考えようによってはもったいない気もしなくはないがやはり俺とノエルの戦いを邪魔されるのはたまらなく嫌だった。
校庭の中央には、強大な三角マーク。ボスらしく大型モンスターらしい。
攻撃方法は、つかむ、ひっかく、突撃等の物理攻撃に加え、毒と、粘液攻撃があるみたいだ。
「あの~。今までも毒攻撃ってありました?」
「残念ながらない……おそらく私達のシールドスーツを持ってしても直撃は避けた方が良さそうだろうな」
「俺は、粘液ってのも気になるな」
「これは私の推測だが足止め系の攻撃だと思う」
「どっちにしろやばそうっすね」
「さすがはレベル1のボスと言ったところなのだろうな」
「しかも巨大型ってのも初めてだしな」
「どうします? 先制攻撃可能な状況ではありますけど……」
「そうだな…相手の形が分からないとはいえ。でかいのを一発でも当てておいて損はないだろう。頼めるかブルー?」
「了解っす! とにかく湧いた瞬間に手近なところに強化したハイパワーナックル食らわせてやるっすよ!」
【警告。敵モンスター発生まであと30秒】
「ブルーさん! あと30秒だそうです!」
「了解した!」
「では私は反対側で飛んできたのを蹴散らせてもらおう」
――時間通りに湧いたモンスターは顔だけクモであとは超強大なカニだった!
「ハイパワーナックル‼」
《ズドン》
重々しい音共にカニの足が一本吹っ飛んだ!
しかし、特にバランスを崩すとかはなく平然としている。
「さがれ! ブルー!」
「はいっす!」
ブルーが下がると同時にブラックさんが強烈な蹴りを反対側の足に入れるが――キーンという金属同士がぶつかったような音がしただけで吹っ飛んだりはしなかった。
【報告。敵モンスター。防御力特化型と判明。現状ブルー以外の攻撃は、ほぼ無効と判断】
マジか⁉
「ヤバいっす! ブルーさんのハイパワーナックル以外攻撃が通じないみたいっす!」
「く……やはりそうか」
ブラックさん悔しそうだ。きっと会心のタイミングで決まった蹴りだったんだろうな。
【報告。敵モンスター。ブルーをターゲットに指定。粘液攻撃選択】
「ブルー‼ 粘液攻撃が来るかわしてくれ!」
「了解だ!」
ブルーの方にクモの顔が向いたかと思うと口から粘液を吐き出した。ブルーがかわした後にはいかにも粘着性が高そうな粘液があり。しかも結構範囲が広い。
このまま同じ攻撃を続けられたら足場がなくなってしまいかねない。
【報告。敵モンスターなおもブルーを狙う模様。粘液攻撃を選択】
「ブルー! またしても同じ攻撃が来る足場がなくならないように気を付けてくれ!」
「ちっ! そういう狙いか!」
ブラックさんは、何度も同じところを攻撃しているが効果は見られない。
「ノエル! ブラックの攻撃はダメージとして加算されてるのか?」
【肯定。現状の攻撃でも約20分程度でモンスターの一部を破壊可能】
悔しいがそのまま伝えるしかない。
「ブラック! そのままでも20分ほどでへし折れるみたいだ! 続けてくれ!」
「わかった!」
ブラックさんが思いっきり蹴っているのに無視である。
どこまでもいきなり足をへし折ったブルーを狙うみたいだ。
【報告。敵モンスター攻撃対象変更なし。粘液攻撃を選択】
「ブルー! またくるぞ!」
「ちくしょう、なんとかなんねぇのかよ!」
はっきりいて粘液の範囲が広すぎてどうにもならない。形は違うがまるでクモの糸である。もがけばもがくほどに絡みつき最後には身動きできなくなるのだ。
「ノエル! 弱点とかねえのかよ⁉」
【回答。粘液を吐く際に開いた口の中はダメージが普通に通ると断定】
「んなことできるかー‼」
モンスターの動きは速い。特に口を開いているのは一瞬だけである。そこを殴るにしろ蹴るにしろ無理ゲー過ぎる。
「レッド! 弱点があるのか⁉」
「はい、粘液を打ち出してる時に一瞬開く口の中だけは普通にダメージが通るそうです」
「んなもん、聞いても意味ねぇわ!」
ですよねー! 俺だってそう思うよ!
おそらく粘液で足止めして毒でしとめるって作戦なんだろうな。
敵ながら見事な選択である。
そうこうしている間にもどんどん足場が無くなっていく。
かと言って下手に近づいたらつかまれるってゆーより、はさまれて終わりなきがしてならない。
いくら動きが読めても対応する手段がないんじゃ意味がないと知った。
今できる事と言ったら、ただただ攻撃のタイミングをブルーに教えるくらいである。
【提案。武器の投擲による攻撃を推奨】
「んなことしたら粘液攻撃まともに食らうじゃねぇか!」
【補足。愛衣お母さんにもらった装備があるから大丈夫と判断】
信じるしかなかった――というよりもノエルがなんとかしてくれるというのなら不思議と不安はなくなった。むしろこの状況をどうやってひっくり返すのか見てみたくてワクワクしていた。
「わかった! ブルー! 俺の後ろに回り込んでくれ!」
「なにか考えがあるんだよなレッド⁉」
「あぁ! もし相手の動きが止まるようなら強烈なヤツ頼む!」
「了解だ!」
「ノエル! 昨日の投げ技、今度は右のフルパワーで頼む!」
【了解。各部誘導優先順位。第一をノエル。第二を克斗に変更。基本運動性能300%に上昇。外骨格装甲変形開始。シールドモード正常に展開成功】
相手の口が開く瞬間を狙い俺の身体がめいっぱいしなって刀もどきをモンスターの口めがけて投げつける。すぐさま身体を反対側にひねり粘液にそなえるノエル。
左腕から生えた大き目のシールドは俺の身体を隠すにはじゅうぶんなサイズだった。
【報告。攻撃成功。各部誘導優先順位。第一を克斗。第二をノエルに変更】
べしゃりと盾に粘液が当たった音がして俺は、その場から動けなくなっていた。
「食らいやがれ! ハイパワーナックル‼」
ドカンと言う重々しい音とで、攻撃が成功したのは分かるが盾が動かせなくて戦況が見えない。
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