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【報告。ブルーの攻撃成功。敵モンスター中破を確認。移動速度低下を確認。視覚情報能力喪失を確認】
「ノエル、この盾って小さくできねえのか?」
【可能。シールド縮小】
盾が小さくなる。
こんなことができるようになったんだと感心していたが――!
「げ、マジかよ‼」
ブルーの攻撃でクモの頭が深々と陥没していた。もう大きなカニにしか見えない。
【報告。敵モンスター無差別攻撃に変更】
「ブラック! ブルー! 無差別攻撃に変更するみたいだ気を付けてくれ!」
「了解した!」
「了解だ!」
二人とも、いったん距離を置いて静観している。
なんか無差別と言うよりは手あたり次第、当たったラッキーみたいな感じで手足を振り回しているようにしかみえない。
だからこそ、完全に俺達の先読みは通用しなくなった。
ここはもう二人の連携に任せるしかないだろう。
またしても、丸投げかぁと思いながらも。
「敵は視覚を失って混乱してるみたいだ! ブラックなんとかして隙を作ってくれ! ブルーは、そこに強烈なヤツ頼む!」
「了解した! やるぞブルー!」
「了解っす!」
そこかさらきは見事というほかなかった。
暴れまわる相手のハサミめがけてブラックさんが回し蹴りを決めて弾くと、その後方からブルーが強烈な一撃を入れる。反対側も同じ戦法であっさり吹き飛ばす――残るは7本の脚だけである。
【警告。敵モンスター自爆覚悟での毒攻撃を選択】
マジかよ! さすがボスキャラとでもいうべきか、いさぎい良いにもほどがあんだろ!
「二人とも離れてくれ! 自爆覚悟の毒攻撃が来る! ノエルシールド最大で展開してくれ!」
【了解。シールド最大で展開】
「了解した!」
「了解だ!」
ブシューと言う何かが無理やり絞りだされる音が響き――俺のシールドにも衝撃を感じた。
「ノエル! シールドは持ちそうか⁉」
【肯定。愛衣お母さんのおっぱいは頑丈】
そうだったな、これって元は愛衣先輩のおっぱいなんだよな……なんか喪失感より満足感の方がはるかに大きかった。
「ノエル! 敵は、どうなった⁉」
【回答。敵モンスターの大破確認。行動不能確認】
「よし! ブルー! とどめの一撃頼む!」
「任せろ! ハイパワーナックル‼」
大きな爆音と共に、「おっしゃーレベル1クリア~!」ブルーの雄たけびがあがる。
俺を絡め取っていた粘液も消え――シールドを消した景色にモンスターはいない。
かわりに、校庭に大きな穴が開いていた。どうやら最後には爆発する仕組みにでもなっていたのだろう。本当に危険な奴だった。
それなのに、俺の心は高揚していた。一言で言ったら楽しかったなのだ。
そして――場所を移動すると、恒例の反省会が始まったのである。
「どうやら私も攻撃力にポイントを割り振った方が良さそうだな」
「それもいいっすけど、ボーナスアイテムとかで良いのあるんじゃないっすか?」
「いや、残念ながら今の戦力バランスを崩すような物しかない」
「罠っすね……」
「おそらくそうだろうな」
「そんな、罠みたいなアイテムとかもあるんすか?」
「あぁ、前回の敗因の一つなのだよ」
「げ……ノエル、俺達のはどんな感じだ?」
【回答。ポイント不足により選択不能】
「そうか……そりゃしょうがねぇな」
「ん? なんと言っていたんだい?」
「なんかポイント不足してて選べないそうっす」
「ふむ。ボスを倒しても足りないとなると相当なアイテムなのだろうな」
「ちなみに俺は、ハイパワーナックルの上位互換! バーニングナックルってのを選択したっす!」
「うむ。それは、実に頼もしいな」
「はい! 二人が隙を作ってくれさえすれば大抵のヤツらは一撃っすよ!」
すごいとは思うが、なぜか羨ましいとは感じなかった。
ただただ、この戦いがまだ続くんだということが楽しみでしかたがなかった。
「それはそれとして、ブルーきちんと防御にもポイントを振り分けておけよ」
「そう言われるだろうと思って、6割は防御に振ってみたっす」
「うむ。今回も前回同様最後には爆発したからな……おそろくレベル2のボスも同じだろう」
「だったら、爆発直前で攻撃やめてもらって、最後の一撃は俺が入れるってのもありですね」
「なるほど、防御力特化型のレッドならではの選択だな……うむ、一考の価値はあるな」
「でもよう……その武器ってまだ使えるんか?」
ブルーのいう事ももっともである。
今回の爆発に巻き込まれたせいか、それともブルーの攻撃の影響かは分からないが大きく横に曲がっていた。
「大丈夫っすよ! また作ってもらえばいいだけっすから!」
「まぁ……それならいいけどよぅ」
「しかし、さすがに今日頼んで明日というわけにもいくまい?」
「あ……言われてみれば確かに……」
すでに深夜である。頼んでもらえたとしても明日――出来上がるのは早くても明後日以降になる気がした。
「となると、俺は戦力外っすね」
「いや、指示をもらえるだけでもじゅうぶんにレッドは役に立っているさ」
「そうだぜレッド! 一日や二日くらい俺達だけでもやって見せるって!」
「でも、今日みたいに相手の行動が分かっていても対処できない場合も考えないといけないっすよね?」
「確かに、今日ほど己の無力さを感じたのは久しいが、今までの流れでいけばレベル2のザコがレベル1のボスよりも強いという事はないはずだ」
「でも、ブラックさん。相手はあのカネルっすよ?」
「わかっているさ、あくまでも可能性の一つと言うだけで油断はしないつもりだ。むしろ今回の勝利によっていないブルーの成長の方が私は嬉しいよ」
「えへへ。そうっすかね?」
「あぁ。今日ほどキミを頼もしいと感じた日はなかったよ」
「確かに、ほとんどブルーさん一人で倒しちゃいましたもんね!」
「なに言ってやがる! レッドこそとんでもねぇ一撃入れてたじゃねぇか!」
「や、でも、それだけっすから」
「すまないが、その辺でやめてくれないか二人とも……」
「「へ……?」」
「相手の足一本すら折れなかった私がみじめになる」
沈黙のまま……反省会は終了したのだった。
*
「紫先輩スイマセン、ダメにしちゃったっす」
「そうか、ちょっと待っていろ在庫を持ってきてやる」
「在庫⁉」
「お前さんの使い方が荒いのは分かっていたからな」
そう言いながら紫先輩はテレビを指す。
おれだけ人の居るところで戦ってたんだ当然動画も流出してるよなぁ。
「そうだったんですね……ありがとうございます」
黒焦げになってひん曲がった刀もどきを回収すると本当に真新しい物を持ってきてくれた。
「なんか惚れそうなくらい紫先輩って気がききますよね」
「そりゃ、下心があるんだ当然だろう?」
「それでもめちゃくちゃ嬉しいっす!」
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