35


 まるで狙いすましたかのようなタイミングでノエルからモンスター発生の予告が入り。俺はいち早く現地に向かった。

 ブラックさんに言われた通り、監視カメラや人目を気にして変身してしている。

 問題はステルスモードとやらになっている時は通行人等から一切認識されないため思ってた以上に慎重に行動しなければならないという事だった。

 昨晩模擬戦闘みたいなことをした学園の校庭にはマラソンなのか体力測定なのか結構な生徒が居た。

 制服も可愛いが体操服姿もまぶしかった。

 健全な男子としては金網に張り付いて鑑賞すべきだと思うのだが……今の俺にとっては邪魔者としか映らなかった。

 なんとかして追い払いたいところだがその方法が全く思いつかない。

 こんな時、紫先輩が居たらきっとなんとかしてくれたんだろうなぁ……なんて思いながら校庭に入り中心にある巨大な三角マークを見つめていた。

 どうやら今回も中型らしい。前回よりは良い武器を持っているのだからそれなりに戦えるとは思うのだが、相手がまためんどくさそうなタイプだった。

 ノエルの説明では、半無差別攻撃型で、またしても分離するそうだ。そして一番厄介なのが自爆攻撃まであるらしい。

 どのようなタイミングで自爆するのかは、ノエルでも分からないらしく本当に厄介である。

 とりあえずは紫先輩が用意してくれた武器を信じて――。

 モンスター発生と同時に攻撃を当てられるようジャンプして思いっきり打ち下ろした。


《ドカン》


 爆裂音と共に火と煙が上がり。巨大なサボテンみたいなヤツが野球ボールサイズになって四方八方に飛び散った!

 半分くらいは俺に向かって来てくれたが、残りは不特定多数の生徒に向かって飛んで行った。


「げっ、やっちまったか⁉」

「キャー!」とか「うわ~!」とかいった悲鳴とも歓声ともとれそうな叫び声があちらこちらから上がる。

【報告。克斗の先制攻撃により敵モンスターの約1割の撃破成功。残敵総数102体】

「やっ、それよりこの飛び散っちまったのはどーすんだよ⁉」

【回答。各個撃破が適切と判断】


 向かって来てくれている奴らには反応出来ているし硬さもあまり感じない。爆発して四散していく。

 しかし、死角を突かれた攻撃は何回か食らいそうになっていた。なにせ数が多すぎる。

 相手は6角形で中心にサボテンのトゲのようなものが生えている。

 厚みがあまりないぶんもろいのだろうが、直接生身で受けるには危険すぎる。かと言って俺が生徒達をかばいに行けば、確実に今俺を狙ってるヤツらもセットになっちまうだろう。そうなったら大惨事確定だ!


「ノエル! 後ろから来るヤツだけ教えてくれ! あとは俺が何とかする!」


 基本の中段の構えから来るヤツをとにかく叩きまくった。


【警告。後方上部から3体。下部から2体の接近を確認】


 よしっ! 前から来る方が少ない!


「了解! 多少のダメージは気にするな!」


 ダメージ覚悟で振り向きざまに下から来るヤツを横に薙いで2体撃破。切り返す流れで上から来る3体を撃破したところ背中でドカンという爆裂音が二回連続で響いた。思った以上にダメージを感じない。


「ノエル! 今のでどのくらいダメージ受けた⁉」

【回答。ダメージ僅か。現状の攻撃では、ほとんどダメージを受けないと判明。単独の突撃なら無視しても良いと判断】

「よし! だったらまとめてやれるヤツらを重視して叩くぞ!」

【了解。後方中部から4体。下部から5体の接近を確認】


 あいかわらず死角を突くのが好きなヤツらだな!


 真正面から来たのを無視して振り向きざまに2体撃破。後頭部に衝撃を感じるが、やはりあまり響かない。これが防御力重視型の恩恵だとしたらノエルの選択に感謝しなければならないだろう。

 返す刀で3体目。バックステップで距離を取ってから4体目5体目としとめる。


「レッド! すまない遅れた、今から参戦する!」


 ブラックさんが来てくれた! これで自分の周りのヤツらに集中できる!


「ブラックさん! 生徒狙ってるヤツらをお願いします!」

「了解した!」


 まったく、この惨事だというのに携帯のカメラで撮影していたり、「俺らもやるぞ~!」なんて言いながら金属バッドで応戦しようとしてる連中までいる。

 すでに、けが人がでているような状況なんだから、とっとと逃げてほしいものである。

 それにしても改めてブラックさんの動きを見ると凄い! 目にも止まらない速さを絵に描いたみたいに次々とモンスターを蹴り飛ばしていく。

 俺なんてノエルの支援があってなんとかやってるって感じなのに……。

 このペースなら、あと5分くらいでなんとか片付けられるだろうと思ったころ青い人が現れた。


「ブラックさんスイマセン遅れたっす!」

「とにかく生徒達の安全重視だ!」

「了解っす!」


 うん。予想通り俺は、無視の方向で行くみたいだ。

 まぁ、下手に絡まれるよりは、この方が俺もやりやすいからいいけどなって!

 ある程度、数が減って来たところでモンスターの動きに変化が現れた。突撃を一気にやめて複数の塊になり始めたのだ。


【報告。敵モンスター合体による自爆攻撃に移行。攻撃力数倍に上昇と判明】


 ――マジか‼

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