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「モンスターのヤツら自爆攻撃に切り替えたみたいっす!」

「了解だレッド!」


 俺の周りに居たヤツまでもが俺を無視して生徒達の方向に向かって飛んで行きやがった!

 ブラックさんと青い人が来てから余計にテンション上がったみたいで、むしろ観戦モードの生徒が増えていた。

 あんな中で爆発されたらまずい!


「ノエル! 狙われてる生徒って分かるか⁉」

【肯定。マークを付けて表示】


 特定の生徒というよりは、より生徒の集まって居る所に黄色い三角マークが5か所一人一か所ずつ何とかしても二か所はどうにもならない。

 けんかなら後ですればいい! 今は指示優先だと思った!


「ブラック! ブルー! 敵の狙いは、より多く人が集まってる場所での自爆だ! 俺は一番近いのを何とかする後の4か所は頼む防いでくれ!」


 ノエルのおかげでそれなりに早く走れてはいるが本当に一か所なんとかするだけでいっぱいいっぱいだと思った。

 俺は校庭に出ていた体操服着た連中が一番集まってるところに飛び込むようにして回り込み突撃する前のヤツを思いっきりジャンプして叩き落した。


《ドカン》


 思った以上の爆発音と煙こんなのが突っ込んだらケガじゃ済まない可能性が高い!

 それなのに青い人からの文句がさく裂していた。


「ざけんな! なんでてめぇなんぞに指図されなきゃならねぇんだ!」

「黙れブルー! 今は人命優先だ!」

「んなこと分かってますよ!」


 威勢がいいのは良いが、青い人の動きが悪い。制服を着た野次馬連中の所へ向かうモンスターの動きについていけていない。

 対照的にブラックさんは空中で回し蹴りを食らわせ一体を撃破――同時に次の狙いを定めて跳躍していた。 

 もうダメもとで、俺も制服着た連中の所へ行くしかない!


「ノエル! 瞬発力を限界まで上げてくれ!」

【了解。対応時間10秒と判断。要求10秒以内に敵モンスターを撃破して下さい】

「了解だ!」


 ギリギリで間に合ったとはいえ生徒達との距離が近過ぎて撃破は出来ない。武器を捨てて思いっきりジャンプして右手でつかみ。着地と同時に距離を取った。


《ドカン》

 

 【報告。右手中破。推定修復時間20時間以上と判断】


 どうやら俺の右手は骨折でもしたらしい。痛みはないが動いているという感覚もない。

 残った一つはなんとか青い人が対応してくれた。

 やはりレベルの差というやつなのだろうか?

 サッカーのゴールキーパーが球をキャッチするみたいにモンスターを抱くと同時にモンスターが自爆したが特にダメージを受けている形跡もなかった。

 そして――勝利の歓声の中、やりたくもない反省会が始まるのだった。


 ――場所は俺のケガを考慮して式部家のマンションの屋上だった。


 周りに人はいない。


「ブルーどういうつもりだ!」


 声色だけでしか判断できないが、ブラックさんは激おこである。


「や、すんません、頭では分かってるつもりでいたんですけど……」

「一瞬が生死を分ける状況だった。レッドが無理してくれなかったらケガ人どころか死人が出たかもしれないんだぞ!」

「――っく。すまないレッド、俺が悪かった」

「へ……」


 もっとごねるかと思ったのに意外と素直に頭を下げられてしまい思わず間抜けな声がでちまった。


「や、俺もいきなり呼び捨てとかにして悪かったって思ってますし」

「レッド! キミの判断は正しかった! 今回の事に物怖じせず同じく指示を出してくれると助かる」

「え、でも……」


 また今回みたいなことになったら惨事である。


「いや、本当に俺がバカだった。レッド、お前のおかげで助かた連中の代わりに礼を言わせて欲しい」

「えと、じゃあ今度からはブルーさんって呼んでもいいっすか?」

「あぁ。もちろんだ、それと戦闘時はブルーでいい!」

「了解っす」

「それにしても相手の行動が読めるというのは本当に助かる。もし良かったらレッド。キミがリーダーをやらないか?」

「え…リーダーってブラックさんじゃなかったんですか?」

「いや、現状。今の我々にはリーダーと呼べる者はいないのだよ」

「や、でも……」


 絶対にブルーが反対すると思っていたのに予想外の言葉が出て来た。


「レッド、俺からも頼む。考えてみてはくれないか?」


 正直なところ、ただ単にリーダーとかめんどくさそうで嫌だった。


「いえ、やっぱりリーダーはブラックさんが良いと思います。俺は、たまたま相手の行動が分かるってだけですし」

「そりゃ、俺だってその意見には賛成だ……だが……」

「別に指示出す人イコールリーダーって必要もないですよね?」

「ふぅ、どうやらキミは人の上に立つのが苦手なようだ。そんな者に無理やりリーダーを押し付けても戦果が悪くなるだけだろう。幸いブルーも今回の一件でキミが指示を出すことに賛成してくれているみたいだしね」

「じゃぁ」

「あぁ、前リーダーほどのリーダーシップはないが私がリーダーをしよう。異論はないな?」

「「はいっす」」


 俺とブルーさんの声は見事に重なっていた。


「戦闘時も、そのくらい息を合わせてくれよ!」

「「了解っす!」」

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