共闘戦線異状あり

33



 今日は、朝から引っ越しをしていた。

 引っ越すと言っても隣。このマンションを経営してるのが式部家なので実質家賃とかはタダらしい。

 そして、その手伝いになぜか幸村も来てくれていた。


「お前もしかして式部先輩に弱みとかにぎられてるんじゃねぇよな?」

「も~~。変なこと言わないでよ~」

「そうだぞ克斗。私は時間があったら手伝ってほしいと言っただけだ」

「むしろボクの方から何でもしますから、これからもよろしくお願いしますって言っただけだよ!」

「よけいあやしいわ!」

「まぁ、それだけ私の暗黒魔法が強力だったという話なのだよ」


 そういえば、あのリボン結んだ時に、そんなことも言ってたような。

 ここ数日、幸村と話す機会もなかったが今もニコニコして付けているのだからかなり気に入っているみたいだ。


「そうだよ! 本当に凄かったんだからね! それにもうボクに近づいてくる女の子もいなくなったし!」


 喜ばしいことなのかそれ⁉ 俺なら二次元に逃避するレベルで落ち込んでるぞ!


「まぁ、お前がそれでいいなら、いいけどさ」

「うん! だから今日は、めいっぱい頑張るから何でも言ってね!」







 幸村は本当に良く働いてくれた。

 おかげさまで昼前には余裕で終わっていた。

 一緒に昼飯でもと思って誘ってみたのだが、「これからデートだから」と言って帰ってしまった。

 ちょっと前まで幸村がうらやましかったのに、不思議と今はそういった感覚はない。


「いやぁ、実に良くできた忠犬になってくれたものだ」


 悪い笑みを浮かべる美人さん。もちろん式部先輩のことである。


「それから克斗。今から私のことは紫と呼べ」


 もう拒否できないのは身に染みて分かっている。間違って拒否しようものなら絶対にめんどくさくなるからだ。


「はい。わかりました、紫先輩」


 どうやらそれなりに満足したらしくニヤニヤしている。


「ねぇ、克斗君。昨日こんちゃんと何かいいことあったの?」

「一緒に風呂入って、一緒に寝ただけですけど」


 普通ならとんでもないことなのだろうが、相手が愛衣先輩である、細かい説明はする必要もないだろう。


「ホントにそれだけ?」

「そんだけって、どんだけの内容期待してたんですか?」

「ん? とりあえず生殖行為くらいかな?」

「って! それ以上ってなにがあるんですか⁉」

「お母さんといっしょとか?」

「ぷっ! あははははは!」

「紫先輩笑い事じゃないですよ! 母さんと一緒にしたことにされてるんですよ! なんで笑っていられるんですか⁉」

「愛衣の真意が分かっているからさ」

「はぁ! なんすかそりゃ⁉」

「少しは自分の頭で考えることを覚えろ」

「ところでこんちゃん! 克斗君のどうだった⁉ すごかった⁉」

「あははははは。すまんな、愛衣。訳あって全ては話せなくなった。だからここではいずれ知れるとだけ言っておく。それから、相応の覚悟はしておけよ」

「うん…痛くしないでね…克斗君……」

「なななななっ! なんでそうなるんですか⁉」

「ふ~ん。そっか…そっちのほうかぁ。うん大丈夫だよ。きっとね、私、克斗君がどんな体してても受け入れられると思うから」

「え…あの愛衣先輩? なんでそんなに全て分かってますみたいな顔してるんですか?」

「えへへ~。愛ゆえの力だよ~♪」

「違うがな」

「ひどいよこんちゃん! ここは黙って見守る展開なんだよ!」

「まぁ、いいではないか。少なくとも貴様の体を、ここにいる二人はそれでもいいといっているのだから」

「そう…ですか……」

「うん、そうだよ。こんちゃんの言ったとおり、どうせ分かることなんだから気にしないでね? えへへ」




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