サイレント

22



 いつもの情報交換――学園の屋上にサイレントの二人が居た。

 昼間は開放されているため、それなりに生徒の出入りもあるが今は深夜。他には誰もいない。

 元々このサイレントという名称も後から付けられたもので自分達がそう名乗っているわけでもなければチーム名みたいなものもなかった。

 ただ、そう認識されてしまった以上――都合がいいのでそのまま否定も肯定もしていないだけだった。

 彼らは自分達の行為について何も語らない。

 ネットの掲示板ではいつも賛否両論で時には熱く炎上しているが、それを知りながらもただ傍観しているだけであった。

 しかし、今回ばかりは自分達の行動を見直さなければならない事態に直面していた。


 ――克斗による書き込みである。


 本来なら出現するまで分からないはずだった、モンスターの発生時間と場所までを特定し事前に書き込んでいる。

 さすがに2日連続ともなれば疑いようがなかった。

 さらに、今回は現場に到着した時には戦闘は終了していた。

 そして、それが二人をさらに混乱させていた。

 単独撃破が可能ならばなぜ前回そうしなかったのか?

 それとも今回は、ただ単に運が良かっただけなのか?

 いずれにしろ二人とも時間を作るしかなかった。

 日常生活を極端に犠牲にすれば正体がバレる可能性がでてくる。

 今日まではなんとかごまかしてこれたが、現状のまま大事になって警察や軍隊に本気で動かれたらまずいし。なによりも、新参者にポイントを全て奪われでもしたら自分達の願いどころか生存率にまで影響が出かねない。


「ブラックさんどうします?」

「あぁ、今後も書き込みが続くようなら無理にでも接触してみようと思う」

「仲間になってくれますかね?」

「正直なところ何とも言えない。少なくとも利害の一致がなければ厳しいだろうな」

「ですよね。特に今日の事で単独撃破の美味しさに味をしめているとしたら……」

「そうだな、明日からは書き込みをせず自分だけでなんとかしようとするだろうな」

「――ちょ! 待ってくださいよ! そんなことされたら!」

「私達の予定も狂ってしまうだろうな」

「ここは多少したてに出てでも仲間になってもらった方がいいっすかね?」

「そうだな、正直なところ興味があるか否か分からないが、リーダーが不在なのもたしか。条件次第ではその座を差し出すというのも手だろうな」

「えっ! ちょっと、待ってくださいよ! リーダーはこれからもレッドさんじゃなかったんですか⁉」

「別に彼は、そんなものに固執する小さな器の持ち主ではないよ。それにもうリタイアした者に期待を持つのは止めた方がいい」

「それは、そうかもしれないっすけど」


 ブルーはどうしても納得したくなかった。

 今では唯一の仲間となってしまったブラックのことも尊敬しているが。人のためなら危険をかえりみずに飛び込める勇敢なレッドの事も尊敬していたからだ。

 特に戦闘スタイルではレッドの影響を強く受けており、同じパワー重視型だった。

 だからこそ新参者がいきなりリーダーとか考えたくもなかった。


「だが、相手の能力が私達にとって必要不可欠である以上、相応の見返りもなしでは話にもならないかもしれない」

「大人になれってことっすか?」

「いや、キミが私の考えている以上の見返りを提示してくれればいいだけの話だ」

「っ――」

「とにかく私は共闘したいと考えている」

「それは自分も同じっすけど……」

「ならばこうしよう。とにかく会って話をしてみる。もちろん仲間うんぬんの話は無しでだ」



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