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【各部誘導優先順位。第一をノエル。第二を克斗に変更】
なんかすっごく不思議な感覚だった。昨日は戦闘に夢中で気付かなかったが、俺の意思では呼吸を止める事すら出来ない。まるで、意思のある人形にでもなった気分だった。
「会話準備完了」
「本当に、ノエルちゃんなの?」
愛衣先輩は思ってた以上に衝撃を受けているみたいで見ていてなんか面白い。
「肯定。現在各部誘導優先順位は第一がノエルとなっています」
「じゃ、じゃぁ。聞いてもいいかな?」
「当然、愛衣お母さんは特別。よってノエルはなんでも答えます」
「ノエルちゃんは克斗君のこと好きなの?」
ド直球である。おもわず吹き出しそうになったがやはり、俺の体は一切反応してくれない。
「回答。ノエルには好きと言う感情は測りかねます。ですがノエルと克斗は一蓮托生の身。生涯を共にすると約束しています」
「生涯を共にするって! それ、もうプロポーズだよね⁉」
「肯定。同じ人間同士ならば、その理解で正しいと判断」
「じゃ、じゃあさ、もしも私が克斗君と生殖行為をしたいって言ったらノエルちゃんは許してくれるの?」
またしてもド直球。なんか人の秘密を覗き見してるみたいである。
「肯定。愛衣お母さんは特別。よって克斗との生殖行為にノエルは異論を唱えません」
「じゃ、じゃあこんちゃんは?」
「紫お姉さんも特別。よって生殖行為にノエルは異論を唱えません」
「ふ~ん。焼きもちとかっていう感覚はないんだね」
「肯定。ノエルは初心者用サポートシステムを改造した欠陥品。よってそのようなプログラムは搭載されておりません」
「む~! ダメだよノエルちゃん! 自分の事を欠陥品とか言ったら!」
「否定。ノエルはプレイヤー№1により即席で作られたシステム。よって欠陥品とするのが妥当」
「よくわかんないけど、それでもダメなものはダメなの! お母さんのいう事は絶対なの! もう二度と自分の事を欠陥品なんていっちゃダメだからね!」
「了解。以後改めます」
って、おいおい! 俺が言っても聞かなかったくせに愛衣先輩が言うことは素直に聞くのかよ!
「うんうんよろしい」
「要求。お母さんは子供に肉体の一部を与えると認識。よって愛衣お母さんの一部搾取を希望」
「ふぇ⁉ 搾取って何取るきなの?」
「回答。主に余分と思われる脂肪」
「ちょ! 私そんなに太ってないよ!」
ぶはははあっはは、さすがに笑った。もし本体で聞いてたら腹筋崩壊ものである。
「否定。胸部に無駄な錘があるためバランスが悪い。よって搾取するべきと判断」
「なっ! なにを基準にそう言ってるのかな⁉」
「回答。紫お姉さん」
うん、それは認める。確かに紫先輩の身体はすごく綺麗だった。
「いちおう、理由聞いてもいいかな?」
「回答。紫お姉さんの方が戦闘向きと断定。愛衣お母さんの錘は死角を増やしているだけと判断」
「う……、そりゃ確かに重いけどさ、肩も凝るけどさ、オモリはひどいんじゃないかな?」
「確認。愛衣お母さんには錘が必要?」
「や、本音で言ったらこんなにはいらないよ! でも、さすがにこんちゃんみたいなぺったんこはいやかなぁ」
「了解。ある程度までなら搾取しても良いと判断。よって粘液接触を求めます」
「ね、粘液接触? ってなにするき⁉」
「回答、舌と舌を合わせるだけ」
「ふぇ‼」
おいおいおいおいおいおい! なんか予想外の展開になってきたぞ!
俺の身体が勝手に動いて舌を出しているのが分かる。
「い、いいのかな……ごくり」
って、愛衣先輩の目が本気になっちゃってる! やめろ! やめるんだ! ノエル!
俺の声が全く聞こえてないのかノエルからの反応はない!
愛衣先輩の顔がある程度近づいて来たところでガシッと俺の両手が動いて愛衣先輩の頭を抑え込むようにして口と口が触れ合ってる!
「んっ⁉ んん~~~」
長かった、キスと呼べるものなのかどうかは分からないがとにかく長かった……。
って、ゆーか感触とかなんでなんにも伝わってこねぇんだよ⁉
俺だって初めてだったんだぞ! なんでこんなにも感動できないままハードル超えちゃってるんだよ!
「ぷふぁ~~~」
「感謝。戦力強化用素材収集完了。有機素材変換開始。外骨格装甲一部変形可能」
「って、ノエルちゃんいきなり……あれ? ない? ってゆーか、身体かるっ!」
「当然。愛衣お母さんの錘。70%を搾取完了」
「えぇ! 70%もなの⁉」
言うが早いか、愛衣先輩は上着をがばっとたくし上げた。もちろんブラも一緒にである。
足りなかった、明らかに足りなかった。手を伸ばせば届きそうな距離にあるおっぱいが確実に小さくなっていて……ひっくり返したお椀くらいになっていた。
「確認70%は搾取過多?」
「ん~ん! 全然そんなことないよ! むしろ理想的なサイズだよ! 嬉しいよ! すごいよノエルちゃんってこんなこともできたんだ!」
愛衣先輩は自分の胸を揉みながら感涙しているが……俺の心は別な意味で泣いていた。
なんでだよノエル。なんでそんなもったいないことしちまったんだよ!
「当然。前回の戦闘にて得たポイントで外骨格装甲変形機能を選択。よって得た有機素材を変形可能」
「うん! よくわかんないけどありがとね!」
「確認。まだノエルとの会話は必要?」
「あ、そうだよね! いつまでもこのままってわけにはいかないもんね!」
「肯定。基本的に各部誘導優先順位は克斗が第一であるべきと判断」
「あ、うん。じゃぁまたね!」
「了解。各部誘導優先順位。第一を克斗。第二をノエルに変更」
*
「見て見て克斗君! こんなにちっちゃくなったんだよ!」
「はい……見てました……」
「って、泣かないでよ!」
「だって……」
手を伸ばせば、そこに在ったはずの物がないのだ。俺の手は空中をさまよっていた。
「言っとくけど、あんまり大き過ぎると色々と問題あるんだからね!」
「でも……」
「じゃぁ克斗君は私の骨が削れちゃったりしてもいいの⁉」
「骨⁉」
「そうだよ! あんまり大き過ぎると骨が削れちゃうことだってあるみたいなんだよ!」
そ、そんなにも深刻な問題だったのか⁉
「それに、24時間ずっと大玉スイカ持って過ごせって言われたら嫌でしょ⁉」
「まぁ、たしかにそれはつらそうですね……」
「でもは、なしなんだよ! 何にもないところで転んだり、階段踏み外したり、ご飯だって食べづらかったんだからね!」
「う……」
「大丈夫だよ! これで素敵イベント突入のフラグだって立ったんだから! 期待しててね!」
いえ、夢も希望も無くなった気しかしません。ごめんなさい。
きっと口に出さなくても伝わってるんだろうけど……しばらくこの喪失感を忘れられそうになかった。
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