第46話 クラス全員見せなくても

「オーツチくーん、ひょっとしてそれさぁ、1度にひとつの命令しかできないんじゃないのぉ」


カトーちゃんの言葉に、オーツチはビクッとする。それにあわせてクラスメイトの動きが止まった。

その様子を見て、確信したように言葉を続ける。


「どうやら図星のようねぇ、サトーちゃん、どうするぅ」


状況はどうみてもシューガールの方が追い詰められているのに、逆にオーツチが追い詰められているみたいだ。


「カトーちゃんとムトーちゃんは、ビトーちゃんを守って。あたしはあげはに加勢に行く」


「そうねぇ、あたし達を襲うなら、サトーちゃんが疎かになるから、そのエンピツモドキをあげはと2人がかりで奪えるわね。逆にあげはを襲うなら、あたし達は教室から逃げ出して、先生を呼ぶことができるわねぇ」


追い詰めたネズミをどういたぶってやろうか、そんな感じでカトーちゃんがオーツチを精神的に追い詰める。


怖ええええー、カトーちゃん怖ええええー


オーツチはどうしていいか分からず、かたまっている。それをみて、タカコがあたしに目で合図を送った。


「よし、みんな、行くよ!!」


タカコの力強い合図に、カトーちゃんが応える。


「頑張ってねー、みんなー」


その言葉にムトーちゃんがかまえたまま、言い返す。


「あなたも手伝いなさい」


「だってぇ、あたしは非力だしぃ、こうやってビトーちゃんを守るしか出来ないからぁ、攻撃オフェンスはみんなに任せるわ」


「だったらビトーちゃんから離れなさい」


「ビトーちゃんは、あたしより非力だしぃ、こうして後ろからスカートをめくられないように、抱きしめていないといけないのぉ」


「離れなさいってば!!」


「心配しなくて大丈夫よぉ、こうして後ろから両腕で胸をカバーして、足を絡めてスカートを押さえて、あら、ビトーちゃん、意外と胸があるのね、形もいい感じの……」


ムトーちゃんが我慢しきれず、振り向いて睨み付ける。


「あなたねぇ」


隙が出来たかと、対峙していた男子がムトーちゃんに襲いかかった。


すると、さっきまでの挑発的な物言いから、うってかわって真剣な言い方で鋭くカトーちゃんが放つ。


「後ろ、3人」


それに呼応し、ムトーちゃんが振り向き様、男子達に手刀を首筋に打ち込む。

全員が崩れ落ちると同時に、タカコが駆け出し、こっちに向かってきた。


 オーツチは反応が出来ずにおろおろする。あたしもタカコに合わせて、エンピツモドキを取り上げようとオーツチに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る