第45話 その3
たかがファンクラブの除名なのに、彼にとっては国外追放や下手すれば死刑宣告のようなものだったらしい。見ていてわかるほど絶望の表情をした。
「そ、そんな……、ボクはジュリナさんのために…、ジュリナさんを想って……」
「甘ったれないで」
ムトーちゃんに負けないほど凛とした言葉で、カトーちゃんはオーツチに言葉を向ける。
「あなたがわたしのコトを想うのなら、ちゃんと好みを把握しなさい。プロフィールにも書いてあるし、質問も受け付けているわ。それにあなたのプレゼントも受け取って、注意したでしょう。まだそういうのを送るのは早いって」
「そ、それは…」
「下着を贈るには、あなたはまだ早いの。大人になって一人前になり自信を持てるようになってからだと言ったでしょう。それなのに下着にこだわるあなたは、自分の好みを押しつけているだけ、わたしのコトなんて想ってないの、だからファンクラブを除名するのよ、おわかり? この未熟者!!」
うわぁ、いつも以上にキツいな。なんかもう本当に女王様って感じだ。
そんな女王様の叱責に、オーツチは膝から崩れ落ち、今にも泣きそうになっていた。
ここはあたしの番かな。オーツチに近づき、なるだけやさしく話しかける。
「カトーちゃんもああ言っているコトだし、もうやめようよ。それ渡してくれない?」
金魚すくいで慎重に金魚を追いつめている感じだ、さて、おとなしく渡してちょうだいよぉ~
あとすこしでエンピツモドキを取れそうなところで、オーツチの独り言が聞こえてくる。
「……ボクは悪くない、ボクは悪くない、ボクは悪くない……」
まずい!!
無理矢理もぎ取ろうと近づいた瞬間、オーツチは大声で叫びながら立ち上がった。
「くっそぉぉ、下手に出てりゃ好き放題言いやがってぇぇ、お前なんかパンツでじゅうぶんだぁ、このビッチがぁぁぁ、てめえなんかにうだうだ言われる筋合いはねぇ、ひんむいてやる、ビッチらしくひんむいてやるぅぅぅ」
オーツチの感情に呼応するように、エンピツモドキの赤が輝いた。するとさっきまで待機状態だったクラスメイトが、シューガール達に襲いかかる。
「みんな!!」
あたしが駆け寄ろうとすると、カトーちゃんが止めた。
「あげは、オーツチの方を!!」
それに気がつき、戻ってオーツチのエンピツモドキを取ろうとしたが、失敗してしまった。
さっきと同じ状態になった。小柄とはいえやはり男子か、力負けするなぁ。
剣道部コンビのすざましい防戦で、クラスメイトが攻めあぐねている時、カトーちゃんが余裕のある声で、こう呟いた。
「ふうん、なるほどねぇ」
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