第二話 終わりから始まるできごと
いや、実は、成人男女一人づつ、そして自動保育設備に入っていた乳幼児100人だけは神様が別の小さな星に転送しました。
放射能が地球を破壊する少しの時間では、いくら神様といってもそれが精一杯でした。
そこは地球のミニチュア版のような星でした、太陽も海も空気も緑も植物も魚も野生動物もいます。
地球にいた人間以外の生物は、この何年かで神様が全種転送していたのです。
しかし大陸は一つ、星の面積は地球の十分の一ほどです。
自動保育器に入っていた乳幼児は、冷凍母乳ですくすく成長し、やがて保育器から出て歩き出します。
たった二人の成人男女はその日を楽しみにしながら、一緒に転送された道具を使って畑を造ったり、魚を釣ったり、家を作ったりして過ごしました。
そうして半年ほど経った頃、一部の子どもたちは保育器からハイハイして出てきました。
子どもたちは肌の色も、目の色も、髪の色もバラバラでした。
でもそれはそれはどの子も可愛らしい姿でした。
それとともに離乳食が始まります。
おむつも替えないといけません。
二人はてんやわんやで子育てを始めました。
でも自力で出てこられない子どもたちがいるのに気がつきました。
生まれつき目が見えなかったり、手が動かなかったり、脳がうまく機能しなかったり、そういう個性を持った子どもたちです。
二人は一生懸命考えて一人も死なす事もなく、育てようとしました。
それはそれは大変な作業でした。
でも一年も経つと子どもたちが地球での小学生くらいに成長しました。
どうもこの星では成長が早いようです。
すると誰に教わった訳じゃないのに、ある子どもは目が見えない子どもの目になろうとします。
他の子どもは手が動かせない子どもの口に食べ物を運びます。
あまり上手く脳を動かせない子どももみんなでサポートします。
そういう時はお世話された子どもは満面の笑顔で微笑みます。
それを見るたびこころが大きく震え、喜びに包まれます。
だからみんな率先して助けあいました。
そんな姿を見て、神様は地球人には与えなかった念力を子どもたちに与えました。
子どもたちは大喜びしました。
念力なら見たものをそのまま目が見えない子どもに伝えることができるからです。
耳が聞こえない子どもに音を届ける事ができます。
手が使えない子どもも念力で自分で食事ができます。
脳をうまく使えない子どもも心はいたって普通でした。念力だと心どうしで会話出来るから肉体的特徴は形だけだと分かりました。
そしてお魚を海でとってきたり、山でとった山菜を、調理の上手い子どもが調理して、みんなで一緒に食べました。
二人の成人男女はみんなのパパ、みんなのママと呼ばれるようになりました。
みんなのパパはあらゆる知識を教えました。漁の仕方や畑の作り方、そして、家の作り方などです。
みんなのママはあらゆる知識を教えました。
美味しい料理の仕方や、子育ての仕方、愛についてです。
そうして大きくなった子どもたちは思春期を迎えます。
すると愛を知るようになりました。
子どもが産める愛の形を育んだ人は子どもを産みました。
中には女性どうし男性どうしの子どもが産めない愛の形もありましたが、生まれながらにして多様さが当たり前の世界で育ってきた子どもたちには、違和感など一切ありませんでした。
大切なのは肉体的特徴ではなく心であるとみんな分かっていたからです。
そして産まれた子どもはみんなで育てます。
産まれた子どもはみんなに愛を与えてくれました。
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