さいごの法律

赤木爽人(あかぎさわと)

第一話 これから始まる終わりのできごと

 今から500年ほど後の出来事です。

 格差、飢餓、争い、人種差別、自然破壊、疫病、災害がとことん酷くなってきた星がありました。

 その星は地球と呼ばれていました。

 その有り様に嘆き悲しんだ神様は、あらゆる代表者を呼び寄せ、ここで全世界が守るべき法律を一つ決め、それを守るという共通の行動をもって平和になるように努めなさいとおっしゃいました。


「そうしなければ、人間を地球から追い出します」


 そうともおっしゃいました。


 そして100日間かんかんがくがくしたあげく、まずは「隣人を愛すことだ、それが広まると地球人がお互いに愛で包まれる」

 誰かがそう言って世界法律『隣人を愛す』が立法されました。


 すぐさまその事は世界中に広まり、最初のうちは誰もがみな隣人に愛を与え、また、愛を受けていました。

 そして平和になるかと思いましたが、利害関係でがんじがらめになっている国境は越えられませんでした。


「こんなに愛してやってるのになんで不利益を被らないといけないんだ」


 そんな声があちこちから聞こえ、愛は憎しみに変わり殺し合いが始まり、五分の一の地球人が死にました。


「こりゃいかん」

 そう思った神様は再び代表者を招集して、別な法律を考えさせました。

 再び100日間のかんかんがくがくの末、誰かが言いました。


「国境があるからいけないんだ、国境を無くそう」

 そうして世界法律『国境を無くす』が立法されました。

 地球儀からは国境線が消え、世界が一つになったように見えました。


 地図から国境が消えただけでなく実際に領土を囲っていた壁やフェンスも無くしたのです。


 でも行き来が簡単になったのを良いことに、領土を広めようとするやからが現れ国同士の戦争になりました。

 そして五分の一の地球人が死にました。

 合計すると地球人の五分の二が死んだ事になります。


「こりゃいかん」

 そう思った神様は再び代表者を招集して、別な法律を考えさせました。

 再び100日間のかんかんがくがくの末、誰かが言いました。

「国があるからいけないんだ、国を解体しよう」

 そうして世界法律『地球は一つの国』が立法されました。


 これで利害関係もありません、何せ地球が一つの国になったのです。

 それで平和になると思われましたが、今度は肌の色や人種、宗教で集まり、主導権争いに発展してまたまた戦争が始まりました。


 それで地球人の五分の一が死にました。

 合計すると地球人の五分の三が死んだ事になります。


「こりゃいかん」

 そう思った神様は再び代表者を招集して、別な法律を考えさせました。

 再び100日間のかんかんがくがくの末、誰かが言いました。

「肌の色や人種で差別なんで今どき古いよやめようよ」


 そうして世界法律『地球は一つの人種』が立法されました。

 これで争いが起きません、何せ地球が一つの民族になったのです。

 ようやく平和になると思われましたが、今度は資源の近くにいる人間が、自分たちだけの利益を優先させて、儲けに走り、採掘に来た人間たちを気に食わないと片っ端から襲撃してまたまた戦争が始まりました。


 それで地球人の五分の一が死にました。

 合計すると地球人の五分の四が死んだ事になります。


「こりゃいかん」

 そう思った神様は再び代表者を招集して、別な法律を考えさせました。

 再び100日間のかんかんがくがくの末、誰かが言いました。

「武器があるからいけないんだ。武器を捨てよう」


 そうして世界法律『武器を捨てる』が立法されました。

 来月の一日がその日に設定されました。

 一日に持っている武器を一斉に海に捨てる事にしたのです。

 歴史的記念日です。地球から武器が無くなるのです。


 それは全ての地域を結んで、リアルタイムにTV中継もされ、武器が全て海に捨てられました、そして平和が訪れたように見えましたが、核爆弾だけは隠し持っており、持っていた核爆弾のボタンが一斉に押されました。


 ボタンの近くにいた人間たちが、今がチャンスと思い、自分たちだけ生き残ろうとしたんです。

 こういう時だけ考える事は一緒でした。

 これで地球人の五分の一が死にました。

 合計すると全員死んだのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る