服を掴まれて。


 引きずりおろされる。


 彼がいた。


「何をしているんですか。そんなところから落ちたら、死んでしまう」


 彼じゃないみたいな口調。


「なぜここに」


「え。あ。ほんとだ。なんで僕、こんなところに。あれ。記憶がないや」


 彼が。


 戻ってきてしまったんだと、思った。


 私のせいで。


 私が死のうとしたから。


 彼は、戻ってきてしまった。


「ごめん、なさい」


 私のせい。


「ごめんなさい。私が。死のうとしたから。私のせいであなたは」


「え。え。ちょっと待ってください。泣かないで。えっどうしよう」


 彼。


 彼がいる。


 でも、彼じゃなかった。


 抱きついて。

 キスをして。

 ゆっくりと、身体をほぐしていく。


 セックスを、したら。

 彼の記憶。戻ってきちゃうかな。このまま、何もしないで、この場を離れるべきなのかな。


 あなたは、どう思うかな。


 私は、あなたのところに行きたかった。一緒にいたかった。


 それだけで。


 あなたのプラットフォームに。


 なりたかった。

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