第3話:お姉ちゃんへの想い。なでなでもあるよ

「う、ぐるじぅ」


 朝起きると、白子しろこお姉ちゃんがボクを抱きしめて寝ていた。

 たわわな柔乳がパジャマ越しにボクの顔を押しつぶし、そうなると当然呼吸がしづらくなる。


「しろこおね、ぇ」

「んー……ケロちゃん……♡」


 むぎゅっ♡ と。

 さらにキツくたわわおっぱいが顔に押し付けられる。そればかりか、彼女の体勢が変わったことで服がはだけ、生乳が襲いかかってくる。白い肌は平熱より少し高めの温度を保っており、じっとりと夏の蒸し暑さにやられて湿っていた。そうなるとボクの顔にジメジメと、それでいてぬくぬくの生乳がむにゅりと吸い付いてきて、死んでしまいそうになる。


「しろ、こ、………ねぇ、ガッ……ぁ」

「ケロちゃん……あっ♡ そこっ、すき……あっあっ……♡」

「くるし、ぃ」


 当然ボクは白子お姉ちゃんを引き離そうと必死でもがいている。だけど相手は元天敵の白蛇。生物界では食う側の存在だ。だから力の差では歴然であり。

 

「しろの、お、ねぇ……ぐ、ぅ」


 無我夢中で白子お姉ちゃんから身体を引き離そうとする。ボクは必死だった。だからとっさに彼女の柔乳をむぎゅりと掴んでしまうのはしょうがないことで、


 むぎゅぅ♡


「っっ〜〜〜♡♡!!! っっ、はぁっ♡」


 白子お姉ちゃんが身体を仰け反り。

 何やらビクビク痙攣している。

 だけどこれで身体が離れた。ボクはベッドから上がり、白子お姉ちゃんを起こす。


「お姉ちゃん!」

「はぁっ、ふぅ……ケロちゃん……?」

「すっごい顔、てか、大丈夫? 身体ビクビクしてるけど」

「え……? あ……濡れて……〜〜〜っ♡」

「ぬれ? 雨は降ってないよ?」

「ななっ、何でもないよ! ごご、ごめんね……?」

「いいよもう……結構激しかったけど(寝相)、お姉ちゃん気持ちよさそうだったから(寝顔が)……」

「激しっ?! 気持ちよさそう?! わ、私……ケロちゃんと……アレ、しちゃったの……?」

「うん、ギュウギュウに締め付けてきて、ちぎれるかと思った。(抱きしめられて)」

「ギュウギュウ?! 私って、入れられるとギュウギュウになるんだ……知らなかった……♡」

「うん、取り敢えず今度から別のベットにしようか。お姉ちゃん寝相悪すぎて、またギュウギュウに抱きしめられたらまた死んじゃうよ」

「…………ネゾウ」

「うん、お姉ちゃん寝ている間にボクをギュウギュウに抱きしめてきたじゃん。その話だよね?」


 ボクがそう言うと、白子お姉ちゃんは顔を真っ赤っかにして、唇をキュッと結び、瞳を濡らして羞恥に耐えたような顔になる。


「〜〜〜〜〜〜っっ♡♡♡ そ、そゆことか……あははっ、そーだよね……」

「お姉ちゃん? どうしたのさ」

「にゃっ! な、何でもないよっ! さ、さぁ朝ごはんを食べましょう。お姉ちゃんが使ってあげるから……」

「あ、お姉ちゃんっ」


 白子お姉ちゃんはやっぱり顔を真っ赤にして、スタスタとキッチンへと向かっていくのだった。女の人って不思議だなぁ。


 朝ごはんはお味噌汁と白飯、それから目玉焼きだった。白子お姉ちゃんの作る料理は初めて食べたけど、一言で言ってしまえば美味しくない。料理とかあんまりしないのだろうか。


「どぉ、おいし?」

「……えっと」


 白子お姉ちゃんはボクが食べている所を微笑ましそうに見ている。そんな顔されると、美味しくないなんて言えない。ああ、ファミレスのハンバーグは美味しかったのになぁ。


「ね、ねぇ白子お姉ちゃん」

「んー?」

「白子お姉ちゃんってお仕事大変?」

「なんで? ……まあ楽ではないけど」

「そっか、じゃあ……」


 家に住まわせてもらって。

 白子お姉ちゃんはお仕事して大変なのだ。

 だったらボクだって何かしたい。だからボクはこんな提案をする。


「今度からボクがお料理とか作るよ。お掃除も、洗濯もする」

「え……? で、でも」

「白子お姉ちゃんはお仕事大変でしょ? ボクにだって何かさせてよ」

「うーん……でも子供に家事させるのも」

「子供じゃないよ。元大人ガエルだもん」


 すると白子お姉ちゃんもとうとう折れたようで、少しだけ申し訳なさそうにこう言う。


「じゃ、じゃあお願いできる?」

「! うん!」


 それからというもの、ボクは家事について勉強した。洗濯物は一緒に洗っていいもの、ネットに入れれば一緒に洗えるもの、家ではなかなか洗うのが難しくて、クリーニング屋さんに頼んだ方がいいものがあると知った。お料理にも日本料理やフランス料理といった、各国発祥のものがあり、時代と共に世界中で広まったものがあると知った。ちなみにハンバーグが何料理なのかはよく分からないらしい。(タルタルステーキが起源と言う説もあるらしいけど)


「ただいまー。あ、いい匂いだね」

「おかえりお姉ちゃん! 今ね、夕飯作ってたの」

「ふふ、ケロちゃんはエラいね……可愛い」


 白子お姉ちゃんは家に帰るなり、ボクを抱きしめようとする。でも、また締め付けて苦しめるのではないかと思い、躊躇ちゅうちょしているようだ。


「お姉ちゃん」

「んー?」

「抱きしめるのはまだ練習がいるから、別のことしようよ」

「別のっ?! それって……」

「本で見たんだ。人間さんが好きな人同士でやること」

「なっ! それって……セッ」

「? 多分違う。えっとね、ちょっとかがんでみて」

「こ、こぉ?」


 お姉ちゃんがボクの身体ら辺までかがむ。

 ボクは彼女の頭に手を伸ばし、そして、


「なでなで」

「! ケロ、ちゃん……?」

「女の人は男の人になでなでされると気持ちいいらしいよ。どう? いい感じ?」

「っ、ぅ、ぁ……ヤバい……なでなで、ぅぅ」


 白子お姉ちゃんの髪は雪が解けたように真っ白で、手入れも行き届いていた。

 触っているといい香りもしてきて、そうすると何だかヘンテコな気分になってくる。

 

「何か、ボク……やっぱり変だ」

「へ、へん?」

「うん。またこの辺がカチカチに硬くなってて……痛いんだよね」

「……ケロちゃんってさ、赤ちゃんってどうやってできるか知ってたりする?」

「赤ちゃん? んーん、知らない」

「そ、そぉなんだ……カエルの頃とか、好きな人とか、できなかったの?」

「うん……大人になってすぐに死んじゃったしね」

「……ごめんね」

「いや、いいよもう。人間さんになれたし、ボクお姉ちゃんのこと大好きだし」


 お姉ちゃんを見ているとヘンテコな気分になる。身体の奥が熱くなって、ドキドキになるんだ。そうすると彼女ともっと触れたくなって、一緒にいられないと不安になる。お母さんや妹に対して感じる気持ちとは少し違う。きっとこれが『好き』ってことなのだろう。すごく温かくて、幸せな気分。


「お姉ちゃん」

「な、なに?」

「大好き」

「〜〜っ♡ わ、私も……ケロちゃんが好き……」

「どのくらい好き?」

「え、え? どのくらいって……」

「ボクはこのくらい!」


 両手をうーんと伸ばし。

 ボクは『好き』を表現する。

 まだまだ足りないけど、今のボクにはこれが精一杯だ。


「わ、私は……」


 お姉ちゃんは下を向いて。

 少し考えてから、やはり両手をいっぱいに広げ、


「これの10倍……いや、100倍、かな」

「本当? お姉ちゃんだいすきっ」

「わっ」


 堪らずボクはお姉ちゃんの胸元に駆け寄る。彼女ははぁはぁと呼吸を荒くして、指をわさわさと忙しなく動かしている。きっと強く抱きしめたいのだろう。なのに理性を振り絞って我慢している。結局彼女が選んだ殺さない愛情表現は、頭なでなでだった。


「ふへへ、お姉ちゃんなでなできもちいい」

「ケロちゃん……はぁぁ……っ、ぅ、ヤバい……ちっちゃい……かわいい……はぁ♡ 殺したい……はぁ♡」


 元白蛇と元カエルが同棲するなんて。

 きっと変なことなんだろうな。

 でも、人からどう思われたって、ボクは構わない。理由は分からないけど、ボクはお姉ちゃんが好きだし、もっとなでなでされたいと思う。だから、多分この先も幸せに生きていけるはずだ。


「お姉ちゃん、夕飯冷めちゃう」

「あっ……そ、そうだよね。食べよっか」

「今日ハンバーグ作ったんだ。お料理本見ながら作ったんだよ」

「そっかー。ケロちゃんはすごいなぁ」

「えへへ、お姉ちゃんも働いててすごいよ」

「あ、ありがとう……」


 白子お姉ちゃんはえへへと笑い。

 少し強めになでなでをするのだった。


 お料理をリビングに運び、夕飯を食べる。

 お皿にハンバーグを乗っけて、周りにブロッコリーを置き、綺麗な見た目にするのも忘れない。

 

「おいしい……ケロちゃんはお料理が上手だね!」

「そうかな。本を見れば誰でも作れるよ」

「誰でもは無理だよ……」

「うーん、そうなのかなぁ。はは」

「ふふふ、そうだよ」


 そんな風にして幸せな時を過ごすボクらだった。





 



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カエルショタと白蛇お姉さんのあまあま同棲日常物はいかが?♡ まちだ きい(旧神邪エリス) @omura_eas

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