第2話:同居する。そして一緒にお風呂に入る

「お腹空いたでしよ? さ、遠慮せずに食べなさい」


 時刻は夕方6時。

 ボクは白蛇女さんに連れられて、ファミリーレストランに来た。初めて食べるメニューばかりで迷うけど、正直お腹が空き過ぎて何でもいい。


「何がいいかな。お子様ランチにする? お腹ペコペコだから、スパゲティさんもいいかもね。ほら、何食べてもいいんだよ?」

「ボ、ボク……」


 複雑な気分だ。

 前世でボクを殺した白蛇さんにご飯を奢られるなんて。お母さんが聞いたらなんて思うかな。

 彼女を見る。紺色のキャリアスーツに身を包みニコニコ笑っており、何となく頼りがいのある大人の女性という雰囲気だ。

 取り敢えずボクは目に付いた美味しそうな食べ物を指さしてみる。


「ボク、ハンバーグ食べたい」

「ハンバーグね。いいよ、じゃあ注文するね」


 ヘンテコな丸っこいのを白蛇女さんが押す。するとしばらくして店員さんが現れ、彼女が注文をする。なるほど、正しい手順を踏めば店員さんもボクらを店から追い出さないでにこやかに対応してくれるようだ。


 しばらくすると注文したハンバーグが来る。どっしりしたお肉の塊の間で焦げ茶色の泡がブクブクと忙しなく立っている。

 鼻を近付けると食欲をそそられるいい匂いがして、ついヨダレが出てしまう。

 こんなのボク1人で食べていいのだろうか。不安になり、彼女に訊いてみる。


「食べていーの?」

「うん、いーよ。いっぱい食べて? お金ののことは心配いらないから……大丈夫、ちゃんと君か美味しそうに食べてるところ見ててあげる。君の幸せそうな顔、全部全部私が見ててあげるから、だから……お姉さんに食べてるところ、見せて?」


 何が大丈夫なのかは分からないが。

 白蛇女さんはにまにま笑みを浮かべてボクが食べるのを待っている。……毒とか入ってないよなぁ、これ。


 だけど我慢の限界だ。

 ここで食べなければ、確実に餓死する。

 ボクは皿に盛られているハンバーグを手で掴み食べようとした。だけど、


「あつっっ!!!」

「あ、ダメだよおててで触ったら。ナイフとフォークを使うんだよ」

「どうやって使うのこれ」

「ほら、手……貸して……?」


 白蛇女さんがボクの手を掴む。

 その青白い血管が浮き出ている手はやはり綺麗な形だし、色も白い。そうなると自分でもよく分からない気分になる。何だか下半身が熱くなって、モヤモヤするのだ。


「ナイフはこう持って……ハンバーグを切って……そうしたらフォークで刺して……ほら、食べてごらん」

「あーむっ……ん……、お、おいしい」

「〜〜っ♡ はぁ、顔かわいー……ハンバーグ美味しいね♡ 美味しいんだ♡ そっかそっか……♡」

「ありがとう! えっと、お名前は……」

蛇山白子へびやましろこ。白子って呼んで?」

「うん、白子お姉ちゃん」

「〜〜〜っ♡ やっっば、マジで食べたくなってきた……」

「? 今なんか言った?」

「いや、何でもないよー。さ、もっと食べて食べて? ゆっくり食べていいからね」


 そう言って白子お姉ちゃんはボクが食べているところをやはりにまにま笑いながら見るのだった。……うーん、謎だ。


※※※


「わぁ、広いなぁ」

「一人暮らし用に買ったのだけど、私だけでは広すぎてね。ケロちゃんが一緒に住んでくれるから大歓迎だよ」


 白子お姉ちゃんの家は広い割には家具があまりなかった。二桁ほどある部屋のほとんどが使われておらず、なんなら少し散らかっている。女の人の一人暮らしってこんなものなのかな。


「お部屋、汚い」

「はは……言われちゃった。綺麗にしようとはいつも思ってるんだけどね」

「ボクお片付けする」

「えっ、ケロちゃん……?」


 部屋が汚いのは嫌な性格だ。

 カエルだった頃も周りに食べカスやドロがあるのが何か嫌だった男なので。

 幸いにして一時間ほどで片付けがおわり、ボクはようやくスッキリする。すると白子お姉ちゃんは目を輝かせて、


「ケロちゃんありがとーっ! 大好き!」


 と言いながら、またボクをキツく抱きしめてきた。それこそ蛇が獲物を仕留めようと巻き付くように、ギュウギュウとボクを締め付けてくる。大きなおっぱいがボクの顔に押し付けられ、また窒息しそうになり、堪らず声を上げてしまう。


「お姉ちゃっ、くるしっ、いだだだっ」

「あっ、……ごめんね! 私、好きな獲物……いや、好きな人がいると殺しちゃうほど締め付けちゃうクセがあって……止まらないんだ……ごめんね……」

「っ、う、うん……大丈夫だよ。はぁ」


 死ぬほど苦しかったけど、白子お姉ちゃんが悲しそうな顔をしたから、責める気にならなかった。それに、ご飯も奢ってもらったしね。


「……ねえ、ケロちゃん」

「ん?」


 白子お姉ちゃんは太ももをモジモジして。

 何やら羞恥しているようだ。

 そうして彼女は一言、


「一緒にお風呂、入らない……?」

「お風呂? いいよー」

「え、いいの? そのっ、恥ずかしいとか……そのっ」

「?」


 一緒に水浴びするくらいで、何を恥ずかしがっているのだろうか。カエル時代の頃は数十匹の群れと一緒に水溜まりの中に入って遊んだ経験だってあるし、別に不自然な行為ではない。


「じゃ、服脱ぐね」

「わっ、ちょ、ここで?!」

「え?」

「〜〜〜っ♡ おっきい……」


 何かよく分からないけど、まあいいや。

 ボクは真っ裸になって、白子お姉ちゃんの手を引っ張り浴室へ向かうのだった。


※※※


「お姉ちゃんの背中洗ってあげるね」

「ふふ……ケロちゃんはやさしーなー」


 白子お姉ちゃんの背中をボクは洗う。

 ゴシゴシとスポンジで擦ってあげると、いい匂いの泡が沢山出てきて、何だか愉快だった。人間さんの道具ってふしぎー。


「お姉ちゃん肌綺麗だね」

「ふぇ?! そ、そかな……へへ」

「……あれ」


 彼女の身体を見ていたら、何だかおかしな気分になってきた。身体が火照ってきて、目の前のお姉ちゃんともっと触れ合いたいような、そんな気分。それに、さっきから下半身の一部がヘンテコになってるのも不思議だ。


「ケロちゃん……? どうしたの……?」

「いや、何かヘンなんだよね」

「変?」

「うん。ここが硬くなって、ピクピクしてるの」

「〜〜〜っ♡ そ、そうなんだ……そっか、ケロちゃん私で……なってるんだ」

「? どうしたのお姉ちゃん」

「い、いや何でもないよ! 気にしないで」

「変なのー」


 白子お姉ちゃんは真っ赤な顔のまま黙ってしまった。女の子って不思議だなぁ。


 そう思っていると、


「わっ」


 床に落ちた泡を踏んづけてしまい、ツルっと滑ってしまった。その衝撃で白子お姉ちゃんの背中にボクの身体が密着して、


「!!!♡♡♡ あっ、背中……おっきーの、当たって……♡ あっ……ぅぅ」

「ご、ごめんっ、痛かった?」


 硬くなった一部が白子お姉ちゃんの背中に当たってしまった。硬いからぺちぺちぶつけたら痛そうだし、これは危ないものだなぁ。


「だだ、大丈夫っ! ちょっとビックリしただけだから……えへへ」

「ヘンテコな硬いの背中に当てちゃってごめん」

「ケロちゃんのはっ……ヘンテコじゃないよっ? すっごく立派で……えへへ、食べたいくらい……♡」

「? 何の話?」

「なな、なんでもないよ? ……はぁ、やっぱりリードするの難しいなぁ」

「?」


 白子お姉ちゃんはため息をついて。

 大きなおっぱいを自分で揉んで、息を荒くするのだった。

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