第2話 溢れ出した記憶

 真宙は自分の名前を知っているこの見知らぬ少女について、全く面識がない。だからこそ、この状況に困惑するばかりだった。


「あ、やっぱり真宙には私が分からないんだね」

「いや、だから誰なの?」

「私の名前はぷりん。よろしくね」


 どうやら目の前の少女の名前はぷりんと言うらしい。見た目は真宙と同じくらいの背格好で、特にどこか怪しいと言うところは見られない。だからこそ、それが逆に怪しかった。

 なので、彼女はそれを確かめる事にした。


「私、あなたの事何も知らないんだけど、どこかで会ってた?」

「何言ってるの? あなたが私を呼び出してくれたんじゃない」

「え?」

「私もこっちの世界に来たかったから嬉しかったよ」


 このぷりんの言葉に、真宙はようやく自分が魔法陣を書いた事を思い出した。思い出したと言うか、突然頭の中にイメージが広がったのだ。強制的に見せられたと言う表現が適切かも知れない。

 あの時、魔法陣から強烈な光が発生して、そして――。


「あああっ!」


 溢れ出てくるイメージの洪水に、真宙は思わず頭を抱えてしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る