第15話

『地下神殿』。


たしかにその表現のとおりの場所だった。

鬱蒼とした森の地下に設けられた遺跡。

かつては、何らかの神を祭る神殿であったのかもしれない。

今は見る影もないけど。


『地下神殿』からは、とてつもない瘴気が漂ってきている。

同時に、すさまじい腐敗臭も……。

僕は、勇気を出して、『地下神殿』に足を踏み入れていった。


『ここのモンスターは、アンデッドばかりだから《ヒール》で攻撃できる』

タナカの助言に従い、ゾンビに《ヒール》をかけると、溶けるようにして消滅した。

やっと、白魔導士としての自分を活かせることができ、僕は少し調子に乗ってしまった。


『地下神殿』の中を進みながら、僕は、次々と《ヒール》をかけていく。

異常な数のゾンビやグールがいるので、《ヒール》を使う回数も半端ない。


意気揚々として進んでいたが、ある程度まで進むと、僕はいったん入口まで戻ることにした。

あまりにもアンデッドの数が多すぎて、MPが枯渇しそうになってきたからだ。


だが。

さっきまで進んできて道であるにもかかわらず、そこには大量のアンデッドの姿があった。

《ヒール》を打ち続けるうちに、とうとう僕のMPは枯渇してしまった。


まだ入口までの道は半ばだ。

だが、僕のMPは無い。

そして、モンスターの姿がそこにはある。


「う、うわあああああああああ」

僕は、腐肉に触れる拳に怖気を感じながら、ゾンビやグールを殴っていった。

くさっ!

腐肉が飛び散り、容赦なく異臭を放つ。

くせぇっっ!!


入口に戻ってくる頃には、僕の全身は腐肉まみれになっていた。

なんでこんなことに……。


明日からは、《ヒール》だけで戦うことを誓って、僕は川で全身を何度も洗ったのち、泣きながら帰宅した(服は臭すぎるので、道中で捨てた)。


翌日、僕は、両親や村中の人に「くさっ」と言われただけでなく、クロエにも眉を顰められてしまった。

泣きたくなった。

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