09 煌他 ENDmarker 3.

 水の波紋のような、波とともに。


 何かが、わたしのところへ。


「煌他さん」


 彼が。


「茉白さん。なんで、ここへ」


「来ちゃいました。どうやら、死んだみたいです」


 その言葉だけが、わたしの心を、ざわめかせた。


「なぜ」


「あなたに、逢いたくて」


「来ないで」


 あなたが、ここに来てしまってはいけない。


「あなたは」


「俺。あなたがいなくなると思って、ちょっとだけ、無理な仕事をひとりで受けたんです。もしかしたら、あなたと一緒に、いられる、かなって」


 来てほしくなかった。

 生きていて、ほしかった。

 わたしなんか、気にしないで。ずっと、生きて。


 彼に、手を伸ばす。


 彼の頬に。


 伸ばした手は。


 彼を、すり抜けた。


 この場所は、ここに存在しない。彼は、ここにいるけど、ここにいない。永遠に、交わらない線のなかにいる。


「どうして。ここへ」


「逢いたかったんです。それだけです。逢えてよかった」


 笑顔だけを残して。


 彼は。


 消えた。

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