第3話 茉白

「この前の仕事先。ついにお前の眼鏡に適う女性が現れたんだってな」


 同僚。


「ええ」


 仕事をしながらの雑談。


「よかったな。お前も幸せになれるぜ」


「ふたりでいることが、幸せだとは、かぎらない」


「達観してるな」


 同僚。たしか恋人が、同性異性含めて複数いるはず。


「そうだ。ふたりきりで、幸せになれるとはかぎらない。幸せが欲しいなら、自力で掴みに行かないとな」


 同僚が、煙草を取り出して、吸う。煙草の真似事をしているだけ。火も点けられない、ただのミント味の煙草型の何か。


「仕事中」


「いいだろ。煙草じゃねえし」


 ミントの匂い。心が落ち着く気がする。


「落ち着くだろ。吸うか?」


「いらない」


「そうか。まあ、ただのミントだしな」

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