第47話『大怪鳥ブレスベルグ』

なんかいきなり現れた。


恐らく魔法か何かだろう、ついさっきまで何もいなかったのにいきなり目の前にバカでかいトリ公が出て来やがった。外見は緑色した鷹だな。尾羽がカラフルだ。


インビジブルアンブレラに似たような魔法か?それにしてもユーレシアがここまで気づかなかったと言うのが信じられん。


そのトリ公に最初に気づいた金ピカが何やら言ってくる。


「この翡翠色の巨体と七色の尾羽、それに姿を自在に消したり現れたりする能力……信じられん。まさかコイツは大怪鳥ブレスベルグか!?」

「ブッブレスベルグ!?この深緑の大草原でごく稀に目撃されたって言われる伝説の怪鳥じゃないですかー!」

「………鳥?焼き鳥かしら?」

『マスター、あの鳥のモンスター。凄まじく高い戦闘力を備えています!気をつけて下さい』


金ピカがブレスベルグと呼んだトリ公はくちばしを開いて奇声を上げる。


ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!。


「クロエ!まさかあのブレスベルグを間近で目にするなんて!やはり私の目に狂いはありませんでした、アカシアさんと一緒なら絶対に素晴らしい冒険が出来ると思ってました!」

「姫様!今はそんな事を言っている場合ではありません、後ろに下がって下さい!ブランニーシャ様!姫の護衛を!」


姫さんと付き人の黒すけもテンション高いな、まぁ他のも似たようなもんだ。


『セレンも……がんばる……』

「落ち着け、空の上で俺らに出来る事なんてないよ……」


ここはチートメイドに丸投げしかない、俺達雑魚に何が出来るってんだ。

それ見ろ、ウチのメイドが突撃したぞ。


「この私に恥をかかせるとは、流石はここのエリアボスと言った所か!しかし図に乗るなよトリ公がぁああっ!」

「…………へぇっあの鳥ボスなのか」


ユーレシアがトリ公に立ち向かう!。


しかしそのせいで俺達を乗せたデカいカゴを持つヤツがいなくなって落下をしだしたぞ。


「あっやば……」


やばっじゃねぇだろ!おいっこのバカメイドが!。


落下する俺達を見てユーレシアが硬直した、その瞬間の出来事であった。


あのビッグなトリ公、殆ど瞬間移動みたいな早さで何故かこっちに来やがった。そしてそのまま…。


ガシッとそのデカい脚でキャッチされた俺。


「……………マジかぁ~」

「わわわっ!私、捕まってしまいました~!」


………っと姫さんである。トリ公はそのままもの凄いスピードでユーレシア達を置き去りに空をかっとんで行った。

そして背後のユーレシアは何故か魔法を発動しようとして失敗していた。


「ッ!?ユーレシアさん!」

「チッ魔法による不可視の妨害かっ!トリ公の分際で……」

「姫様!?そっそんな……」

「落ちるわぁ~」


背後に何やら声が聞こえた気がしたが、俺にはなんと言っているのか聞き取れ無かった。


◇◇◇


気がついたら気絶していた、俺はゆっくりとまぶたを開いた。


「………ここは?」

「起きましたか?アカシアさん」


隣を見ると姫さんがいた、そして目の前には俺達をさらったトリ公である。


「………どうやら寝ているらしいな、寝息が聞こえる」

「はいっけどここは?」


俺達がいるのは回りを岩の壁に囲われた場所だ、足元には藁が敷かれている。そして上を見るとかなり上の方に大きな穴があった。


「多分ここはあの鳥のモンスターの巣だな、上を見ろよ穴があるだろう?あそこから出入りしてるんだろうな」

「聞いた事があります、大怪鳥ブレスベルグの巣はこの『地下世界』の何処かにある恐ろしく高い山の手山頂だと」


何処にあるかわこらないのに恐ろしい山なのは確定なのか?なんか怪しい話だな……。


「山頂?ならあの穴は山のてっぺんにでも空いてんのか、どうする?俺達人間じゃあ魔法でも使わなきゃあ空は飛べない、しかしこの『地下世界』だか『迷宮大陸』だかじゃあ空を飛ぶ魔法は使えないんだぞ…」


お陰でウチのプレアの存在価値がワンランク下がったんだぞ?そして元から空を飛ぶ魔法なんて使えない俺だ。


「そうですね、それにここでブレスベルグと戦っても勝ち目はありません、あれは国の軍隊を壊滅させる事すら容易に成せる存在だと伝えられています」

「……マジか?過去にコイツが暴れた事でもあんのか?」

「いっ言い伝えでの話です」


そう言う又聞きした話を事実の様に話すなよ、ネット情報をさも目にしてきた事実の様に喋るどこぞのブラック企業の七光りを思い出して不快になったわ。


「まっこんな化け物とケンカしようとか有り得ないってのには同意だ、何とかここから逃げなきゃだが……」


くそっせめてセレンが居れば脱出も不可能じゃないのに、それかインビジブルアンブレラでもあればせめてこのトリ公から身を守る事くらいなら出来るはずなのに………って。


「ヤバイ……俺、いまなんも出来ねぇぞ?」

「………………え?それはどう言う事ですか?」


不味い、不味いぞこれ。セレンもインビジブルアンブレラもない俺はただの三十路リーマンっいや最早社畜ですらなく、冒険者としての能力も何一つ磨いてこなかった俺は………ザコモブ以下の存在だ。


どうすんのこれ、姫さんも巻き込んで本当にどうすんだよこれ。


そんな時に、あのアナウンスが聞こえた。


『プレイヤーを確認しました。プレイヤーを確認しました。これよりダンジョン【怪鳥の箱庭】を起動します』


……………え?。


何やら違和感を感じた俺は背後を振り返る。


あるのは岩の壁だ、それだけなのだが。


「アカシアさん?どうかしたんですか?壁に何か?それとさっきの言葉は」

「気にすんな、それよりも……」


俺は壁に近寄る、トリ公はまだ寝てるな。起きてくるなよ?俺は壁を軽くコンコンとした。


すると壁の一部が崩れた。

音も無く崩れた、そして人が1人ずつなら何とか通れそうな道が現れたぞ。


何というか………どうすんのよこれ。


「あっアカシアさん!これはまさか……」

「冒険者の俺には分かる、コイツはダンジョンへと続く道だ」

「ダンジョン!?私始めて見ましたよ!」

「………中はモンスターの巣窟だ、それでも行くか?」

「当然ですよ!ここに居てもいつあの大怪物のお腹に入る事になるのかを心配するだけじゃないですか」


全くもってその通りだな。


こんな化け物の相手とか嫌だ、ならここに逃げ込むしかない。ってか冒険者の俺には分かるって何だよ、何も分かる訳ないだろ。


内心自分にツッコミながら俺と姫さんは新たに現れたダンジョンへの道を進むことにした。






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