第46話『メイドの翼』

なんちゃってキャンプの姫さんとレイナ達、そして車中泊で夜を明かした俺達。

朝日が昇り、一日の始まりを知らせる様な光を感じる。


しかし日が昇った現場では言い争いが勃発していた。


「ふざけんなよ!マジでこっから二ヶ月も掛けてダンジョンに行くってのか!?帰ろうぜーー!」

「何を言ってるんですかアカシアさん、冒険者の冒険が日帰りな訳ないじゃないですか。これまではユーレシアさんがいないからって事で遠くに行く依頼は受けませんでしたけど…」

「そうよねぇ~」

「甘えるな貴様……」


チクショウが、そうだよ言い争いって言うか俺が四面楚歌だよ。


俺はただ楽をして金持ちになって気まぐれに観光レベルの冒険をしながら日々を過ごしたい男なんだぞ。


「けどな、二ヶ月だぞ?往復四カ月だぞ?そんな長期間も姫さん見たいな王族を俺ら見たいな冒険者が護衛しながら移動するってのか?ダンジョンに挑むってのか?」

「そっそれは……」


この辺りはマジで重要。俺とユーレシアとプレアそれにセレンなら愛着も何もない国なんて速攻でおさらばしても良い、しかしレイナとフリーネはこの国が生まれ故郷何だって世間話をした時に聞いたんだ。


万が一にも国賊になんてしたくないと思う、三十路リーマンの俺と違って将来有望な2人だからな。


………まぁんな事は口にださんがな。


そんな俺の言葉に黒すけが口を挟む。


「姫様が足手まといだとでも言うのか?姫様の剣技はそこらの冒険者などに遅れを取ることはない」

「むうっクロネと私は強いんですよ?護衛ではなく冒険を共にする仲間として扱って下さい」


むくれる姫さんはまさか遊び感覚じゃあないだろうな?モンスターとかバリバリ出て来んだぞ?。


「仕方ないな、相棒ここは私に任せろ!」


ユーレシアが大見得を切った、一歩前に出る。


「おいっプルプルのセレンとやら、お前の力も貸すんだ。私が説明する物になれるか?」

『……?……何に……なる?』


俺の胸ポケットからセレンを取り出して、1人と1匹は何やらヒソヒソと話し始める。


そしてセレンが何かに変身しだした、それは……。


「これっデカいカゴか?…」

「そうだ、この人数が乗れる大きさのヤツだから自前で用意するのは面倒だったが、あのスライムモドキがいたからな、手間が省けた」


それは確かに大きなカゴだった、大人が十数人くらい入れそうなヤツだ。そして上の方には掴める所もあるな。


「全員これに乗れっああポンコツは亜空間の戻れよ?全員が乗ったら私が運ぶからな~」


ウチのメイドはドラゴン見たいな翼を生やして空を飛べる、もしかするとヤツは本気を出すと本物のドラゴンになったりするのかもな、まぁその辺りはプライベート的なヤツだ。ユーレシアの方から何か言うまで俺は何も聞かない。


俺を含めて全員がカゴに乗るとユーレシアは普通に背中から翼を出した。


当たり前だが姫さんや黒すけは腰を抜かした。それを俺やレイナや金ピカがなだめる。


その様子を眺めながらニマニマしているドラゴンメイドは空を飛んだ、何でも魔法じゃなければこの『迷宮大陸』でも普通に空を飛べるんだそうだ。


そう言えば小さな小鳥とかが普通に空を飛んでいた事を今更になって思い出した。


ユーレシアは飛ぶとカゴの上にある掴む所を掴む、そして普通に飛んだ。


「よーしっこれならかなり時間を短縮出来るぞ相棒、どうだ!」


どうだって言われても、出来れば俺は姫さんにご退場願いたいのだけど、そして帰りたいのだが……。


しかし空に上がれば障害物も何もない、ユーレシアによるとこの方法で移動すればかなり時間を節約出来るそうだ。


「よしっスピードを出すからな?気をつけろよ?」


ん?今のままで良いんじゃないの?。俺のそんな本音を言う前にバカメイドは加速した。


◇◇◇


空の旅を開始して数時間後、俺達はカゴの中でぐったりしていた。

理由は何処ぞのメイドが軽く音速を超えて空をとんだらからだ。


「なんだなんだ?その体たらくは、情けないぞ~?」


コイツ分かっていて煽ってきやがる、ムカつくわ~。しかしこの中で1番強いこのチートメイドに意見出来るヤツは誰もいない。


「ユーレシアさん!いきなりスピードを出さないで下さいよ!」

「ビックリしたわぁ~」

『相変わらず加減を知らないエセメイドですね』


うんっそんな事なかったわ、どいつもこいつも好き放題言ってるな、それで良いよ。


これから俺達は冒険者達が集まって作っていると言う村に行く。


何でも遠いダンジョンまでの道程の中継地点として小さな村を冒険者達が作っているんだそうだ、そこの設備(調理場や建物)の整備や清掃も冒険者がしていて、その手の知識を持った冒険者が金をもらってその中継地点の村々を回っているらしい。


そんな中継地点の村はモンスターに荒らされない様に常に数人の冒険者が住み込みで警備するクエストなんてのも確かに以前目にした記憶があるな。


………まぁ色々ごちゃごちゃ言った俺だが冒険自体には乗り気なのは本当なんだ、色々と面倒くさそうな案件がこないか心配なだけでな。


「ハァ~わかったよ、ダンジョンに行けばいいんだろ?行くよ行くよ行きますよ!。推奨レベルより格段に低いレベルでのクリアとかどんだけしんどいか覚悟しとけよおたくらぁっ!」

「レイナ~、アカシアがまた変な事を言ってるわぁ」

「フリーネ気にしたら負けよ、アカシアさんは不貞腐れるとよくあんな事を言ってるじゃない」

「クロネ!私も翼を持ったメイドが欲しいです!」

「あれはメイドではありません、見た目だけですから。お諦め下さい」


……ん?セレンを俺から奪ってツンツンしていた金ピカが明後日の方を見て固まってる?。


「おいっ金ピ……ブランなんとか、どうかしたのか?」

「…………もっ」

「も?」


金ピカが此方に向き直り大声で吠えた。


「モンスターだ!それもかなり巨大な!空をとんで来ているぞ!」


あ?そんなのがいたらユーレシアが……。


「……ちっまさか魔法で姿を眩ませていたのか?それとも気配を消して?」

「ユッユーレシア?」


何やら不穏な言葉を口にするチートメイド。


折れの目には何も見え……。

その時、静かにはばたく様な音が聞こえた。


「……………なっ!?」


一瞬、ほんの瞬きの間に俺達の目の前に、巨大な鳥が現れた。















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