第41話『勝ち組冒険者』

そして姫さんに案内されるままにデカイ屋敷の広い庭に行き着いた。


芝は手入れされており真ん中には噴水とかある、小学校の敷地くらいは余裕でありそうな広さだ。


そんな広い中庭にさっき会ったばかりのラーゲイン伯爵と……ついさっき冒険者ギルドで見掛けた連中がいた。


マジかよ、連中はあの金髪のイケメンが率いるハーレムパーティーじゃねぇか。

ダンジョンでの大発見から始まり元から数多の功績を上げてるらしい若手冒険者のホープって話を聞いた。


いわゆる勝ち組冒険者ってヤツだ、俺の嫉妬心が火を噴きそうになる。


チクショウ、俺の回りにはチートだけど言うことなんて聞かないアホメイドを始め、駆け出し冒険者の二人組とか喋る車や銀色のプルプル。挙げ句に強いのな弱いのかよく分からん金ピカや黒すけや姫さんとか、変にキャラが濃い連中しかいない。


俺は、普通に俺を尊敬して、甘やかしてくれるタイプの美女ばっかのハーレムパーティーの主になりたいんだぜ?男の本音はそうだろう?。


ハーレムになったのはたまたまでっとか成り行きで仕方なく……見たいな感じをこれ見よがしに出してくるラノベの男主人公に殺意を抱いた事がある男には分かる筈だ!。


俺が嫉妬に狂っていると、向こうの貴族のおっさんとイケメンが会話をしているのが聞こえた。


何だ?何を話してんだよ、レベルが上がって聴力が増した俺は地獄耳だぞ。


「ラーゲイン伯爵、僕達はあのダンジョンの扉を開く鍵が貰えると聞いてきたんですけど…」

「すまないね、カイン君。どうも向こうの冒険者の男が随分と強情でね、鍵は自分で使うからと言って聞かないんだよ、冒険者として殆ど名も聞かないレベルの駆け出しの筈だから『巨壁の神殿』の危険度も碌に分かっていないんだろう」

「なる程、つまり彼から鍵を取り上げるのが彼の為にもなるんですね。それを聞いて安心しました僕も力ずくで鍵を奪うのは気が引けると考えてましたけど、あのダンジョンに実力がない冒険者が行くのは自殺行為ですからね…」

「そう言う事だ、時間の無駄だろうが少しもんでやってくれ」


………随分とまあ好き勝手な物言いをしてくれてんなこのハゲどもが。


本当は鍵とか出すもん出せばとっとと八百長でもしていいかと考えてたが、予定変更だコラッ!このクソイケメンがぶっ殺決定だぜ。


俺は聞こえなかった風を装い、話し掛ける。


「……ん?その子供達が相手何ですか?なら武器とかはそこら辺の木の枝とかを探してくる所から始めるんですか?」


「レイナ、レイナ、彼が木の枝を拾ってくる様にと言ってるから拾って来て良い?」

「落ち着いてフリーネ、あれはただ挑発してるだけだから」


そして俺の言葉に無言となる貴族のおっさんとイケメン、まるで聞こえなかった様な大人な対応だ。

まぁ鍵はこっちが持ってんだからここで下手に上から行けば俺達が帰ると思ってんだろう。


そうっハッキリ言うが立場はこっちが圧倒的に上なんだよ、鍵を渡す渡さないの選択肢はこっちが持ってんだからよ。


俺の挑発に無言ながらも殺気を込めた視線を向けるのはローブっ子とオレッ子だ。


こりゃあ戦闘が総力戦なら速攻で俺を潰しに来そうである、まぁいいけどなっ少なくとも他のパーティーメンバーが狙われたら俺には何も出来ない。


俺に出来るのはこうやって事前に挑発でもして囮にでもなるくらいだ、アーーッ俺にもチート能力とかくれよ。


ユーレシアがチート能力の1つでも貸してくれたらなぁ。


そして姫さんと貴族のおっさんが並び、今回の鍵を掛けた戦いのルールについては語られる。


勝負はそれぞれ3人のメンバーを選抜の上に行われる1対1サシでの一本勝負。


殺しはNG、けど武器も防具も本人が持ち寄った物でO.K.とか言われた。


範囲はこの中庭の中だけ、外に出たら失格。


降参はあり、降参しないなら気絶させてしまえば勝ちでO.K.らしい。


と言った感じである、正直剣道みたく一番手がやられるまで出て良いとかならユーレシアを出せば終わるんだけどな。


そして既に向こうのメンバーは決定済みらしい、屋敷に来た時に武器を預けたりと言った異世界での貴族関係のお約束が無かった事に気付くべきだった。


てっきりこちらを駆け出しの雑魚だと思っての対応だと思ってた。


しかしせめて装備の有利不利くらいは無しにして欲しいんだけどよ。


いやっ普通そう言うのは無くすよね?なんで普通にそんな真似をしてんの?伯爵が向こうについているからか?ユーレシアにあのイケメンを酷たらしく血祭りにしてもらって全て終わりにしたくなってきた。


あの姫さんにしても、ワザワザ任せておけと言っておきながらこの体たらく、ある意味信じられねぇ……。


そして武器も防具もショボい俺達はやたらとキラキラした装飾過多な武器と防具を着込んだ勝ち組冒険者と勝負する事になった。


一応挨拶をって事になったのだが、俺の挑発の影響か、向こうのメンツからは一言も無かった。


こちらはレイナやフリーネと言ったコミュニケーション能力が高い連中は挨拶くらいはしていた、ユーレシアはニマニマしているだけだった。

ヤツは何が楽しいのだろうか。


俺?俺はイケメンにくたばれと言う視線をずっと向けていたよ、イケメンに苦痛を。


そしてなんやかんやと貴族のおっさんが言っていたが、全て無視して勝負のはじまりだ。最初にうちのパーティーメンバーから出ることになったのは……レイナであった。


俺は最後でユーレシアは二番手、最初に出るヤツはレイナとフリーネのどちらかと言う事になったのでジャンケンで決めた。


そして勝負となった訳だが……。


ドドドドドドドドドドドドッ!。


『さてっ向こうはあの大盾の女性が一番手に出て来ましたね、それでは行きますよレイナさん』

「……あの、これは反則では?」


「…………オイッ何だその鉄の箱は!?そんなのを出すなんて聞いてないぞ!」


向こうの盾女が何か言ってる、俺はただレイナが出ることになったので、プレアをレイナの装備として呼んでそのまま乗車してもらっただけなんだけどな。


まぁプレアはずっと亜空間にいて、向こうは存在すら知らなかったのだろうがな。


駆け出しが勝ち組冒険者と戦うと言うんだ、これくらいのハンデはなくちゃなぁ~(笑)。






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