第39話『貴族の屋敷にて…』
そして話に聞いたラーゲイン伯爵の屋敷に向かった、セイージュの街にある建物の中でも一等に立派な屋敷である。
まっ街の領主様の家なんだから当たり前だがな。
西洋的なデカイ門を越えて、入口に立っていた執事的な白髪じーさんに名も知らない兵士が一礼して案内役をバトンタッチ。
その執事じーさんの案内で広めの客間に俺達は通された。
あっちなみに来たのはパーティーメンバー全員である、きっと貴族の屋敷とか行ける機会も滅多に無さそうだから観光気分でついて来たに違いない。
何故なら俺も……観光気分だからだ!。
前々からこのデカイ屋敷は中に入って探検してみたいなとか考えていたのだ、何しろ俺がいた前の世界で海外旅行のパンフレットに載ってそうな実に立派な屋敷だったからな。
そんな屋敷にて俺達を待っていたのはブロンドヘアーを刈り上げた美丈夫、歳は四十路中頃のおっさんが高そうなソファーの真ん中に座っていた。
俺達も椅子に座っているぜ。
この顎髭もブロンドのおっさんがラーゲイン伯爵だそうだ。
「突然の呼びつけに応えてくれて礼を言うぞ、勇敢な冒険者達よ…私はラーゲイン=サー=ライングリッド。このセイージュの街を治める者だ」
鋭い眼光のおっさんだな、キャリアを重ね出世街道まっしぐらな人間が纏う独特な勝ち組のオーラを発している。
社畜の時の経験則から言うと、この手合いは人間を自分の尺度だけで価値が有るか無いかを判断するタイプの人間の可能性が高い。
「君達を呼んだのは他でもない、何でも先の大発見があった『巨壁の神殿』、そこで得体の知れない巨大な扉が発見されたのだが……」
やっぱりな、この手の人間は話が早いんだよ。
こっちも話しは早い方がいいから構わないんだがな。
「とある筋から……その扉を開ける鍵を君達が持っていると言う情報があったんだが、心当たりはないか?」
「………ありますよ?」
ここで嘘を言っても時間の無駄だろ。
ならさっさと話を先に進めるのに協力しようか。
「素直だな、ならばそれを此方に渡してくれる気はあるかね?」
「ありません。私達は冒険者です、自分達自身が冒険の地に挑む為に手に入れた物を手放す訳がないでしょう?」
言って俺は当たり前の様に席を立つ。
すると執事のじーさんが無言で出口の前に立っていた、ハァッ……話はこれでお終いにして欲しいのだが。
こっちもその扉のあるダンジョンに向かうために用意する物が沢山あるんだよね。
「……………話がまだありますか?」
「無論、無理を言っているのは此方だ。多少の譲歩をする用意もあるのだが?」
「冒険者が冒険をする権利を譲るとでも?」
流石にここで金で鍵を渡したら、後でパーティーメンバーに何をされるか分かったもんじゃない。
ここは貴族が相手でも強めに出るぜ、何しろこっちにはユーレシアがいるからな、あのメイドが城で何をしたか知っているのならバカな真似はしない筈だ。
バカな真似をしてもあのチートメイドなら何とでもしてしまうんだろうしな、虎の威を借るキツネで結構、俺はそんな人間だからな。
「…………そうか、出来れば金貨百枚ほどで話を治め」
「治めてもいいかもしれま」
俺が言葉を言い終わりきる前にレイナが腰に掌底をかまして邪魔をしてきた!。
何すんだよ!金貨百枚だぞっ!?。
俺がレイナと争っていると、いきなり屋敷のドアが蹴り開けられた様に開く。
バタンっとおもいっきり開くもんだから執事じーさんがビビって前のめり倒れ込んだぞ、大丈夫かよじーさん。
そしてドアから現れたのは……。
「話は全て聞きました!その話私が預かりましょう」
年頃は高校生低学年位の金髪碧眼の美少女が立っていた。左右には黒ずくめの女と金ピカの……何やってんだよあの女は。
この娘には覚えがある、以前この国のお城にお邪魔した時にコソッと覗いた部屋にいたお姫様だな。
外見は正にお淑やかな感じで身体のラインも慎ましい感じのお子様だ。
しかしその瞳には何やら力強い光をたたえている、恐らく騒ぎの火種を見つけるとテンションが上がるタイプの女の子なんだろう。
面倒毎を運んで来るのが仕事みたいなヤツが、よくそんな性格をしているよな。
端から見るとお姫様な彼女も、中身はあれなのかも知れないっと俺は少し不安になった。
「あの~預かるって事は、つまりどうなるんですか?」
相手はお姫様だ、下手な言葉遣いは出来ないが話を聞かない事には始まらない。
するとお姫様は俺を見るとハッキリとした口調で話す。
「アカシア様っで名前はいいんですよね?私はフローラ=ハインツ=グラントリア。王族に連なる者です、まぁ継承権は一応ある程度の者なのであまり気にしないで下さい」
「はっはぁ……」
「ここは私がラーゲイン伯爵と話をつけます、悪いようにはしませんので安心して下さい」
そう言うとフローラ姫は伯爵の方に歩いていく、黒ずくめの従者もついて行き代わりに金ピカ騎士がこちらに来た。
「アカシア、話があるだろうがここは姫に任せて欲しい」
「まぁ悪いようにはしないって言ってたし信じるけど、一応話は聞かせてもらうぞ?」
「分かった、なら場所を変えよう……」
場所を変えるってこの屋敷は俺のじゃないんだけど、すると復活した執事じーさんが別の部屋に案内してくれると言われたので移動した。
後ろでは貴族のおっさんと十代の美少女が面と向かって何やら話し合いをしていたが、取りあえず金ピカの話が優先だ。
そして連れて来られた部屋はさっきの客間よりも随分広い、数人の人間でも広々と使える部屋である。
レイナは部屋の豪華さに圧倒され、フリーネはテーブルの上のお菓子をハムスターが如く食べている。
ユーレシアはソファーに座って生意気にティーカップで茶をしばいているしセレンは俺の頭の上でプルプルしている。
俺は椅子に座って金ピカ騎士ことブランニーシャと向かい合う。
「……それで?一体何が起きてんだ?俺が鍵の事を知ったのはついさっきだぞ、その情報がなんで貴族のおっさんに…」
「ああっそれについて先ずは……」
『ますた…ますた……セレンお腹……すいた』
「ん?ああっそうかならそのテーブルのお菓子を……」
って!フリーネがお菓子を全部食ってるだと!?。
「コラッ!フリーネ!食べ過ぎだ、少しは残せよな」
「モグモグ、ゴックン………断るわっ!」
この大食い魔導師がぁッ!。
俺がフリーネに怒りの視線を向けていると金ピカが懐から一口サイズのお菓子を取り出した。
「ほっほら、コレを食べるといい。美味しいぞ」
『……ありがと……食べる…』
セレンはプルプルとテーブルに移動して金ピカが置いたお菓子に向かう。
俺はそのお菓子も奪おうとする空腹魔導師を押さえつける。
凄まじい抵抗だ!レイナと2人掛かりで戦うが食い物がかかったフリーネは強敵だ!。
『………おいしい』
「………………」
(…………かっ可愛い)
俺達の戦いを余所に何故か金ピカ騎士はホッコリしていた。
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