第38話『出発前に……』
「オイコラちょっと待てふざけんなよオイッ!」
俺はユーレシアを連れて冒険者ギルドを脱出。
俺達が泊まっている宿屋の一室に俺とユーレシアにレイナとフリーネ、俺の懐にはセレンがいる、プレアは別の空間から声だけである。
そんないつものパーティーでも人数がいるのでそこそこの広さの部屋が多少狭く感じる。
そんな部屋にて俺はユーレシアに詰問していた、ってか何でコイツはニマニマしてんだよ。
「だからさっき説明したろ?あの相棒に渡した鍵、あれが他の冒険者達が探している、そのダンジョンの深部で発見された扉を開く鍵なんだよ」
『マスター、やはりこの女は我々に話していない情報が多すぎなくらいに多いと考えます。早急に全てを吐かせるべきです』
プレアの言い分には一理ある、っいや百里くらいあるんじゃないか?。
しかし俺は話す気がないヤツに無理矢理話させるのは嫌いなんだよ。
「ユーレシア、つまり俺が今持ってるこの鍵、コイツがあるからその『巨壁の神殿』とかって言う高レベルな冒険者が出入りするダンジョンに行こうって言うのか?」
正直それは危険過ぎだぜ?以前のダンジョンは殆ど無理矢理な展開で入る事になっちまったけど、流石に駆け出し冒険者のレイナとフリーネに駆け出し以下の雑魚リーマンがいるパーティーだ。
そんな当たり前の様に危険に飛び込もうと誘われても気軽にはいはいとは言えないんだよ。
しかしユーレシアの答えは変わらない。
「もちろんそうだぞ相棒、いいか?今相棒の手の中にはこれまでの冒険者が誰一人として踏み入れた事がない未踏の場所に続く扉を開く鍵があるんだぞ?そんな物を持っておいて何故行くことを躊躇するんだ?」
………未踏の場所に続く扉ねぇ、まるでその扉の先に何があるのか心当たりがありそうな発言だよな。
少なくとも扉を開けたけど、予想以上にショボい小部屋でした~ってオチは期待出来なさそうだ。
間違いなく、このニマニマメイドがニマニマしてしまう何かがあるに違いない。
ならばここは年長者、三十路野郎としてレイナとフリーネをパーティーから外してこのバカのアホな真似に巻き込まれ無いようにすべきなのかも知れない。
「そうだな、なら先ずはレイナ、フリーネ。おたくらはどうするかを聞いてもいいか?」
この2人もあのバカメイドのバカな部分は理解しているだろう、ならここで2人の意思を確認するのだ。だって後から無理矢理連れてこられたとか言って来たら………俺は拳で答える所存だね。
「もちろん行くわぁ~」
……………は?。
「アカシアさん!そんなの行くに決まってるじゃないですか!」
「はぁ~~~ッ!?」
なっ何でだよ!?こんな明らかに面倒くさそうな案件に何を嬉々として飛び付こうとしてんだよおたくらさぁ!。
「おっおたくらよぉっ!少しは考えろよ!このバカメイドが言い出した事だぞ!?絶対に!絶対に禄でもない事になるに決まってるだろ!?」
「何を言ってるんですかアカシアさん!冒険者になる人間にとって誰も行った事がない場所に冒険しに行くなんて名誉に憧れない冒険者はいませんよ!」
「……………!?」
俺はレイナの力強い言葉に1つ思い出した。
そもそも俺だって三十路で冒険者になるなんて戯れ言をのたまう様な男だ、その心には大人になれない少年ハートと言う名の冒険心がある。
レイナの言葉にそんな心が反応する。
「………プレア、セレン。おたくらはどう考える?」
『私はマスターが決めた事に従います』
『セレンは……ぼうけん…する』
うーん、プレアは相変わらず、セレンは素直に行きたいか。
正直に言えば俺もこの世界に来て冒険者なんてのに成りたいとか考えちまう人間だから、チート能力の1つもあればヤレヤレ~仕方ないなぁ~っとかあのムカつくラノベ主人公的なノリで行くのもアリだと考えるんだが……。
どう考えても俺が足を引っ張りまくる未来しか想像出来ん。
ここはこの鍵を、あのいけ好かないイケメンパーティーにこっそり渡して後は頑張ってもら…。
「ちなみに相棒。既にこの事は地上の王国でも話題になっていてな?その未踏の場所にて大きな功績を収めた冒険者パーティーにはそれ相応の報酬が出されるなんて話も私は聞いてきたぞ?」
「よしっ!俺達がその未踏の地に最初に足を踏み入れる冒険者パーティーだ!行くぞお前らぁああああああああああっ!」
俺は誇り高き冒険者。未知の世界が待っているのならそこに向かって突き進むのが三十路冒険者の性ってヤツだぜ!。
俺の号令に他のパーティーメンバーも次々に答える。
「未踏の場所にはどんな美味しい食べ物があるかしらぁ~」
『フリーネさん、食べ物があるかは分かりませんから』
「私の剣でどんなモンスターが来ても切り裂いて行きますよ!」
『セレンも……切り裂く……』
『レイナさん、セレン。未踏の領域では細心の注意が必要だと思います、出来ればイノシシみたいな行動はやめた方が……』
「一々水差しが好きなポンコツだな、私がいれば全て大丈夫に決まっているだろう!」
『黙りなさいバカメイド』
ふっ……どいつもこいつも……これでこそ冒険者って感じる俺はおかしいのか?まっどっちでもいいか。
「よーしっここからはスピード勝負だ!ライバルが増える前にコソッと出てコソッとその扉に向かうぞ!」
「そのダンジョンまでの道程を考慮した旅支度が必要だな、相棒急ぐにしても出発まで時間を…」
ユーレシアがそこまで言った時である。
「オイッ!そこの冒険者!……冒険者?変な格好したオヤジとメイド?」
「言われていた通り変な連中が集まった冒険者パーティーだな!」
なんだよコイツら、いきなり現れて好き放題言って来るな、現れたのは鎧を着込んだ兵士と言った外見の男達である。
「アカシアさん、あれはラーゲイン伯爵様のところの兵士さんじゃないですか?」
「ラーゲイン伯爵?誰だよそれ」
「この冒険者の街セイージュを治める貴族ですよ、当人も冒険者だった過去があるらしくってこのセイージュを治める領主が必要な時に真っ先に手を上げた人だとか……」
レイナの説明を受けた俺、そしてそのラーゲイン伯爵さんとやらの兵士達が喋った。
「何でもお前達が持っている鍵がどうとか……とにかくあるお方がお前達に用があるらしい、我々と一緒に来てもらいたい」
「……………」
出発前に……変なイベントが入ってきたっぽいな。
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