第37話『鍵?俺が持ってるアレか?』

その日、冒険者の街セイージュにダンジョンで大発見をしたと言うウワサで持ちきりだった。


未だにユーレシアは戻って来ずに数日が経過した、俺達は楽だけど金にならないクエストで飯代を稼ぎながらあのバカメイドを待ったのだが……。


「もう限界だ、あのバカを待つのも……レイナそろそろもう少し金になるクエストを受けないか?」

「私とフリーネは良いんですけど、ユーレシアさんが居ないとモンスターがアカシアさんに向かった時に助ける人が……」


コイツ、人がまともに戦う能力失ったからって好き放題言いやがって!。

ちなみに少し前まで俺の戦闘手段だったインフィニティナイフはセレンと言うメタルっぽいスライムっぽい何かになってフリーネのヤツにツンツンされている。


「俺にはインビジブルアンブレラがある、コイツでおたくらが戦ってモンスターを倒す間は安全にいれると思うぞ?」

「何を一切戦闘に参加しない事が当たり前見たいに言ってるんですか……セレンちゃんが自分で戦える様になったんならアカシアさんは自分で武器を使って戦えば……」

「この歳で武器の使い方とか覚えるのシンドイわぁ~何より俺は遠くから一方的に攻撃出来るのが良いんだよ」

「なら魔法が良いと思うわぁっ!」

「フリーネ、魔法を覚えるのは大変でしょ?武器の使い方を覚えるのが面倒とか言ってる人には無理だと思うわよ?」


なんか俺の評価が下がり続けているな。


「……やはりユーレシアさんが居ないと難易度が高いクエストは控えるべきですよ、もしアカシアさんに何かあったら私達がユーレシアさんにもの凄く怒られそうですし」


ハァッ所詮は駆け出し女冒険者二人と三十路リーマン、それに軽自動車とプルプルと言う謎パーティーだ。


主戦力がメイド1人なんだから仕方ない話なんだがな……。


「………アカシアさん、何か失礼な事を考えてませんか?」

「何も考えてない」


そんな会話を冒険者ギルドに併設された酒場で椅子に腰掛けながら話していた時である。


「おいっ!カインのパーティーが『巨壁の神殿』から帰って来たぞ!」「ああっ!英雄候補の帰還だ」「今回の大発見で本物の英雄になるかも知れないぜ!?」「あの若さで大したもんだ……」「ハーレムパーティーのリーダーめ……死ね」


おうおうっ何やら大物が登場の予感がするな、賞賛の嵐が……ん?何か最後の方死ねとか言ってなかった?。


冒険者ギルドの両開きのドアが開くと5人の冒険者パーティーが入って来た。


イケメンが1人と4人の美女と美少女で構成されてパーティーだ、なるほど確かにハーレムパーティーだな。死ねよ。


輝く金髪と聖騎士かっ!と言った感じの装備をしてる白人系イケメンがリーダーだろう、先頭を肩で風を切りながら進んでいる。


他のパーティーメンバーはハーレムだけに全員レベルが高いな、大きな盾を持った女戦士と戦斧を担いだ鎧の女。


共に胸囲の戦闘力はかなりのものだ、特に鎧の方はユーレシアに並ぶ程である。


後ろの二人はジト目の魔導師とあれはっ神官?法衣ってヤツだな、それを着込んでいる美少女だ。


共に綺麗で数年後にはかなりの美女になると思われる……がっ!現在の胸囲の戦闘力は……雑魚であるな。


『マスター、あの冒険者パーティーはこの場にいる冒険者の中でも頭一つ実力が抜きん出ています。かなり高レベルかと…』


「………そうか」


確かにリーダーの表情を見る限り、自信に満ちているな、正にマンガやラノベの主人公っと言った感じだ、恐らく本人達も今日の主役は自分達だと思っている事は顔を見れば丸わかりだ。


そして三十路野郎はそんな舞台の中心である若く輝く才能の塊達に嫉妬の念を抱きながら酒を食らう。


「あっダメですよアカシアさん。ユーレシアさんから朝からの飲酒は止める様に言われてるんですから」

「…………分かったよ」


お前らいつの間にそんな仲良くなったんだよ、それとその話は俺がビールを注文する前に言ってくれよ。


金髪イケメンがギルドの受付カウンターに行くと、受付嬢ではなく冒険者ギルドのギルドマスターが直々に出迎えた。


こちらはどこぞの元アフロと違って元からハゲている、しかもガタイはマッチョで身長は二メートル近い、歳は五十代くらいだと思う、名前は知らん。


「よくあの『巨壁の神殿』を踏破したな、しかもボスを倒すだけじゃなく今まで誰も見つけられなかった大発見をしたそうじゃねぇか」


「信頼出来る仲間のお陰です、僕1人じゃ不可能でした」


そしてギルドマスターと金髪イケメンが会話をし出す。


「あの金髪の男の人があの冒険者カインなんですね……」

「レイナ知ってるのか?」

「何でアカシアさんは知らないんですか?冒険者カインとそのパーティーと言えばドラゴンとすら互角に渡り合えるって話の有名なパーティーですよ?」

「知らん」


ハーレムパーティーとか会話の話題にも上げたくない。

しかも所属してるのがみんな美人とか、殺意が湧いてくるね。


そしてその金髪イケメンのカインはギルドマスターとの話を終えた様だ。

………いやっまだ話はあるみたいでどうやらギルドの奥の方に案内するみたいだな。


金髪イケメンはパーティーメンバーに何やら話す。


「よしっクエストの報告は終わった、旅の装備や支度を整えたらまた『巨壁の神殿』に向けて出発だ!」

「任せなっ!ダンジョンのどっかにあるはずのあの扉を開ける鍵を探すんだろう!絶対にオレが見つけてやる」

「アンジェラ、ここで鍵の話は……」


やっぱり勝ち組街道を進む若者は声も大きいですな、ギルドマスターが慌ててカインパーティーをギルドの奥の方に連れて言った。


鍵……カギねぇ…………。


「…………まさかな~」


するとまた酒場のドアを勢い良く開ける者が現れた。


「おひさ~ット言っても数日だがな!相棒!それとオマケの愉快な仲間共よ元気にしていたか!」

「元気にしていたわぁ~ねぇっ!地上に行ってたならお土産あるんでしょう!」

「ユーレシアさん!お帰りな……今オマケとか愉快なとか馬鹿にしませんでしたか?」

『マスター、あの女が戻りました』

『ゆーちゃん……おひさ……』


入って来たのはユーレシア、俺の自称相棒にしてチートメイドだった。


「おうっ戻ったかユーレシア。仕事は完了したのか?おたくが任せろって言うから任せたけど…」

「当然だろう?私を誰だと思っている?」

「……そうか、ご苦労様。なんか如何にも面倒くさそうな案件良く解決出来たな」

「それも含めて私の実力だよ、ムッフン!」


調子こきメイドめ、しかし今回はコイツのお陰で面倒くらりそうな案件をパパッと解決出来た、ここは素直に感謝を………。


「むっそう言えば今、この冒険者ギルドに何やら大発見をした冒険者パーティーが来ているそうだがソイツらはどこだ?見てもいつものしみったれた連中ばかりだが……?」


ヤメロ、そのしみったれた連中が俯いて涙してるじゃないか。


「あっあの冒険者パーティーならギルドの奥の方でギルドマスターと何か話してますよ?さっき話してたんですけど、何でも未探索エリアに繋がっているかもしれない扉発見したらしいですよ?」

「ほほうっそうなのか?」

「そうですよ、彼らは隠したがってましてけど。その扉を開ける鍵を発見して未探索エリアに1番乗りするって冒険者が実は結構な数『巨壁の神殿』に向かったって私は聞きました」

「……っだそうだな相棒、私達はどうする?」


どうするってあんな凄腕がトライするダンジョンに俺みたいな雑魚リーマンが挑むわけないだろうに……。


「何で俺までそんな鍵探しに参加しなきゃあ…」

「ん?何でも何も……その鍵は相棒が持っているからだぞ?」


………………前言撤回。


本当にコイツは面倒事を片付けてくれたと思ったらまた面倒事を持って来やがったぞ。






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