第34話『フローラ=ハインツ=グラントリア』

【ユーレシア視点】


名も知らぬモブは城の兵士達に連行されていった、この世界にも自白剤みたいな物はある、魔法で一発だろうから秘密結社とやらの情報も何とでもなるだろう。


私にとっては『迷宮大陸』の上にある国がどうなろうと、正直どうでもいいのだがもしもこの国が戦争状態になると『迷宮大陸』にいる冒険者にも徴兵の類いがくるのだ。


「戦争なんてゴミ以下の労働に、相棒と私の冒険の邪魔をされるのもつまらんからな」


よってほっておくとどんどん面倒くさい事になりそうだった件の事件は私が早々に処理する事にした。


もちろんあのザコの後ろにいる秘密結社とやらについてもある程度は分かった、この国の隣国に本格的に手を伸ばしている事とかな。


それらについても話をしておくか、そこまで話してもそんな犯罪組織に負けるのならそれがこの国の程度と言う物だ。


それに相棒はお金持ちになりたいとか言っていた。金なんてのは人間の社会やらがある程度安定してないとその価値はメチャクチャになってしまうものだ、そんな物に何故そこまで執着するのか分からない。 


しかしそんな事になればセイージュの街も雰囲気が悪くなるだろう、そうなると日々の冒険にも悪い影響が出る。落ち込んでいる連中ばかりの酒場に行きたい冒険者などいないからな。


まぁ相棒が困っていたのが1番の理由だがその他にもそんな理由がありこの私が出張って来たのだ。


「もしも自白に手間取る様なら、私が魔法で聞いた事に全て正直に答える様になる魔法でも使ってやろうか?」

「それは有難いな、その時は頼む。それとわざわざこのグラード城に来てくれた事に礼を言うぞ」

「別に礼など要らないな、それよりも今回の事件を解決した報酬についてだが……」


私がここまで出向いた理由。それは別にあったのだ。


「分かった、出来る事なら叶えよう」

「ああっ別に大した事じゃない」


そしてこの金色にあることを依頼する。


◇◇◇


場所はグラード城のかなり高い所にある豪華な一室だ。

そこで私はとある少女と会っていた。そして…。


「コラッ!だからそのブローチは既に役目を終えたんだから私の相棒に返すんだよ!その手をはなせぇえ!」


「イッイヤです!離しません!」


そのやたらと広くて豪華な部屋で私はこの国の姫とブローチを取り合っていた。


理由はこの姫を助ける為なのか何なのか知らないが相棒がコイツに貸していたであろうブローチの回収しに来たのだが、何故かそれを聞いたコイツはそれを拒否。


おかげで力ずくの戦いとなってしまった。


「だからそれは私の相棒が一時的にお前に貸していただけなんだ!それを返せと私は言ってるんだ!」


「ならその相棒と言う方本人が来て下さい!貴女の言うことの殆どが事実だとしても何故がその辺りは怪しい気がするんです!」


………っち、勘が良い姫だな。

相棒がプレゼントしたと言う話だったのでそれを私が貰おうとしたのだが、どうやらこの姫は他者が向ける悪意を察知するスキルでも持っているようだ。


何故なら相棒の物は私の物、私の物は私の物なので何の問題もない筈だ。


「そっそれに、その人は間接的にとは言え私とこの国の恩人何でしょう?なら会って直接お礼も言いたいんですけど…」


「あん?それなら自力で冒険者の街、セイージュに来るんだな!相棒は私との大冒険が忙しくてお前に会っている暇などないぞ!」


「…………ッ!」


「すみません、ブランニーシャ様?先程からのこのメイドの暴言が…」


「悪いがその女にそんな事を言っても無駄だと思え」


私達の戦いを余所に金色と全身黒っぽい格好をした女が会話をしている。それにしても今まさに国の姫が私にほっぺを引っ張られているのに悠長な騎士と従者だな。


きっと忠誠心とかが全くないのだろう、私と相棒の信頼関係を見習ってほしいものだ。


すると私のほっぺホールドから脱出した姫がキッとこちらを睨んでいる。


「会えないなら直接会いに行ってからお礼を言いますから!私を連れて行って下さいよ!」


……何を言うかと思えば。金色と黒いヤツが呆れているな、この姫はお転婆なのか?何かと外に出たがる系の姫なのか?。


「そっそれにその男性は自分の意思で私を助けてくれたんでしょう?それなら貴女にとやかく言われるのは筋が通らないと言いますか……」


この姫は何故か相棒会いたい様だな?見れば金髪碧眼でかなり可愛らしい容姿をしている、成長すれば間違いなく美しくなるだろう。


まぁそれでも私には今一歩及ばないし、スタイルもお子様レベルだ。まさか相棒がこの外見に惹かれて助けたとは考えられない。


「………………」


しかし、私は余計な真似はしないタイプのメイドだ。国の姫などと言う面倒事を運ぶのが仕事の地雷娘なんて相棒と私の冒険者ストーリーには要らないんだ。


やはり答えはノーだな。


「やはりダメだな」


お前みたいなタイプの女は……相棒の側には置けない!。


「そっそんなぁー……」


「姫、そもそも冒険者の街に王族が行くなどあり得ませんから」


「………むぅ~」


「ひっ姫?何故私を見るんですか?行けませんよ?それにあの男は姫が考えてる様な者ではありませんからね?どこまでも欲望に忠実なダメなヤツですよ?」


なんて事を言うんだこの金色は、たとえ全て事実だとしてもそれは言い過ぎ……とも言えないのが相棒何だよな。それも相棒の良いところでもあるのだが。


「……そんなに酷い方なんですか?」


「それは私も気になります」


姫と黒いヤツが食いついた、しかしここで相棒の話をするとか私に何のメリットもない。


しかし……。


「良いだろう!相棒の良いところなら幾らでもあるぞ!幾らでも聞くがいい!」


「「おおっ!」」


(………断言出来る、あの男にそんな所があるか?)


そして私は女子トークを開始する。


まぁ少しはこの城でゆっくりするのも悪くはないだろうからな。


………何しろ。




次のステージへの道は、近いうちに勝手に開くだろうからな。











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