第31話『お金持ちへの道も冒険も…続くのだ』
それから俺達は駆け出し冒険者が受けるショボいクエストを受けた。
今はクエストを始める前のミーティングと言う事で喫茶店で朝食を取っている。
「うんうんっなる程、わかったぞ……つまり敵は全て私が殲滅すればいいんだな?」
「違いますよ!このクエストでのパーティーの連携について話しているんです!まずは私が斬り込み役をして……」
「私が魔法でお前もろともモンスターを吹き飛ばせば良いと?」
「違いますっ!そもそもユーレシアさん一人で全てをカバー出来る訳ないんですよ?ユーレシアさんがモンスターと戦っている時にアカシアさんがモンスターに背後から襲われたらどうするんですか!?」
「目の前のモンスターを瞬殺、相棒の背後のモンスターは魔法でしばく」
「これだから近接も遠距離も出来る万能型は!」
「私は万能型じゃない!全能型のスーパーメイドだ!」
「……メイドってそれはコスプレですよね?」
「なっなんだとぉおっ!?」
なんかワチャワチャ話している、フリーネは一心不乱に運ばれて来た料理を食べている。
俺も運ばれて来た料理を食べよう、……何だよこれっカマキリのカマ、あれのやたら大きいのがポタージュスープの中に突っ込まれてんぞ。
「すいませーん!ポタージュにデカイゴミが入ってんですけど!」
「アカシアさん?それはカマキリのポタージュだからそれが普通の料理なのよ?」
「…………ふざけんなよ異世界」
俺はカマキリのカマを退かして、ポタージュをスプーンですくい飲む。
…………何で美味いんだよ。昆虫スープのくせに。
そんな感じで過ごしていると、不意に気になる事があった。
「そういや俺がレベルアップで手に入れたスキルって何なんだろうな?正直よく分かんねぇんだよな」
ただの独り言だ。
しかしそんな独り言に余計な事を付け加える事に掛けては右に出る者がいないバカが俺のパーティーにはいる。
「ん?相棒のスキルか?それは人物のプロフィール、モンスターやアイテムとかの情報を覗き見る能力だぞ?相棒が元いた所だとゲームで言うフレーバーテキストってのを読める能力だな!」
「…………………は?」
おいっ嘘だろ?今まで何となく謎の能力だった俺のスキルがこんな呆気なく紹介されたのか?。
「ちょっ!ちょっと待てよユーレシア!何でおたくが俺のスキルを知ってんだよ!?」
「ん?それは私も似たような能力で相棒のスキルの上位互換の物を持っているからだぞ?」
………嘘だろ?俺のスキルの上位互換をコイツは持っているってのか。
あり得なくね?そんなの……主人公の能力のその上を当たり前の様に持ってるってよ。
「試しに相棒の持っているそのアイテムの詳細な情報を見たいですっと念じて見るといい、直ぐにフレーバーテキストが現れるぞ」
そのフレーバーテキストって言い方を辞めろ!まるで俺のスキルがゲームのメニュー画面にあるスキルでも何でもないヤツみたいだろが!。
……まぁ試してみるけど。
俺はポケットからインフィニティナイフを取り出してスキルを発動してみる。
「………………」
スキルって意識して使おうとすると、なんか上手くいかないぞ?。
スキルよ発動せよ。
「………………………」
スキルよ応答せよ……応答せよ!。
テキストこいッ!プロフかもん!……。
…………フレーバーテキストでもいいから。
【インフィニティナイフ】
「………出たよ、だけどなんかムカつく」
【インフィニティナイフはレベルが上がり進化可能な状態である、進化しますか?】
……は?レベルが上がって進化?ポケモンかっ!装備が進化とか意味がわから。
【進化します】
【了承しました、進化を開始します】
「ハァッ!?何でだよ嘘だろオイッ!」
「うわっビックリしました………どうしたんですかアカシアさん?」
「いっいやっいきなりこのナイフが進化するとかって……」
「え?ナイフって進化するのぉ~?」
「うん?ちょっと意味が分かりません…」
二人は当たり前だが困惑している。
しかしユーレシアはニマニマとしていた。
「ほほうっそのナイフもか?相棒は知ってるだろ?レベルが上がればどこぞのポンコツでも意思を持ち喋る様になる事をな?」
『………………あん?』
「………マジかよ」
何となくこれから何が起きるのか大方理解したその時、俺のナイフが光り出した。
やがて俺の手のひらの上でナイフがその形を変えていく。
なんかウネウネしてて気持ち悪い……。
そして光りが収まると……。
そこには、メタリックに輝くスライムがいた。
『こん…にちわ……ますた…』
「おっおう……こんにちは…」
銀色のスライム見たいなのが手のひらの上でプルプルしてる。
見た目完全に倒すとレベルが沢山上がるあのスライムの様だ。メタルだよメタル。
しかしそんな銀色プルプルに熱い視線を送る者がいた。
「かっかわいいですね!」
「かわいいわぁ~!」
「………そうか?あれはスライムにしかみえないが?」
レイナとフリーネは片手に乗るサイズのメタスラモドキに夢中だ、ユーレシアは何とも謂えない顔をしている。
『ますた……ますた』
「ん?どうしたんだ」
『なまえ……ほしい』
「名前?ああっプレアに命名したみたいにか?」
このプルプル、まさかあの時から自我があったのか?それとプルプルのますた呼びにレイナとフリーネがまたきゃあきゃあと騒ぎ出してウルサイ。
別に名前をつけるのが趣味とかじゃねぇんだぞ?。
………まぁつけるけどさ。
「そんじゃあおたくの名前は……メタルキング」
『……いや』
「…………んじゃあ、はぐれてるメタル?」
『………いや』
コイツ……ワガママだな。
何故か女子冒険者の二人からは俺が悪いヤツ見たいな視線を叩きつけられるのが解せない。
では真面目に決めますか。
「ならっセレンでどうだ?」
『………セレン……いい…』
名前に特に意味はないです。強いて言うなら声が女の子っぽいのでそんな感じの名前にした。
あんまり女子冒険者達が熱い視線を送るのでセレンをテーブルの上に置いた。
とてもキラキラでプルプルしている。
女子冒険者達がそれだけで声をそろえてきゃあきゃあ言ってる。なんだコイツら。
そんな女子二人とスライムモドキを見ているとユーレシアから一言。
「しかしいいのか相棒?あのインフィニティナイフまで進化させて?」
「俺は何もしてねぇよ、多分セレンが自分の意思で進化を選んだんだよ」
あのテキストへの返事はセレン自身からだったのではと俺は思うんだよ。
「そうか、しかしこれでは相棒の戦闘能力が下がって行くぞ?」
「………………あ」
言われて気づいた。あのインフィニティナイフがこのプルプルに進化したら俺は今後あのナイフを使えなくなるのか?。
しかもだ、もしもレベルアップで俺の持っているアイテム。あとはインビジブルアンブレラくらいしかないがそれまで進化して自立行動するようになったら……。
そして俺の手元から離れていったりしたら。
え!?俺、冒険すればするほど弱くなる運命にないか!?。
俺がその事実に戦慄していると、何やら俺達のパーティーに話し掛けてくるヤツがいた。
「久しぶりだな。相変わらずの様だな?」
「お前は………金ピ!………女騎士!」
ソイツはいつぞやの金ピカ女騎士であった、今は鎧は装備しておらず身軽な格好だ。普段着だろうか?それといきなりつかみ掛かって来て名前くらいちゃんと覚えろと吠え散らかしている。
すると金ピカ女は俺にとある話題を振ってきた。
「所で貴様に一つ聞くが、以前グラード城に侵入した時に……まさか姫に何か渡していないだろうな?例えばバラのブローチとか…」
「あん?そりゃあ……」
「……………バラのブローチだと?」
そこまで言いかけて思い出す。
そういやこの国のお姫様ってあの死相的な黒いモヤを纏っていたわ。
これ知っているって言ったら間違いなく厄介な事になるな、知らないフリをしよう。
「…………知らんなぁ~(裏声)」
「知ってるな貴様!吐けっ!あれはなんだ!?貴様の目的はなんだ!?」
「おいっ相棒!城の姫とやらにブローチをプレゼントしたのか!?正直に言うんだ!」
「そっそのブローチがどうしたんだよ!?」
「あのブローチを付けて姫が各国の王族や貴族が集う食事会に参加したのだが……」
「………だが?」
「その時に御一緒した他国の王子が突如発光したブローチから魔法攻撃を受けて吹き飛ばされた」
俺はシラを徹底的に切り通すと決めた。
なんかユーレシアまでうるさくなって来たしな。金ピカは俺の両肩を掴んでユサユサしてくる。
「はっ離せコラッ!俺は何も知らねぇよ!」
「嘘をつけ!貴様程分かりやすいバカがそういるかっ!」
「き~お~く~にございませんっ!」
「ふざけるな貴様ーー!」
「相棒!私はプレゼントとか貰った事は無いぞ!?ムカつくからお小遣いは半額に減額だな!」
現場はまさにカオス。
そして俺の小遣いが半額にされたぞ、ふざけんなよクソメイド。
そして女子冒険者!いつまでセレンのプルプル具合に夢中になってんだ!知らないフリしてんじゃねぇぞ!?。
「ああーーっ!たくっ面倒臭ぇはマジでよぉーー!」
俺のそんな叫びがセイージュの街にこだまする。
…………やっぱ今日は休みだな!寝るわ俺。
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