第30話『絶望して…何が悪い』

朝が来た、絶望の朝だ。


「…………………」


やる気が出ない、動く気になれない、生きる気力が湧かない。

本当に……どうしようもないくらい何もやりたくないんだよ。


「……………畜生」


俺は寝転んだまま………………泣いていた。


三十路を過ぎた男のガチ泣きだ。

いい歳した大人でも泣くよ、だって十億だぞ?そんか大金を1度はこの手にしながら何がお金を管理するだ!?お小遣だっ!?。


おかしいだろ?こんな事。


「……ちくしょう、チクショウ……ふざけんなよ。あのクソメイドが……」


昨日一晩掛けて幾度となくあのクソメイドことユーレシアの部屋に特攻をかました、何故なら金が入った袋は防犯の観点からユーレシアに預けていたからな。


おかげでヤツの部屋から大金を奪取するミッションに挑んだんだが。

あのチートメイド、何故か俺がインビジブルアンブレラで姿も気配も完全に消しているのにあのメイドは何故か当たり前の様に俺に気付きやがった。


まさかあのチート傘の能力を上回るチートメイドだったって事か?チクショウが!おかげで俺は昨日一晩掛けても金を取り返せず、それどころかこの宿屋に泊まっている他の冒険者からも騒音被害を訴えて来やがった。


俺がムカッてきてつい、ゴチャゴチャうるせぇっ!この人生負け組の貧困群衆がぁああああっ!…っと言ったら冒険者共にキレられてボコボコにされた。


その冒険者達はユーレシアにボコボコにされていた、ヤツは私の相棒に何をしているこの雑魚共がぁああああっ!とか言いながら冒険者達をしばき回していたよ。


そして俺は……ヤツには勝てない事を悟った。


後は気がついたらベッドの上で寝ていた、そして目覚めて現実を目の当たりにした。


「……せめて……五億は寄こせよ。チクショウ……!」

『おはようございます……っとまだ言いますか』

「言うよ!言いまくるに決まってんだろ!?何で年末ジャンボで大当たりを叩き出した俺がお小遣い何ぞで我慢しなきゃならなねぇんだ!」

『その年末ジャンボを当てたのがあの女だからですよ、それと宝くじではなく実力で得た金ですからね?』


プレアにまで寝起きで論破された。

もう少しマスターを労れこのポンコツ軽自動車が。


『マスター、お金の事もそうですが冒険者としてこの街に来てからまだ1度もクエストも何もしていませんよね?そろそろ……』

「……………嫌だね」

『…………マスター?』

「俺は今日は何もやる気が起きないから寝て過ごす事に決めたわ」

『…………………』


そして俺は再びベッドに潜り二度寝の姿勢に入る。

もう俺はお金持ちから引きニートにクラスチェンジする事に決めた。


十億を奪われた悲しみは、それくらいでは癒やされないがな。明日も明後日も寝て過ごそう……。


すると部屋のドアがバァンッ!っとウルサイ音を立てて開く。

そんな真似をするバカは1人しかいない。


「おはよう相棒!昨日はよく眠れたか?」

「……………………………………………」


来たよ。来ちゃったよ。


このクソメイドが………!。


「よく眠れたかだと?お前のお陰でムカつき過ぎてろくに眠れなかったよオラッ!」


喰らえ!枕ボンバー!。


「おっと……いきなり機嫌が悪いなぁ相棒」

「当たり前だろうが!何がお小遣い制だ!高校生か!二万でどうやって遊ぶんだよ!」

「ん?相棒がぁ~私を大事にすればぁ~お小遣いの金額が変化するかも知れないなぁ~」


俺はバカメイドを無視して布団に包まる。


「………ハァッ仕方ないな、相棒!お小遣いを増やしたいなら冒険者ギルドに行ってクエストをすれば良いと思うぞ?この街は冒険者の街、1度入ってしまえば身元は保障されたも同然のざる仕様だからな!」

『………その他者を見下す感じがマスターに悪影響を及ぼしているかも知れませんね』

「は!?そこは相棒の性格が私に影響を与えている可能性の方が高いんじゃないのか!?」


アホメイドとアホ自動車がなんか口論をしだたな、しかしプレアは別の空間から思念だけで話し掛けているから、ユーレシアは1人で大声を上げるバカメイドにしか見えない。


宿屋の廊下を歩いている他の冒険者が何だこの変なメイドは……って感じでユーレシアを見ている。


………何故かこっちまで恥ずかしくなってきたな。


「オイッ分かったから外に出るぞ。お前らとここにいたらまた宿屋の女将にドヤされる」

『それはマスターが深夜にこの女の部屋にロケットを撃ちこんだからですよ、自業自得です』

「全くだな、あの時は流石の私も冗談だと思ったぞ?壊れた部屋を私が魔法で治したから許されたものの……」


そりゃあ十億の為だ、仕方ないだろ?。

俺の故郷の島国じゃあ大事の前の小事とか大義って便利な言葉があんだよ。


「うるせぇうるせぇこの役に立つのか立たないのか分からないコンビが。ほれっ行くぞー」


『「なっ!?」』


そして俺はイヤイヤながら街に行く事になった。


◇◇◇


そしてセイージュの街に出たはいいが、金もないから何も出来ない。

まっクエストを受ける為にこのセイージュの冒険者ギルドに向かってる訳だが、正直やる気が全く起きない。


「あ~~っ楽して大金を稼げるクエストとかねぇかな……」

「流石にそんなクエストがあるのは相棒の世界の読み物の世界にしかないぞ?」


その読み物の世界みたいな世界なのにふざけんなよ。

そして冒険者ギルドに到着、地上で1度行った冒険者ギルドとは建物のデザインが違う。

こっちはモンスターを狩ってその素材で武器も防具も賄える感じの世界の建物みたいだ。


「入るぞ~」

「何気にこの街の冒険者ギルドには初めて入るぞ俺……」

『マスターはこの街に来てから遊び回ってましたからね』


うるせぇーよ。

すると冒険者ギルドに入った俺達を早速発見して話し掛けて来た。

レイナとフリーネだ。


「おはようございます、やっと冒険者ギルドに顔を出したんですねアカシアさん」

「あっアカシアさん。私お腹が空いたわ~」

「おはよう。サイフをどっかのメイドに押さえられたからな、だからご飯は金輪際奢らないからな」


フリーネがこの世の終わりみたいな顔をし、レイナは俺とフリーネを交互に見て半笑いで笑ってる。


俺まで馬鹿にされた様に感じるのは……気のせいだな。そう言う事にしとこう。


あっそういえば………。


「俺達はこれからクエストを受けるつもりなんだが……おたくらもクエストを受けるのか?」

「私達も今来たところですからまだ考え中なんです。っあアカシアさん、またパーティーを組みますか?」

「え?ヤダよ」


俺が速攻で断るとレイナは心底ビックリした感じで驚いていた。

何故にパーティーを俺が当たり前に組むと思ってんだよ。


パーティーメンバーを増やすと報酬も分けるんだぞ?なんでチートメイドがいるウチのパーティーが余計な頭数を増やさなにゃならんのだ。


「俺は早急にお金が欲しいから余計な頭数は要らねぇんだよ!そもそもお前ら二人いてもそこまで役に立たねぇだろっ!」

「そっそこまで素直に言わなくても。うう……っ」


あっやべ、つい余計な言葉を言ってしまったな。

冒険者ギルドにたむろしている冒険者達が殺気のこもった視線を向けてくる。


「安心しろ相棒……あれは嘘泣きだ」

「……………え?」

「……バレてしまいましたかフフッ!」


なっ!?まっまさかこの百戦錬磨の色男(妄想)と呼ばれた俺が……騙されただと!?。


「アカシアさんと出会ってから、そんな言葉では傷付かないタフな精神を手に入れましたからね!」

「まるで俺が常日頃から暴言吐いてる見たいに言うなよ……なっ何だよ!なんでみんなして俺を見てんだ、ぶっ飛ばすぞ!」


しかもユーレシアまで他の連中と一緒になって、この裏切り者がぁーっ!。















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