第28話『俺の異世界物語、完!(2)』
チュンチュンとスズメの鳴き声が聞こえる。
目覚めた俺は…圧倒的な幸福感に包まれる。
俺の名はアカシア、前の世界での名前なんてとうに捨てた男。
俺の名はアカシア、十億と言う絶対的なマネーをこの手におさめし者。
「俺は………勝ち組だ」
目覚めた俺は、自身が勝ち組だという圧倒的幸福感に包まれている、富、名声、力。その中の富だけで人はここまで幸せな気分になれるのか…。
本当に最高の気分だ。
今なら世界の全てに感謝を伝えられそうだ。
俺をお金持ちにしてくれた、世界の全てに感謝を……ありがとう、ありがとう!。
「…ふうっそろそろ俺も起きる時間だな」
確かこのホテルは朝からお風呂に入れると聞いた、ならもう入れるよな?。
フフッ昨日までお風呂どころかリーマンスーツを他の連中から臭いとか言われ始める前に何とか洗濯しようとか考えていたのに。
全く何がどう転ぶか分からないな、流石ファンタジーな異世界だ。
俺はそのまま朝風呂に入り支度を済ませてホテルが用意する朝食をいただく。
朝食はビュッフェ形式で、その場所に行くと数人の冒険者、それ以外には謎のメイドが一人で立っていた。
ユーレシア。自称俺の相棒でチートを擬人化した様なとんでもないメイドである。
ちなみにメイドなのは見た目だけで、それらしい働きとか一切しない。
ユーレシアは俺を見つけるといつものニマニマ顔で話し掛けてきた。
「おはようさん相棒、昨日はよく眠れたか?」
「おはようユーレシア、もちろんゆっくり寝た……とはあんまり言えないなぁ…」
昨日は十億の事ばかり考えて実は深夜過ぎまで起きていた俺だ、これは仕方ないよだって十億だぞ十億。
『おはようございます、マスター』
「んっおはようプレア」
我が愛車である由緒正しき黒い中古の軽自動車であるプレアだ、コイツは今別の空間に収納されているのだが声だけなら俺達にも届かせる事が出来るらしい。
おかげで回りいた冒険者が誰もいないのに話している俺を見て変な人を見る様な視線を向けている。
……まっ金持ち喧嘩せずだ。既にその領域に立った俺はあの冒険者達にも笑顔で返す。
何故か知らんが視線を反らされてまるでヤバイ人を見る様な視線を…もうっどうしろってんだよ。
居心地が悪くなったので俺達はセイージュの街にくり出す事にした。
時刻は九時過ぎくらいか?やはり金に余裕がおると朝起きる時間もゆったりと取れる。
決して夜遅くまで起きていたのが理由ではないのだ。
「それじゃあセイージュの街の貧乏冒険者達の姿を見に行くか」
「相棒が行くなら私も行くぞ」
(マスターが、単純にイヤなヤツ認定されないか、私は心配になってきました)
◇◇◇
さてっセイージュの街に出た俺達だが。
「取り敢えずプレア。お前の車体について何だが、正直あのゴーレムから受けた傷は大丈夫なのか?」
『……はいっ私には自動修復スキルがありますから、既にダメージは癒えています』
自動修復スキル?そんなの持ってるとか聞いてないぞ。まさかボスゴーレムとの戦闘で更なるスキルをゲットしたとかじゃないだろうな?。
俺は未だに自分が持っているスキルの能力も名前も知らないのに……どうしてこの異世界にはステータス画面とかスキルの一覧とかが出てこないんだよ。
『しかしこの車体も大分汚れが目立つ様になってきましたし、洗車をお願いしたいとは考えていました』
フーン、洗車か。
「そうか、なら昨日行ったベリンダ工房に行って見るか?もしかしたら洗車とかのサービスをしてくれる様な所を知ってるかもだし…」
そして鍛冶屋のベリンダ工房に向かう。
しかし当のベリンダは。
「は?センシヤ?クルマってのを洗う?何言ってんだいあんた?」
まぁそりゃあそうだよな、ここは……。
「プレア、出てきてくれ」
『分かりました。マスター』
「あんた何を独り言を言って……ってエエッ!?なんだいこの変なのはっ!?」
『失礼な。私はプレア、マスターの愛車にして旅の相棒です』
(…このポンコツ、遂に相棒の相棒を名乗り出したな……そろそろ格の違いを…)
ベリンダにプレアの姿を見せるととても興味を示した、そして自分が掃除をするとか言い出した。
『私は構いませんが、解体なんてしようとしたら魔法で反撃しますよ』
プレアの言葉にベリンダが一瞬ビクッてなった、それとユーレシア。さっきからプレアに無表情でガンを飛ばしてるのは何なんだよ。
一応昨日から気になっていた事が片付いて良かった。これで俺も今日を楽しめる。
無論ベリンダにはそれなりの報酬をだしてはやろうと思う。
「それじゃあ俺達は行くから何か合ったら思念で教えてくれよ」
『分かりました』
「よしっそれじゃあユーレシア!いつまでプレアを睨んでんだ!行くぞコラッ!」
「あっ相棒!このポンコツはこのまま粗大ゴミいきが良いんじゃないのか!?」
何を言ってんだコイツは……。
そして街を歩く、今日も明日も明後日も~ずっとずっとお休みなのさ~。
「ん?相棒随分と気分が良いんだな」
「当たり前だろ?これからは働かないで金だけ使って生きていく生活が待ってるんだからな~」
「…………」
そしてセイージュの街をしばらく歩く、するとレイナとフリーネに出会った。
「んっおたくらか、今日は冒険者はお休みか?」
「おはようございますアカシアさん、ええっ昨日は大変でしたからね。あの後冒険者ギルドに報告したら大変だったんですよ?」
レイナは何やら愚痴を話し始めたので俺はフリーネに話を振る。
「そっそれでフリーネと一緒なのはどうして何だ?冒険者で同じパーティーって言ってもプライベートとかは別々だったりしないのか?」
「私がお金を持ってると食べる事に全部使っちゃうからおサイフをレイナに握られてるのよ~だからお買い物をする時はいつもレイナが一緒なのぉ」
「…………なる程、おサイフを…」
ん?ユーレシアが何やら頷いている。一体どうしたんだ?。
しかしおサイフ、おサイフねぇ~、やはり……貧乏人達はお金に苦労しておりますなぁ~。
フッフッフッフッフッフッ……。
「あっアカシアさん?どうかしましたか?何かもの凄く嫌な笑い方をしていますよ?」
うるせーよ貧乏美少女冒険者。
「……分かったわ!きっとお腹が空いたのよ、私もさっきからずっとお腹が空いてるから分かるわ!」
うるせーよハラペコ女。
「フッフッそうか?なら今日は俺達が金を出してやるから好きに買い物でも買い食いでもしていいぞ?」
「「…………………え?」」
俺の提案に二人は目を丸くしていた。
◇◇◇
その日、俺達はフィーバーした。
何をしたかと言うと昨日の眺めることしか出来なかったあの高級レストランに突入。
店の人間はドレスコードだのなんだのと抜かして来たので大金貨を詰めた俺の財布という名の袋で頬を引っぱたいてやると怒って来た。
まぁウチのメイドが拳を振るい全て解決したけどな、レイナとフリーネも連れて行ったのだがフリーネは高いだけで量が少ない事にぶーたれていて、レイナは終始おサイフの事を心配していた。
店員に関しては見た目で金を持って無さそうだからかあけすけな言動を目の当たりにしたのでそこまで気に留めている感じはなかった。俺も同感だ。
それ以降も俺は好きに買い物を出来る様にお小遣い見たいに大金貨を数枚程渡して二人に好きにさせた。
フリーネは買い食いでもするのか出店が立ち並ぶ方に向かった、レイナは頑として金を受け取らなかった。
「そっそんな大金受け取れません!一体私達に何を求めるつもりですか!?」
「何もいらねぇよ!コイツは大人が子供にお小遣いをやるみたいなもんだっての!」
子供扱いされた事にレイナは珍しくプリプリと怒っていた。そう言うのはもう少し大人になってから言ってろ小娘め。
そんな感じでお金持ちになった俺は一切働かずに、お金を楽しく使う事だけを生き甲斐に異世界生活を謳歌していった。
そんな生活が……二週間程続いたある日。
俺はその日も泊まっているホテルからのセイージュの街の夜景を楽しんでいた。
文明レベルは中世に近い筈なのに一丁前に街灯があり夜も街から明かりが消える事はない。
だからこの高い所にあるホテルからの夜景も結構綺麗なのである。
実はこの街にちょっとした屋敷を建てるか元々ある空き家を住める様にリノベーションでもして宿屋生活から脱出を企んでいるんだよ。
だってお金持ちが賃貸とか、高級タワマン以外じゃ許されない事だからな。
するとユーレシアが俺の背後から現れる。ちょっとビクッてなったわ、無言で後ろに立つなよ。
「相棒、少し話がある」
「おっおお、話?改まってなんだよ?」
珍しくこのチートメイドが真面目な感じで話し掛けて来た。
「この二週間、私は相棒の行動を観察してきた」
「………観察?」
俺を?何でだよ。
するとユーレシアは淡々と語り出した。
「そうだっそしてその観察の結果……相棒はお金持ちになるとダメ人間になる事が判明した!」
「……………………は?」
そしてユーレシアは少し溜めてから言い放つ。
「故に今後、相棒のおサイフは私が管理する。そして!相棒はこれからはお小遣い制とする!」
………………………………はぁ?。
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