第27話『俺の異世界物語、完!』
みんないなくなった。
プレアを町中で呼ぶ訳にもいかないから、俺は1人でセイージュの街をブラブラする事にした。
ブラブラ。
ブーラブーラブーラ……。
『マスター、本当にただブラブラするのではなくセイージュの街に何があるかを見て回るのはいかがでしょうか?』
「それもそうだなっよしっまずは金があったら行きたい所を見に行くぞ!」
(……金があったらですか、マスターはあの女の言葉をかなり当てにしてるかもしれませんね。しかしそんなにウマイ話がはたして……)
プレアと話をして、俺は真っ先にこの街で如何にも高そうなレストラン的な店を見に行った。
場所はセイージュの街の比較的高い場所にあるレストラン。建物は三階建ての建物だ、白いレンガを積んで作られたヨーロピアンな感じってヤツだ。
この街は冒険者の街の筈だが店を出入りする人は貴族見たいなカチッとしたお高いスーツやドレスを着ている連中ばかりだ。
「ちっ……金持ちってヤツはテレビでも間近でも視界に映るだけで胸糞悪いよな……」
『…………』
しかしレストランは高級感があって、きっと出される料理も美味しそうだ。
そんな事を考えながら……俺はボーッとレストランを眺め、中で旨い料理を食べる妄想をするのだ。
次は冒険者の街と言えば必ずある施設。
そうっ酒場だ。
まるで西部劇に出てくる感じの木製の椅子とテーブルが並び、冒険者な感じの荒くれ者達が……。
「やんのかオラァッ!」「こいやカスがっ!」「いいぞっやれやれ」「お前ら俺の店で暴れるんじゃねぇよっ!」「くたばれっ!」「当たるかよ」「死ねやぁっ!」
マジもんで荒くれていたぜ。
「…………………」
『…………………』
こっここに行くのは止めとこう、次だ次っ!。
えーっとでは改めて。
冒険者の街と言えば必ずある施設。
そうっ鍛冶屋である。
カーーン、カーーン、カーーン。
ウーンっこの鉄を叩く音、嫌いじゃない。
建物は二階建ての白い建物で、大きめに作られた出入口の回りには槍や剣、それに大きな盾が綺麗に並べなれていた。
店の中も眺める、内装もまさにファンタジーな異世界の鍛冶屋って感じだ。
並んだ武具はどれも磨き抜かれピカピカと輝いている。
「うんっ俺もいつかはこんな店で買った物で装備を固めたいもんだ……」
『恐らくマスターのインフィニティナイフの能力で生み出した装備の方が遥かに高い性能を誇るかと思いますが』
それを言ったらおしまいだろ。
何でゲームで初期装備から卒業を夢見てたら、もう貴方は最強装備を作れるでしょうと突っ込まれるんだよ。その通りだよ。
「ん?お客さんかい?ウチの鍛冶屋に用かい?」
おっプレアと話してたらいつの間にか後ろに誰かいたな。
いたのは金髪の女で、鍛冶屋って感じの生地が厚いオーバーオール、上下が一緒になってるヤツを着ている。
ちなみに胸元は結構膨らんでいて、それを布を巻いている。歳は十代中頃かな。
「俺はアカシア、冒険者だ。まだ金がないから客になるのはまだ先だと思うぞ?」
「ハッハッハッ!そう言う言葉はアタシの顔を見てから話してくんないかな?」
…むっつい胸をガン見しながら話してしまった、何しろユーレシアに並ぶレベルの巨乳だからな。
これは仕方ない。仕方ないんだよ。
「おたくがこの店の店主なのか?」
「そうよっ!アタシの名はベリンダ!んでここはベリンダ工房って屋号だよ!あんた冒険者なのに防具の一つも身に付けてないのかい?」
「だから金があったら無いんだって、金が出来たら防具でも武器でも欲しいんだけどな…」
「成る程ねぇ~ならその時はウチの工房をよろしくね!サービスするよ!」
「………………」
サービス?サービスってどんなサービスなんだ?何しろサービスって言うくらいだしそれは素晴らしいサービスが期待でき。
「言っとくけど胸をサービスに使ったりしないからね?」
「言われなくても分かるっての……」
………ちっサービスなんて嘘かよ。
期待するだけ無駄だと理解した俺は多少のやり取りをすると直ぐにベリンダ工房を後にした。
お金がない人間がいる場所じゃないだろうここは、何しろ三十路で冒険者になる人間にとって剣とか鎧のマジもんとか気を抜くと直ぐに欲しくなってしまうだろう?。
俺は欲しくなる、当然だろ。
異世界に来て剣も槍も装備しないで冒険するとかあり得ないんだよ俺的には。
「しかし、ここは本当に冒険者の街なんだな」
『はいっ街を歩く殆どの人間が冒険者とそれを支える様々な職種の人間達ですね、貴族等もおらずこの街は比較的権力に影響されない都市だそうです』
「……ふぅんっ」
正に冒険者の拠点には相応しい街じゃねぇか?。
他にもモンスターの解体場や闘技場なんてのも見に行った。
気が付けば夕方である。
……って言うかよ。
「……ここは地下、だよな?天井は確かにあって地面が上空には広がってるし……さっきまでの青空の光もだが、なんで夕日の様なオレンジの光がこんな地下にまで当たり前に…」
『マスター』
「それに天井から侵入した時は確かに上も地面だったよな?それが今は青いし雲とかも普通にあるんだぜ?そもそも天井が高いよな?この迷宮大陸って山も普通にあるのにそれよりも全然高い、上空何千メートル上まであるん」
『マスター、それは考えても仕方がない事ではないでしょうか?』
え?そうなのか?考えても仕方ないの?。
何処と無くプレアから変な圧を感じるのでこれ以上は言うのをやめるか。
「おーい相棒!」
プレアだ、どうやらゴーレムの素材を換金し終わったみたいだ。まるでサンタクロースが背負ってるあの袋にクリソツなヤツを背負っているな。
「なんだ?その袋、まさか素材売った金で訳の分からない物でも買っちまったのか?お前の金を当てにして今日の宿屋とか考えてたのによー、どうすんだよユーレシア」
また車中泊なのか?あれは身体の節々が痛くなるからあんまりしたくないんだけどな。
しかしユーレシアは何故かニマニマとしている。
一体どうしたんだよ。
「相棒……耳の穴をかっぽじってよく聴くがいい」
何だよコイツ。えらく勿体ぶった真似を……。
そしてヤツは口を開いた。
「今回のゴーレム・コアの買い取り価格は…………十億だぞ?」
「……………」
『……………』
「……………」
『……………』
「どうだ!驚いたか?驚いているな!それもそうだろう何しろあの類いのゴーレムはまだこの世界の連中は発見していないタイプのゴーレムでな?そのコアも随分と高値で買い取ってくれたぞ?まぁそれもこれもこの!私の!完璧な交渉術を持っての結果だがなーーーっ!」
アホメイドが何か言ってる……十億?。
円?日本円で?十億?。
ホワイ?十億?。
ユーレシアはニマニマとしながら袋の中を見せる。
中には五百円硬貨。一回り大きくして王冠のレリーフが入っている金貨だ。
確か大金貨って言う一枚で十万円くらいの価値があると言うこの国の通貨だ。
それが……あの大きな背負い袋いっぱい。
これは……マジなヤツだ。
そう答えを出した俺は……。
「ユーレシア、今すぐにこのセイージュで一番防音に優れた個室がある宿屋を探すぞ…」
『…………マスター?』
「フフンッ任せるがいい……こっちだ!」
そして俺達は……このセイージュでも指折りの冒険者しか泊まらない様な高級なホテルの一室に移動を完了した。
宿屋ではない。ホテルだ、流石にどこぞの島国みたいな何十階建てとかはではないが、元々高い場所に建っているから窓から眺める景観も大したもんだ……おっと今はそんな事どうでもいいよな。
問題は……十億と言う大金である。
それをユーレシアが持ってきた、何度も確認したが、これは犯罪で手に入れたとかではない正当なお金である。
後で大金どころか借金に変わるなんてオチもないんだなっと確認もした、ユーレシアは当たり前だろ?と言った。
………これもうっ俺の我慢も限界だ。
俺は……感情を爆発させた。
「いよっ……………………しゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
防音に優れた壁ならきっとこの絶叫も防いでくれるさ。
……これは勝っただろう!間違いなく、十億あれば異世界でも一切仕事をしないで生きていけるじゃねぇか!?。
もうっ俺の残りの人生は勝ち組確定のイージーモードなヌルゲー確定だろ。
俺の異世界物語……完!。
トゥルーエンドだな……。
「クックククククッ!アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
『マスターが壊れましたよ』
「……喜んでくれて何よりだ」
(…………このメイドは……)
その日、俺はずっと高笑いをし続けていた。
十億最高。メイド万歳。異世界勝利。
もう一度言う。
俺の異世界物語……完!だぁああああああああああああああああああああああああああっ!。
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