第26話『ダンジョンクリアと街に到着』

ドスンッと言う音がする。

それはユーレシアのヤツが俺達を乗せたプレアを地上に飛んで運んで、そして置いたときの音である。


「そんでユーレシア、その翼は何なんだ?ダンジョンで変な物でも拾い食いしたんじゃないだろうな?」

「違うぞ相棒、これは元々私の物だ……まぁ詳しく話す前にこれを……」


ん?チートメイドから何やら鍵みたいなアイテムを渡させたぞ、金細工が綺麗な鍵である。

高く売れそうだがこう言うのって後で必ず活躍する機会があるんだよな、まぁゲームの話ではあるけど。


「……これも俺が持ってる方がいいのか?」

「そうだな。それとこの私が担いでいたイノシシは色々あって駄目になってしまったんだ、だから代わりにこのゴーレム・コアを詰め合わせを持って来たんだ!」


俺達の会話に他の連中も入ってくる。


「うわぁ~どれもかなり高純度の魔力を秘めたゴーレム・コアねぇ~」

「その金属の篭って大きなゴーレムの頭だったんですね、そんなのと私達が乗ったプレアを両方とも運んで空を飛んできたなんて……」

「このメイドに真っ当な感覚で接すると疲れるだけだぞ?それに、どうやら本当に人間ではなかった様だしな」


……確かに金ピカ騎士の言うとおりだった、しかし話をそらそうとするのなら俺は無理に聞くことはしない。


それが大人ってもんだ。人の給料の額を何度も聞いてくるヤツとかウザくて殴りたくなるじゃん?それと似たようなもんだよ。


「……っまとにかくユーレシアのお陰でダンジョンからも無事生還出来た。けど当たり前だが今いる場所でもモンスターは出るんだから気を引き締めていくぞ」


俺の言葉でこの場のお喋りはお開きとなる。

正直な話、俺も疲れたから街に早く着きたいのだ。


「プレア?もう少しスピード出せるか?」

『私は何の問題もありません』

「ユーレシア、お前は走るスピードはもっと上げられるか?」

「私か?もちろん余裕だな、今日中に着きたいなら時速なら六十は出した方がいいぞ?」

「……だよなぁ~」


仕方ない、ここはスピードアップといくか、プレアの土魔法のお陰で道は確保出来るし余計な障害物もないから運転も安心だしな。


「よしっプレア、もう少しアクセル踏むぞ、それと道路にモンスターが出てくるのウザいからプレアやユーレシアで処理してくれ」

「フフンッ任せろ相棒」

『分かりましたマスター』


そして俺達はダンジョンから脱出して冒険者の街セイージュに向かう。


ブロロロロロロロロロッ……。


プレアが作り出した道をプレアの乗って進む俺とパーティーメンバー、それに隣を並走するユーレシアである。


本当に時速六十のスピードにも余裕で並んでるよ、まぁコイツあの超速い黒いゴーレムを瞬殺してたもんな、聞いた話によるとあのチートメイド。俺達が戦ったヤツよりも更に強い同タイプのゴーレムとその手下の無数のゴーレムも全滅させてから、あの鍵を宝箱からゲットして俺達の元に向かったらしい。


……余裕かっ!。必死になって同じダンジョンを走り回っていた俺達がアホみたいじゃねぇかよ。


するとプレアの道にまたモンスターが現れた、どうやら羽がある虫タイプのモンスターだ。


どことなくカワドウマみたいなヤツで、ハッキリ言ってキモイ。


「プレア!ユーレシア!どっちか頼むわ」

「ならここはポンコツカーに任せるぞ」

『……誰がポンコツですか。ロックハンマー』


地面から土がニョキニョキと生えて、その土がハンマーの形になって宙に浮いた。


後は俺達が来るまでにその硬い土のハンマーがモンスターを追っ払ってくれた。


『…ちっ逃げられましたか……』

「フフフフフのフ~、どうしたんだポンコツよ~、そんな体たらくでは相棒の足にも使えないぞ?」

『………………』

「気にすんなプレア、お前は今も俺達の助けになってんだろ?」

『マスター……』

「ムッ相棒!私はどうなんだ!?」

「……お前もだよ、言うまでもないだろう?だから変にプレアにケンカを売るなよ」

「……フゥ~ん、分かった。ならそうしょうか…」


はぁっ何か2頭の馬の手綱を何とか引いてる気分だ。

そう言えばプレアって自分だけでも動いてたよな?自動運転が出来る本物のAI搭載車両だよ。


中古の軽自動車が異世界に来てレベルアップをした結果随分と高性能になったもんだよな、俺的にはレベルが上がったなら天の声でレベルが上がりましたとか言って欲しいもんだ。


そんな事を考えながら豊かな自然を横目に我が愛車が走る。


ブロロロロッ………。


……なんかいいよな、こうやって何もない道をただ走るのってさ。まるでたまの休みにキャンプしに山に向かう自称キャンパーどもの気分にリンクしている錯覚を覚える。


何であんなミニマムなるって所だけが取り柄なクセにやたらと高いキャンプ道具をバカみたいな金をだして、薪にも、その他諸々にも金を出してまでキャンプなんてするのか理解出来なかった。


まぁ向こうは金と休みが普通にある富裕層が楽しむもので、対するこちらはそこら辺からモンスターが普通に出てくるんだけどな。


そんな風に異世界でキャンプの事を考えているとレイナから声がかかった。


「見えて来ました!アカシアさん、あれが冒険者の街セイージュですよ!」

「……ああっ俺にも見えてるよ」


見えた先にはおわんの形に近い台地の上に広がるファンタジーな街だった。

建物は白いレンガを積んで作られた美しい二、三階建ての物が並ぶ。


やっと、本当にやっとついた気分だよ。


「そんじゃまぁ行くか」


そして俺達はセイージュの街に到着した。


◇◇◇


セイージュの街、正門前の広場。


「それじゃあアカシアさん、ユーレシアさん、金色の騎士さん。私とフリーネはセイージュの冒険者ギルドにクエストの報告に行きますね、またパーティーを組みましょうね」

「バイバイ~また楽しい冒険をしましょうね~」


美少女冒険者の二人はそう言うと去っていった。


「……おいっまさかあの冒険者達は私の事を黄金の騎士ブランニーシャの偽物だと思ってないか?」

「……………」

「何を当たり前の事を言ってるんだ?」

「なっなんだとっ!?」

「お前見たいなろくでなしが本当に騎士だなんて思う訳がないだろう?」

「なっ!?この国で最高の位にいる騎士の1人に向かって……なっなら偽物と言うならお前の嘘臭いそのメイド姿はなんだ!?」

「ほうっ私の完璧なメイド装備にケチをつけるのか?」

「ケチをつけるのはお前本人であって装備じゃない!メイドには程遠いその感じだ!」

「なっ何だと、このコスプレナイトがー!」


アホ二人が下らない事で口喧嘩をしている。

まぁそれも少しの間だ、やがて金ぴか女騎士も別れの言葉を口にする。


「…言っておくが、今回の共闘はやむ負えずのものだ。お前達がグラード城や我が国にしでかした事を私達は許しはしない」


……長い。別れの言葉くらいスパッとしろよ、だからお前はダメなんだよ。


(……何か今、とてもイラッとした。何故だ?)

「だっだから、またバカな事をそのメイドがしない様にアカシア。お前がちゃんと見ていろよ?ではっさらばだ」

「相棒、今ここでコイツをしめていいか?」

『落ち着きなさい貴女は拳で物を考え過ぎです』

「見ろよ、あの金ぴか。お前の報復が嫌だからダッシュで逃げてんぞ…」


はぁっまたこのアホメイドと二人に戻っちまったな。


『……マスター?』

「なっ何でもないぞ?」


いかんいかん、プレアも鋭いな。


「さてっと、相棒」

「ん?どうしたユーレシア?」

「私はこのお荷物を金に変えて来ようと思うんだ、相棒は少しこのセイージュの街をブラブラしててくれないか?」


おおっそう言えばコイツ、ゴーレムの素材を担いでたんだよな。

あまりにも平然としてるから忘れてたわ。


「この街には魔導師協会と呼ばれる組織があってな、そこでならこのゴーレム・コアも高く売れるぞ。期待して待っているといい!」


そう言うとユーレシアも颯爽とセイージュの街に消えていった。


そして俺は1人となった。


『……………………マスター?』


……1台と1人になった。






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