第25話『ピンチの時には…』

吹き荒ぶ熱風が俺を襲う。


その熱風をナイフを大きな盾にして防いだ、しかしもう片方の手に持っていたインビジブルアンブレラが飛ばされてしまった。


「……ッ!マジかよ……」


お陰で俺の姿が黒いゴーレムから丸見えである、他のパーティーメンバーからは俺が二人いるように見えるから普通に混乱しているようだ。


そして俺のそっくりさんは爆発と熱風の直撃を受けてリーマンスーツもボロボロだ。


……ってかスーツも中のシャツも崩れ落ちたぞ?お陰でパンツ一丁である。


それでも無言で黒いゴーレムを見据える姿は真の変態か、ストイックが行き過ぎた変態か。判断が分かれるところだな。


『……………』


あっ黒いゴーレムの両目が赤く光ったぞ、まさかアイツもボスゴーレム見たく……。


「やべっ!」

「インパクトシュート!」


ガンッとデカイ石でも投げつけられた様な音がするとゴーレムの頭が明後日の方を向いていた。

数瞬の後、頭が向いたその方向から再び爆炎が燃え上がった。


あぶなっ!今のフリーネの魔法が無かったら俺は死んでいたぞ。


「フリーネ!今の魔法、助かった!」

「初歩の衝撃波の魔法だけど出が早いのよぉ~」

「って!ゆっくり話なんてしない!相手はまだまだ平気そうよ!」


確かになあの黒いゴーレムは未だに身体を赤くして熱気を纏っている、触っただけで大火傷をしそうだ。

あっそう言えば……。


「フリーネ!さっきアイツに魔法が当たったけど、アイツは魔法を無効化する能力があるんじゃないのか?」

「ん~多分時間制限かぁ、今は使えないのかだと思うわぁ」

「なら試しだ、アイツに最高に冷たい魔法をかましてくれっ!」

「分かったわぁ。ブリザードフォール!」


フリーネが魔法を発動させると黒いゴーレムの真上に数メートルサイズの魔法陣が現れた。


ゴーレムの拘束はまだ生きている、あの爆発でも平気とはナイフから変身したアイテムはその強度もチートである。


魔法陣から雪崩と暴風が吹き荒れる。

自身の技でアツアツなゴーレムがそんな物を喰らったらどうなるかな?。


金属見たいなので身体を作ってあるからな、熱した上に急速冷凍をされればヒビくらい入るんじゃないかとテレビで見たレベルの知識をあてにした行動である。


ビュゴアァアアアアアアアアアアアッ!。


白い嵐に呑まれてゴーレムの姿が消える。

更に水蒸気がモクモクとしだして更に視界が悪くなっていく。


俺はプレアとそっくりさんの安否確認だ。


「プレア!俺のそっくりさん!二人とも大丈夫か!?」


『私はレベルが上がっていた影響か、この車体もかなり頑丈になってました。そのお陰でダメージはありましたが何とか無事です』

「……………………(グッ)」


そっくりさんは無言でサムズアップ、どうやら大丈夫って事らしい。


……しかし黒いゴーレムは無事な様だ。


しかし全身にも小さなヒビがいくつも入っている、結構効いていると考えていいだろう。


「よしっあれならこっちの攻撃も効くかもしれないな、こっからが正念場だ!」

「分かりました!フリーネ!勝つわよ!」

「もちろんよぉ~!」

「ゴーレム一体に国の騎士が遅れをとるものか…」

「「「………………」」」

「なっなんだ!その物言いたげな視線はっ!」


コイツって本当にいい性格してんな。

その時変化はいきなり起こった。


ゴゴゴゴゴゴゴッ………。


地面が揺れ始める。そして大きくなっていく。


「オイオイッダンジョンに入ってる時に地震とかありなのか?」

「う~んこれって……」

「フリーネ、この揺れに心当たりがあるの?」

「うん、多分これって……」

「ッ!?おいっあのゴーレムの足元に魔法陣が現れたぞ!」

「「「!?」」」


見ると黒いゴーレムが魔法陣の効果か何かで消える。当然拘束していたワイヤーは地面に落ちた。


すると再び魔法陣が直ぐ横に現れたぞ、そして当たり前の様にゴーレムが現れた。

身体についたキズからさっきまで戦っていたゴーレムなのは間違いない。


「……魔法陣ってあんな使い方も出来んのか、便利だな」

「あれは反則ですよ……」

「レイナと同意見ねぇ~」

「………くるぞっ!」


『マジックキャンセル』


どうも魔法を無効化する能力を再発動したみたいだな。


「……上等だ、絶対に負けね」


ドッガァアアアアアアアアアアアアアアンッ!。


なんか地面をぶち破って現れた。


「うおおおおおおおっ!ピンチの時は……私が来るのだーー!」


………あのバカ。


「あ~本当に生きてたぁ~、やっぱりあの揺れは何かがダンジョンの壁や床を破壊してる音だったのねぇ~」

「じっ地面を!?あれは本当に人間なのか?」

「いっ生きてました、生きてましたよアカシアさん!」

「……ああっそうだな」


俺達を一瞥するユーレシアは、そのまま黒いゴーレムと相対する。

あっ何やらデカイ荷物を担いでたんだがそれを置いているぞ、なんだあの金属の篭と中のボーリングの玉みたいなのは。


するとユーレシアが俺の方を見た。


「相棒、話は後だ」

「ああっ歳のわりに気張り過ぎた。後は頼むわ」


チートメイドがニンマリと笑う。


「任せろ、戦闘は私の担当だ」


ところであのメイドは背中からまるでドラゴンの翼みたいなのが生えているが、まさかあれで飛んできたのか?……っあ羽ばたいて黒いゴーレムに突撃した。


どうやら魔法だかスキル以外で空を飛ぶのはOKらしい。


「っあ!そのゴーレム魔法が効かない筈だからな!?気をつけ……」

「メーイドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!」


バギッドガッボゴォッハギャッバガゥダボグウットゴォッバギッバゴォッ………。


………なんだその掛け声。まさか奇妙な…。

そして凄まじい勢いでゴーレムがスクラップになっていく……。


その光景を見たパーティーメンバーの三人は。


「「「…………………………」」」


無言である、無表情でもある。

……これだからチートってヤツは!。


「俺達の苦労は一体……」

『仕方ないかと、相手はあの女ですよ?』


ぐうの音も出ない正論だ。……いやっ正論?そんなバカな事が……。


『マスター、マスターはお身体は大丈夫ですか?』

「俺の事は気にすんな………それよりもう戦闘も終わりそうだし、他のパーティーメンバー達の怪我とプレアの損傷について詳しく教えてくれ…」

「私は怪我はないわぁ~」

「私も……何も出来ませんでしたから…」

「私は傷だらけだ……剣も鎧もな、全くどうしてくれる?」

「そんなの自腹で修理しろよ」

「なっ!……さっきから私しにだけアタリが強くないか!?」


さっきからって最初からそうだろうが、この金ぴかボロボロ騎士が。


「ちょっちょ待つのだ!ここは私の活躍を目に焼き付けるのがメインのパートだろう!?」


メイドが何やら不満そうな声を上げる。

仕方ないな~たくっ。


「「お疲れ様~」」

「早く倒せ、もうろくに動いていないじゃないか」

『その翼は何ですか?まさか私の空担当を奪おうとでも?……消しますよ?』

「なっ!?ドイツもコイツも少し見ない間に随分と舐めた口をきくようになったな!それとポンコツ!消えるのはお前の方だぞ!」

「おーいっユーレシア…」

「あっ相棒!……」


ユーレシアが満面の笑みを俺に向ける……かわ…いやっ取り敢えず労いの言葉とかが欲しいのだと思うが……。


「お前、空飛べんのならプレアに俺達みんなが乗るからそれをあの地割れから上に運べよな!」

「あっ相棒ーーーーーーーーーぅ!?」


俺はそんな言葉は言わないのだ。


そして俺達は無事にダンジョンを脱出した。


ユーレシアは終始せっかくの再会イベントだったんだぞ?っとむくれていた。






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