第22話『ユーレシア無双(3)』

◇◇◇


一時間ほど時間をさかのぼる。


地割れによって生まれた谷の底に向かって1人のメイドが落下していた。

そのメイドは地面すれすれまで垂直に落下していき……くるっと身体を回転させて普通に…。


スタッ。


「よっと!着地百点だな。完璧な着地だっ流石私だ!」


普通に着地した。本来なら全身が大変な事になったり地面もスゴい事になりそうだが、そんな事は一切起こらなかった。


凄いを通り越して異常である。


「…ん~?何故か今、イラッとしたぞ?……まぁいいか」


【ユーレシア視点】


私は相棒とオマケ達を魔法でダンジョンの中に放り込んだ、しかし私自身にまで魔法をかける余裕がなく無様にここまで落ちてしまった。


まさかダンジョン内部の能力規制がここまで厄介だとは、あのポンコツカーどころかこの私まで飛行魔法すら使えなくなっているとはな。


「……今度からは事前に使える魔法と封じられてる魔法について調べておくかな?」


私は同じ失敗を繰り返さない優秀……っいや全能なメイドなのだ。


故にこんな無様は二度と繰り返さない。


………っと言うより私がダンジョンのルールを全てガン無視すれば全て解決だったりするのだが……。


「流石にそれをすると、相棒が求める冒険要素を全てパーにしてしまうからな~」


私はそんな空気を読まない真似はしない、相棒にはこの世界での日々をもっと好きになって欲しいのだ。


さてっ……そろそろ私も行動を開始する。

相棒をいつまでもオマケ達だけで護らせる訳にもいかないからな。


「……まぁこのダンジョンは地下に行くと敵の強さ上がり、現れる数も増えていくと言うシンプルで分かりやすいダンジョンだし。相棒には下ではなく上に行くように言ったし、大丈夫だろう」


ブツブツ言いながら地層から見えるダンジョンに向かおうと歩を進める。


ガシャンッガシャンッガシャンッ。


「………ん?ここはやはりゴーレム系のエネミーが出現する様だな」


視線を向けるとダンジョンからまるで蟻の巣からあふれるアリンコの様にぞろぞろと出てきたな。


ゴーレムと言っても流石にダンジョンの最下層に出るレベルのヤツとなるとまるでSF映画で出てきそうな武装をしている。


機械兵器の銃もガトリングやアサルトライフルにショットガンと言った感じのからメカメカしいデザインの剣やハンマーや槍と言ったデザイン以外はロボットなゴーレムが装備してる意味が分からない代物まで。


ロボットなゴーレムが出てくる映画で近接武器はあの光るヤツだけで十分であり、それ以外は中、遠距離の武器が殆どがマスト。


きっと相棒ならそう考えるな、間違いない。


しかし連中は。


『ゴガアアアアアッ!』『ギギギギギギギッ!』『ガララララララララッ!』『ガアアアアアッ!』


ドドドドドドドドドドドドッ!。

パンパンパンパンパンパンッ!。


思い思いの攻撃をしてくるロボットゴーレム達だ。もちろん距離を縮めて私には武器を喰らわそうとするのも沢山いる。


「……まぁコイツらのゴーレム・コアは魔力の塊だ。高く売れるし近代兵器に近い武器はこの世界の人類には興味深いものだろう」


ただ私も魔法箱アイテムストレージのスキルは持っていない、何故なら私が相棒と契約する時に、私は戦闘方面の能力をメインに使える代わりに便利系な能力は封じられてしまったのだ。


相棒と契約するにあたって色々と苦労が、私にもあるのである。

能力の制限もそれの1つだ。


ただし……。


この程度の雑魚に遅れを取る訳はないのだよ。


「相棒ならシンプルに金なるものを求める筈だ!ならそれ以外は


私はずっと担いでいたタイラントボアを振り回しながらロボット軍団に突撃する。


「喰らうがぁいいッ!」


タイラントボアの巨体をそのまま武器にして連中を吹き飛ばす。

このイノシシは大きいので鈍器として優秀だ、一回振り回す毎に何体ものロボットゴーレムが宙に舞う。


「ハハハハハハハハッ!私こそ真の最強無双だぁああああああああああッ!」


ブンブンブンブンブンブンッ!

ボガッ。ドカァッ。バギヤッ。ゴドンッ。


『ッ!?……』『ダッ……ビビ』『……ダガ…』『ママママママッ』『ジッジーーー』


適当に振り回しても敵に当たると言うのは爽快感があり私は好きだ。


「敵に囲まれるのも悪くないものだと私は思うなっ!」


……相棒は、嫌がりそうだがな。


「さあさあさあーーーっ!ちゃっちやと掛かって来るがいいぞこの雑魚どもがぁっ!」


そうして私がロボットゴーレム達を倒しに倒していると……。


一体の黒いゴーレムが現れた。


……あれは、恐らくこのダンジョンの最下層にいるボスだな。


身長は二メートル程とゴーレムにしては小柄だ、ただし内包する魔力量は生半可な魔法兵器など遥かに凌駕する。


恐らくこの世界で私が出会った人類で、このゴーレムを単身で討てる者はいないだろう。


未発見のダンジョンとは言え、このレベルのボスが出るとはな……プレイヤーの資格を持つ相棒が来なければ起動しないのも無理はないな。


「………ただ起動の際にこんな地割れが起きるなんてのはおざなり極まりない。まさかダンジョンの底に直通するとはな…」


『……侵入者を発見。排除する』


「……ふんっ私が侵入者っか。どうやらこのダンジョンもボスエネミーも、完全にバグっている様だな」


本来なら地上にダンジョンの入り口が現れ、それを冒険者辺りが発見してニュースになり……っと言った感じのシナリオだったと思うんだが、いやはや世の中は思った通りに上手くは行かないものだ。


『…………排除する』


黒いゴーレムが消えた。


瞬間移動のごとき高速移動だ。

これまでの相手とは一線をかくす相手なのは間違いない、しかし……。


「私は最強のメイドなんでな、悪いが貴様ごときに排除されてやるつもりはない!」


凄まじい速さで私に接近する黒いゴーレムに私はジャストミートでイノシシを叩きつける。


『……フレアカノン』


「……ッ!」


イノシシがヤツに当たろうとした瞬間、一瞬であの巨体が炎で消し飛ばされた。


見るとヤツの右腕が発光している。


「触れたものを燃やし、消し飛ばす右腕か!中々にチートったヤツだ!相棒が見たらヤジの1つも飛ばしそうだなハハハッ!」


『………排除』


武器を奪った事で更に私に肉薄する、しかもホカノゴーレムも再びゾロゾロと群がる様に来る。


「…………ふぅ」


しかし私はこのメイド服を汚したりしたくないので……ここは大技を1つでもかますか。


私は黒いゴーレムの猛攻をかわしながら、右足に少し力を入れて振るう。



龍尾剣りゅうびけん!」


私が放った回し蹴りは、ゴッと言う音と共に爆風を周囲に解き放つ。


ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!。


『『『『『『ッ!?』』』』』』』


全てのゴーレムその嵐の様な暴風に呑まれる。


………やがて風が止む、その後には腰から上を鋭利な刃物で切り飛ばされた様に上下で切断されたロボットゴーレムが無数に転がっている。


「フフッ龍の靭尾じんびはその一振りで地形すら容易く変える……なんてな」


これで殆どのロボットゴーレムは機能を停止しただろう、だが……。


私の視線を向けた先にはギリギリでこちらの攻撃に反応して見せた黒いゴーレムが距離を取って私を見ている。


「……これで一対一だ。少し遊んでやろう」


『………排除する』


黒いゴーレムがその両腕を変形させた、手首から先を鋭いブレード状に変形させ更に右腕のほうは赤く発光している、左腕はパリッパリッと電気が発生している。


あれは右腕で切られたら熱と炎で、左腕なら高圧電流で感電死ってところだな。


「……まぁ何をしても私の相手にはならないんだがな」






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