第21話『ダンジョンボス』

当たり前だが不意討ちで攻撃するときにかけ声なんてかけるバカはいない。


俺から離れた金ぴか騎士とレイナは無言で近づいていき……。


「騎士の剣をくらえっ!ラウンドセイバー!」


………あんのくそ騎士がぁーー。


「私の剣もね!シャープストライド!」


お前もかい!。


二人のアホが声を出して斬りかかったものだからボスゴーレムは普通に気づいてゴツい腕でガードしたじゃん。


ガギィンガギンッ!。


「ちっ!硬いな…」

「ッ!…………」


うるさいよ!黙ってさっさと首の関節にでも剣を突き刺せば良かったものを!何やってんだよこのアホ騎士がぁっ!。


「……フリーネ、予定通りにおたくの魔法での一撃が合図だ。それを連中が確認して退避したら俺が決める、いいな?」

「もちろん分かってるわぁ」


ちなみにフリーネは今も俺のリーマンスーツの端を握っているので二人には俺達が完全に見えない状態で戦っている。

仕方ない、ここは前衛二人がボスゴーレムを弱らせるまで我慢するか。


『オオォオオオオオオオオッ!』


「来るぞっ!構えろ!」

「……いつでも来なさい!」


ボスゴーレムからのパンチだ、二人はかわしてから反撃する。


「ハアッ!」


ガギィィンッ!。


レイナはボスゴーレムの腕の関節に剣で一撃を入れるが効果はいまいち、金ぴか騎士は本体に突撃する。


「ハァアアアアアアッ!」


『………ッ!。ヒートアイズ』


「……っち!」


ゴォオオオッ!。


ゴーレムが金ぴかを視界に捉えるとその両目が光ったかと思ったら金ぴか騎士の身体が、爆炎に包まれた。

攻撃魔法か!?。


「……フンッこの程度で私にダメージが入ると思うのか?騎士を舐めるな!」


マジかよ、アイツ今爆発したんだぞ。

それが平気そうにしてるってかマジでし身体も鎧もキズ一つないとか……。


『そう言えばあの女騎士は、この国の人間の中でもかなり強いって話でしたね。雰囲気がいまいち駄目人間寄りだから忘れてました』

「………俺もだ。そういやあのハゲギルドマスターもそんな感じの事言ってたわ」


『グォオオオオオオオッ!』


「くっ!コイツ見た目は鈍そうなのに、案外素早いわね!」

「落ち着け、私が盾役に撤してヤツの攻撃を受け止める。お前は攻撃の後の隙を狙って大技を仕掛けろ!」


ゴーレムが両手を重ねて振るう、アームハンマーだ。その攻撃を金ぴか騎士が真正面から受け止めた。

オイオイ盾の1つもないくせに。


「うっおおおおおおおおおおおおおっ!」


ガギンッ!。


金ぴか騎士が剣で受け止めた両腕を力任せになぎ払う。

ボスゴーレムはおもわず体勢を崩してしまった。


そこにレイナが駆け寄る、軽量鎧を装備しているからか中々に素早い。


(あの女騎士のコスプレの人、言動とかはずっと意味分かんなかったけど。剣士としても盾役としもわたしより遥かに上の実力者ね……けど!)

「私だって!負けっぱなしなんてゴメンなんですからね!」


レイナがダッシュでボスゴーレムに迫る。

しかしボスゴーレムは視線をレイナに向けてようとしていた、あの爆炎にレイナが襲われる可能性が脳裏をよぎった瞬間。


そのタイミングだった。


「させない!フレアストーム!」


フリーネの魔法が発動し、ボスゴーレムの身体と頭を炎が包み込んだ、お陰で視線を遮られたのかレイナを見失った様だ。


「よくやったフリーネ!」

「ありがとお~」


フリーネの魔法を確認して金ぴか騎士は距離を取った、そしてレイナは……。


「これだけは決めます!エアロブレード!」


ボスゴーレムから数メートル離れた所からレイナがアホみたいに剣をブンッ!って振るう。


するとその刀身から淡く緑色に光る斬撃が飛んでいく。


ザンッ!。


鋭い音がするボスゴーレムの右肩から先が切り落とされた!。


「マジで斬撃とか魔法的な何かで飛ばすなんてな!とんでもねぇ連中だよ」


フリーネの攻撃魔法は合図でもある。


それは俺が一発デカイのを次にぶちかますからボスゴーレムから離れろっと言う意味のな。


俺はインフィニティナイフをまた新しい姿へと変身させる。

このインフィニティナイフは、俺の意のままにその姿、能力までも変わる。


それが武器なら剣でも槍でも、バッドにもなるしその気になれば俺のそっくりさんなゴーレムっぽい何かにも変身する。


そんな万能変身能力を持ったナイフがこのインフィニティナイフなのだ、そして今回俺がコイツを……。



ロケットランチャーに変えた。



肩によこいっしょってして発射する外国映画でマッチョが活躍するミリタリーな映画で登場したりするアレだ。


俺の注文としては、素人がぶっ放しても肩や両手を痛めない様にされた摩訶不思議ファンタジーなロケットランチャーを所望したのだ。


そうして出てきたコイツならきっと俺が射っても大丈夫だろう。って訳で。


「喰らいやがれポンコツ野郎がぁああああああっ!」


ドシュッ。


発射されたロケットがボスゴーレムに向かって行く、インビジブルアンブレラで可能な限り距離をつめてから発射した。

避けられる可能性は今までの戦闘からみてもないはず……。


ロケットは真っ直ぐにボスゴーレムの頭に向かい進む!。


そして、ロケットが直撃した!。


ボッガァアアアアアアアアアアアアアアンッ!。


ボスゴーレムが大爆発するとともに、凄まじい轟音が響き渡る、パーティーメンバーの三人もそれぞれ驚愕する。


「なっなんだ!?爆発系の超級魔法か!?」

「ううーっうるさいわぁ~」

「………っ!す、凄い。これがアカシアさんの本気ですか!」


それぞれが感想を言っているが、肝心なのは今の一発でボスゴーレムを倒せたかどうかだ。

俺は無言でもうもうと煙をあげるゴーレムを見ている。


………やがてボスゴーレムは両膝を床につけると音を立てて倒れた。


「………ふうっやったか。おたくら怪我とかは大丈夫か?」


敵の機能停止を確認……とかは出来ないけど多分壊れただろう。伊達にロケットなんて撃ち込んでねぇんだ、頼むから死んでください。


「レイナ!これだけのゴーレムなら素材もきっと高価だと思うわぁ~」

「確かにそうね。上手く剥ぎ取れればいいんだけど」


美少女冒険者の二人は実に冒険者らしい事を言っている。

果たしてこのロボットだかゴーレムだか謎なモンスターのどこが高値がつくのか俺にはまるで判断がつかないが、二人はつくのか?。


「……アカシア、今の攻撃は魔法なのか?私にはいきなりゴーレムが大爆発した様にしか見えなかったぞ」


金ぴか騎士か、確かに距離的にもこちらにも爆発が届かないギリギリでブッ放したからな、ロケット本体がろくに見えなくても無理はない。


「……冒険者が手の内を説明するか、……まぁ気が向いたら教えてやるよ」

「………そうか」


取り敢えず、初めてのボスとの戦闘は成功だろう。


「……よしっボスゴーレムの素材もダンジョンから脱出するのに邪魔にならない範囲で持っていくようにするぞ?」

「は~い」

「わかりました」

「……まさか私もゴーレムの素材を持って歩くのか?」

「当たり前だろ?この中でダントツに体力も怪力もありそうなお前が1番大荷物を運ぶんだよ…って何すんだコラッ!無言で首をしっ……絞めんなっ!」


俺が金ぴか騎士に殺られそうになっていて、レイナとフリーネがそれを見て笑っている。


いや助けろよ!って思っていた時である。


『エラー発生。エラー発生。ダンジョン【機兵軍の地下アジト】にて、ダンジョン五階のボス、マシンナリーゴーレムとの戦闘にて反則行為が確認されました。早急に対処を行います。早急に対処を行います』


……………何これ?。







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